部屋の前の廊下に空いているスペースがあるとき、他の入居者の邪魔にならないからと勝手に私物を置いてしまったりしていませんか? 自室の前とはいえ、廊下は共有スペース。自由に使っていいのでしょうか? 共有スペースの利用について不動産・住生活ライターの高田七穂さんに伺いました。


Q.廊下に自転車を置きたい

今、角部屋に住んでいます。廊下の隅に広いスペースがあるから自転車をそこに置きたいのですがいいでしょうか?

A.答えは...?

玄関前の廊下は、住んでいる人全員で利用する「共用スペース」。たとえ、廊下の隅であっても私物は置かないようにしたいものです。契約書や使用細則などには、「共用廊下や共用階段などの通路には私物を置かない」などと明記されていることがあります。今一度、確認してみましょう。加えて、何よりも防災面での問題があります。たとえば、各都道府県・市町村等の自治体では、消防法の規定による火災予防条例を制定しています。その多くに、避難通路である廊下にはモノを置いてはいけないことが定められています。

たとえば、東京都の火災予防条例では、以下のように定めがあります。

(火災の予防又は避難に支障となる物件を置くこと等の行為の禁止)
第五十三条の二 何人も、令別表第一に掲げる防火対象物において、みだりに次に掲げる行為をしてはならない。
一 避難施設に、火災の予防又は避難に支障となる施設を設け、又は物件を置くこと。
二 防火設備の閉鎖又は作動に支障となる施設を設け、又は物件を置くこと。
三 消防用設備等又は法第十七条第三項に規定する特殊消防用設備等(以下「特殊消防用設備等」という。)の感知、操作、散水その他の機能に支障となる施設を設け、又は物件を置くこと。

たとえ、廊下の端に置いていたとしても、自転車が何かの拍子に倒れてしまって、玄関ドアを開けて逃げようとしたときに開けられなくなる可能性があります。

自転車以外にも、濡れた傘や、捨てようと思っているダンボールなども置かないようにしましょう。「一時的だからよいのでは?」と思わないようにしたいものです。

一方で、住まいを探すときには、共用廊下の状態をよく確認しましょう。希望条件を満たしたマンションやアパートを内覧した際、廊下にモノが置いてあったらどうすればよいでしょうか。

共用廊下に荷物が置いてあるからといって、すぐに入居を取り止める必要はありません。ただし、隣にいつもゴミなどを放置している人がいると、どんな人なのかちょっと不信感を抱いてしまうのではないでしょうか。さらに、何の注意もされていないとしたら、きちんと管理が行われていないのかもしれません。

さらに、ゴミ置き場や自転車置き場など、他の共用場所も確認してみましょう。他の場所にも問題がみられるようであれば、入居後の住み心地に影響があるかもしれないので、もう少し、他の物件も内覧し、比較検討してみるのもよいのではないでしょうか。


高田七穂(たかだ なお):不動産・住生活ライター。住まいの選び方や管理、リフォームなどを専門に執筆。モットーは「住む側や消費者の視点」。書籍に『絶対にだまされない マンションの買い方』(共著)『マンションは消費税増税前に絶対買うべし!?』(いずれもエクスナレッジ)など。「夕刊フジ」にて『住まいの処方銭』連載中


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