毎週火曜22時はただ一人の女になって『花のち晴れ~花男 Next Season~』(TBS系)を視聴しているスナイパー小林です。このドラマ「いろいろな側面から観察してもよくできている」と周囲のアラフォー女性たちもすっかり虜。少女マンガの世界観にうっとり。ああ、楽しい。

メグリン

西留めぐみを演じる飯豊まりえ

そんな最中、第4話あたりから視聴者の全女性軍をイラっとさせる人物がメキメキと頭角を現してきました。彼女の名前はメグリンこと西留めぐみ(飯豊まりえ)。

江戸川音(杉咲花)のことが好きな英徳学園C5のリーダー、神楽木晴(平野紫耀)に片思いするメグリン。人目もはばからず、晴へ猛勢とも言える求愛をし続ける彼女の姿に女性からは非難集中。放送後のSNSは荒れに荒れています。

演じている女優さんではなく、役柄そのものに対してバッシングがあるのはそもそも稀有な現象ですし、それだけドラマ自体が盛り上がっている証拠。飯豊さんが役にハマっているだけではない、メグリンの恋する姿には女性として何か学ぶべきものがあるのではないかと思うのです。その姿勢を最近女性ホルモンが衰退気味の代表者として探ってみることにしました。

息子の絶対的サポーター"母"となって晴を愛する

メグリンが晴に贈る愛の言葉の一部を紹介しよう。

「私とつきあって絶対によかったと思わせる」

「私のこと好きになった?」

「今は(仮)※ でいいから隣にいさせて」(※注 仮の彼女)

彼のためなら一緒の高校へ転入、自宅に押しかけて手料理をふるまう。盲目一途とはこのことで晴のためならエ~ンヤコリャッ! のメグリン。第7話までの放送を見返して、彼女の行動をチェックしていたら、もう"イラッ"を飛び越えて笑いが起きてしまう。これは私が年を重ねたからなのか、それとも恋愛から遠ざかっているせいなのか。

そしてメグリンのLOVEパワーMAX!! になった第6話は彼女の愛がさく裂。音に振られて落ち込む晴に元気をつけてもらおうと、この世のものとは思い難い失敗作の鯛カレーを作るメグリン。晴は一口食べるだけで思わず吐きそうになるのだが、その瞬間「大丈夫! ここに吐いていいから!」と言わんばかりに手を差し出す彼女がいた。

このシーンにピンときた。いくら愛があろうとも恋人の吐瀉物を素手で受け止めるのは無理だし、経験がない。吐き気がすると頼られたらせいぜい口の中に手を突っ込む、背中をさするのが普通のカップルというものだ。

その昔、先輩夫婦がドライブ中、噛み終わったガムを妻の差し出した手に吐き出した瞬間を目撃したことがある。まだ20代前半だった私は「ものすごい愛……!」と言葉を失ったものだけど、メグリンの差し出した両手に同じような衝撃を覚えた。

自分以外の吐瀉物を素手で受けとめる、素手にかかったしまうことも気にしない関係性がひとつだけある。それは無償の愛を注ぐ母と子の間柄だ。そりゃ排泄物も処理するわけだから、吐瀉物くらいなんてことはない。なんだかメグリンの愛の訴求は母親のようだと視点が変えて視聴すると、その後も母性フル稼働で愛を示す様子が次々に登場するではないか。

父親との関係性に悩む晴を見れば「あなたの悲しい気持ち、私が半分もらうから」と、一緒に泣く。恋敵である音の作った野菜炒めが一級品だと褒めれば同調する。絶対に否定はしない。母親は子どものサポーターであり、熱血ファン。行動は全肯定、言動に一喜一憂するというのが筋というもの。

他にも第6話では天馬くん(中川大志)を含めた遊園地デート中、音につっかかる晴に向かって「はいはい、晴くんもそのへんにね」と、行動をたしなめる。よくよく考えたらこの遊園地もメグリンが失恋中の晴を連れ出している。母親が公園に子どもを連れ出してご機嫌取りをする光景と同じだ。

