東京2020のオリンピック開催まであと1年。最近、さまざまなシーンで「インバウンド」という言葉を耳にする機会が多くなってきました。そこで今回は、カタカナビジネス用語「インバウンド」について解説します。
「インバウンド」の意味
インバウンドとは、「本国行きの」という意味の英語【inbound】のカタカナ用語で、日本では、主に「外国人(国外居住者)の訪日旅行」あるいは「訪日旅行客」の意で用いられています。
本来は、「観光旅行」を意味する英語【tourism】と合わせて【inbound tourism】(インバウンドツーリズム)と表現されていたのですが、長い用語というものは省略される傾向にあり、いつしか「インバウンド」単体で用いられるようになったようです。
「インバウンド」がつく用語
インバウンドが付く言葉の中でも、頻繁に使われるのが「インバウンド消費」と「インバウンド需要」ですが、日本におけるインバウンド消費とは、日本を訪れる外国人客による日本国内での消費活動を指し、これをインバウンド需要とも言います。
中国人観光客が、家電量販店や百貨店などから日本製の商品を大量に購入していく現象を「爆買い」と呼び、連日話題となったことは記憶に新しいでしょう。また、京都が観光都市ランキングで世界1位になるなど、訪日旅行客が急増すると、宿泊施設不足の問題から「民泊」が登場しました。「インバウンド」という言葉が世に広まったのは、この頃ではないでしょうか。
このように、家電量販店や百貨店をはじめ、鉄道や航空会社、ドラッグストア、ホテル、飲食店など、インバウンド消費によって恩恵を受けるような企業のことを、株式市場では「インバウンド銘柄」と呼びます。
インバウンド消費と日本経済
日本政府観光局(JNTO)の調査によると、5年前の2014年時点の訪日外客数は1,341万人であったのに対し、2018年には3,119万人と約2.3倍までに伸長し、JNTOが統計を取り始めた1964年以降、過去最高を記録。それに伴い、インバウンド消費額もまた、過去最高の4兆5,189億円にのぼりました。
2019年に入ってからも訪日外客数は増加傾向にあり、2019年2月では前年同月比3.8%増の260万人を記録しているとか。日本政府が掲げた「2020年に4,000万人、2030年には6,000万人」という目標値に対し、2018年時点ですでに3,119万人に達していることから見ても、2020年を前に4,000万人に到達するものと期待されています。
また、伸び続ける訪日外客数が日本にもたらす経済効果は非常に大きく、東京2020のオリンピック・パラリンピック競技大会開催に向けて、更なるインバウンド需要が見込まれるなか、政府は、「2020年に8兆円」の消費額を目標にインバウンド誘致を加速しています。さらに、オリンピック閉幕後も、オリンピック開催国であることを利用した施策として各種スポーツイベントを開催するなどし、最終的なゴールとして、「2030年に15兆円」のインバウンド消費額を目指しています。
今後インバウンド需要が予想される業界としては、家電量販店・百貨店・鉄道・航空会社・ホテル・ドラッグストア・飲食店といったインバウンド関連の主要業界のほか、東京2020に向けて、「広告・メディア関連」「警備・セキュリティ関連」「スポーツ関連」「インフラ整備関連」といった業界が挙げられます。さらに、東京2020大会のスポンサー企業もその恩恵を受けると考えられるでしょう。
業界別「インバウンド」の使い方と例文
インバウンドは、経済や観光業界のみならず、さまざまな業界で使われる用語です。どんな意味で使われているのか、業界別に見ていきましょう。
○観光業界
先にも述べたとおり、観光業界におけるインバウンドとは、「外国人(国外居住者)の訪日旅行」あるいは「訪日旅行客」を指します。これに対し、「日本人による海外旅行」のことを「アウトバウンド」といいます。
- 日本のインバウンドは、中国からの旅行客が最も多い。
- オリンピック誘致によるインバウンド効果に期待しましょう。
- 夏休み用に、アウトバウンド向けのツアーを考えました。
○IT業界
コンピューターネットワークや通信分野においては、外部から転送されるデータのことを「インバウンドデータ」、反対に、外部へ転送されるデータのことを「アウトバウンドデータ」といいます。
- SEOに効果的なインバウンドリンクを構築しましょう。
- このデータをアウトバンドしてください。
○テレマーケティング
コールセンターの業務などで、消費者から電話を着信(受信)することをインバウンド、反対に、消費者への発信業務をアウトバウンドと呼びます。
- インバウンド業務には、高いコミュニケーション能力が求められます。
- 来週からアウトバウンドに従事してもらえますか。
このように、一般的にインバウンドは「外から中へ」、その対義語として、アウトバウンドは「中から外へ」という意味合いで用いられていますので、あわせて覚えておくと良いでしょう。
○広告業界
広告業界におけるインバウンド、アウトバウンドは、「外から中へ、中から外へ」という意味とは少々異なります。
広告業界でのインバウンドは、「消費者が自ら広告を選ぶ」ことを指しており、具体的には、インターネットで、興味があることや見たいもの、知りたいことを自らの意志で検索することがあげられます。これに対しアウトバウンドとは、「消費者の意志に関係なく広告を目にすること」になります。テレビCMや訪問販売、チラシ、バナー広告などがこれに該当します。
- ブログを開設することで、インバウンドに繋げられないだろうか。
- アウトバウンドによる宣伝だけでは不十分です。