音と晴がうっかり二人きりで観覧車に乗ってしまうというハプニングには、残された天馬くんに向かって「彼、そんなずるいこと(わざと二人きりになるように)する人じゃないから」と、我が子(晴)をかばう。

そして第6話のハイライトかもしれない。晴が階段からベビーカーごと落ちた子どもを救出すると「めちゃくちゃかっこよかった!!」と、我が子を抱きしめて褒め倒す。第7話でも実の父親の冷たさから晴をかばう母親を彷彿させるシーンがあった。

ああ、これだ。片思いがなかなか実らないと悩む全国の女性に伝えたい、メグリンのごとく無償の母性を目覚めさせて彼に向かえ、と。もしかしたら時間を取られすぎて女友達を失うかもしれないけれど、そんなことどうだっていいとメグリンが体を張って教えてくれている気がした。「女性たちよ、母性を抱け」と。

必殺"外堀固め"の術であざとく、賢く

メグリンの一連の行動はお嬢様気質から発するKYなのかと思っていたけどそうでもない。母性をダダ漏れさせる以外にも、とにかく好きな相手の周囲を巻き込んでいく忍法に近い術も用いていた。

第5話で、デート中の音に自分が晴を好きだと堂々宣言。

「このまま晴くんのこと考え続けてもいいですか?」

と、天馬くんの前で聞かれたら音も本音が言えるわけがない。その後も第6話では転校早々、音を呼び捨てにしてちゃっかり友達ポジションに鎮座。

「(晴のこと)一気に好きになっちゃったみたい!」

「ねえ私、晴くんとつきあってもいいんだよね?」

と、恋敵が何も言い出せなくなるように外堀を固めていくメグリン。その計算高さは恋愛経験ゼロで、ゲームの恋愛疑似体験から晴を好きになったというストーリーさえも偽装なのではと思わせる。神楽木邸にも押しかけて、ついには執事の小林(志賀廣太郎)までも恋の手助けするまでに手なづける。

天馬くんにも

「音さんのこと離さないでくださいね」

と、チクリ。愛の牙城を固めにかかったひと言だ。

これも手前話になるけれど、こういう女性は本当に多い。その昔、むちゃくちゃ優しくて見た目もいい男の先輩がバツイチの尻軽と噂される女性にロックオンされてしまい、メグリン級の猛撃を受けていた。まずは彼女、彼の友達、元カノをすべて直接訪問して自分が好きだと宣言。SNSのつながりもすべて彼と共有して、外堀のセメント固めを着々と進めた。当時、後輩である私のところにも訪問があったけれど「彼のことが好きなんです! 幸せにしたいんです!!」という必死な姿を見ながら、見習わなければと思った記憶がある。なぜなら今ふたりは結婚して幸せそうにしているからだ。結婚はゴールではなくスタートだとするなら、それまでの過程なんて男からしたら本当になんでもいいんだと痛感させられた出来事だった。

そう、ここまでメグリンについてチクチクと書いてきたけれど結局、こういう女が世の中で勝者だと言われるのだと思う。「自然体で生きていたら恋愛が見つかりました︎」という、どこかの安い広告のキャッチコピーの世界は存在しない。両思いとは努力した者のみが侵入を許されるゾーンなのだ。このまま『花男』に沿って物語が進むとメグリンは晴に振られてしまうけれど、きっと彼女ならいとも簡単に次の男へ舞い降りるんだというのがスナイパー小林予測。

6月を迎えて、恋する夏本番がそこに迫っている。今後はメグリンを師匠と仰ぎ、母性愛と外堀固めを肝に銘じて頑張ってみようとこの原稿を書きながら思った。さあ、第8話。彼女のLOVEパワーはどこまで容量を増やすのだろうか。

スナイパー小林

ライター。取材モノから脚本まで書くことなら何でも好きで、ついでに編集者。出版社2社(ぶんか社、講談社『TOKYO★1週間』)を経て現在はフリーランス。"ドラマヲタ"が高じてエンタメコラムを各所で更新しながら年間10冊くらい単行本も制作。静岡県浜松市出身。正々堂々の独身。