人気お笑いコンビ・NON STYLEの石田明(よしもとクリエイティブ・エージェンシー)が作・演出・主演を務める舞台『幼児・小学生・戦隊ファン向け 夏休み企画 ももたろう』の制作発表会見が5月31日、新宿のルミネtheよしもとにて行われ、主演の石田ほか主要キャスト陣が登壇した。

「よしもと むかしばなしシリーズ」と銘打たれた夏休み公演である本作は、誰もが知っている昔ばなしの「ももたろう」をベースに「笑い」と「アクション」を追加して、家族そろって楽しめるエンタテインメントが志向されている。

司会進行を務めるピン芸人タケトの呼び込みでステージに現れたのは、作・演出・主演のももたろう役・石田明、そしてももたろうの仲間になるいぬ役の小澤亮太、さる役のこうすけ(初恋タロー)、きじ役の赤羽健一(サルゴリラ)、アイドルグループ乃木坂46を卒業したばかりの川村真洋という面々だった。

昨年8月に双子の娘のパパとなった石田は、多くのパパ友・ママ友と話をしていて、幼い子どもを連れて楽しめる娯楽施設が限られている事実を知り、半年ほど前からこの舞台を企画したという。石田は「途中で赤ちゃんが泣きだしたとしても、外に連れ出さなくて大丈夫」と語り、とにかく家族がみんなで楽しい時間を過ごすことに重点を置いたと説明。子どもたちに楽しんでもらいたいという思いがもっとも強いが「子育てで大変なママやパパに"笑い"を届けたい」という気持ちも込めて、ヒーローアクションと笑いの要素を組み込んだ「ももたろう」を作り上げたそうだ。

なぜ題材を「ももたろう」にしたのか?という質問に対しては、「みなさんに馴染みのある物語なので、途中でお子様が泣いたり、集中力が途切れたりしても、また途中から入っていけると思って、シンプルなストーリーに務めた」と返答。さらに「仲間との絆の大切さなどを、子どもたちに伝えられたら」と、「ももたろう」が持つ普遍的なテーマや物語性を説明した。

  • 上段左から、バイク川崎バイク、カートヤング、しいはしジャスタウェイ(御茶ノ水男子)、五明拓弥(グランジ)、アイパー滝沢、下段左から、赤羽健一(サルゴリラ)、石田明(NON STYLE)、キジブルー、イヌレッド(小澤亮太)、サルイエロー、川村真洋、こうすけ(初恋タロー)

「こんなに短い役名(いぬ)をもらったのは初めて」と語って笑いを取ったのは、かつてスーパー戦隊シリーズ第35作『海賊戦隊ゴーカイジャー』(2011年)でゴーカイレッド/キャプテン・マーベラスを演じて子どもたちのヒーローとなった俳優・小澤亮太。今回の「ももたろう」では、ももたろうの仲間となったいぬ、さる、きじが「きびだんご」を食べることによって「戦隊ヒーロー」のようなカッコイイ姿「ももたろう戦隊キビレンジャー」に変身するというのが大きなアピールポイントとなった。

小澤は「昔ばなしとコメディとヒーローを合体させたところが新しい」と本作のアイデアの秀逸さを称え、ひさびさのヒーロー役に意欲を見せた。小澤と石田とは以前から仲のいい付き合いをしており、今回の小澤の出演はいわば「友情出演」というべきもの。話を受けたときのことを聞かれた小澤は、「シンプルに、楽しそうだと思った。そのときはお酒を飲んでいたんですけれど、変身後も演じるよ!って言ってしまったんです。そうしたら本当に決まってしまった(笑)」と、変身前と変身後の両方を演じることになったのは、酒の席での勢いによるものだったと明かした。

ヒロイン・お華を演じる川村真洋は「乃木坂46を卒業後すぐに、こんな面白くて楽しい舞台に参加できるなんて思っていなくて、本当にうれしく思います」と元気よく挨拶。川村の起用は「アイドル要素を入れたい」という石田の狙いであり、さらには「本編では"プリキュア"っぽいダンスもやっていただきます。いろんなものに媚びて媚びて(笑)」と、人気アニメ『プリキュア』シリーズにも言及し、女の子にも入りやすいような空気をも重視していた。川村は出演が決まったとき「ももたろうということで、最初は鬼の役かな、おじいちゃんの役かなと思っていたのですが……」と、わりと天然なコメントをして石田から「それを言うならおばあちゃんやろ!」とツッコまれていた。「おじいさん、おばあさんと一緒に暮らしている、めちゃめちゃカワイイ女の子」という設定について川村は、「ええ、どうしましょう」と戸惑いながらも、まんざらでもない様子を見せた。

さるを演じるこうすけ(初恋タロー)は、「家族向け」ということにちなんで「僕も、もうすぐ子どもが生まれるんです」と、近々自分もパパになることを明かした。続けて「8月7日が予定日で、ちょうど公演の期間中なんですよ」と、舞台に出演中も気が気でない状況であることを石田に相談したら、石田からは「生まれた日は休んでいい」と言われたそうだ。もしもそうなったら実にめでたいことだが、代わりのキャストをどうするか?と問われた石田は「そのときは、本物の猿を出します」と即答して笑わせた。また「THEだいじょぶズ」というバンド活動をも行い、本作の主題歌「レッツゴー!ももたろう」の作詞・作曲・歌唱も担当しているこうすけは「僕以外のメンバーはみんな純粋なミュージシャンなのですが、僕が今度、ももたろうの舞台を"本気で"やるということを伝えるのがいちばん苦戦した」と苦笑しつつ、メンバー全員で編曲を行ったことや、昔ばなしの「ももたろう」の物語をかっこいいロックのリズムに乗せて表現できたことに、大きな喜びを見せていた。

きじを演じるのは、お笑いコンビ・サルゴリラの赤羽健一。赤羽は「きじ役のサルゴリラ赤羽です」と挨拶したとたん、タケトから「きじとサルとゴリラが入っていて、見た目はブタ」と、ぽっちゃり体形をネタにされてしまった。舞台に対する意気込みを聞かれた赤羽は「いかんせん太っていますので、きじに見えません。なので本番までには痩せます!」と宣言したが、石田からは「ぽっちゃりしたきじと台本に書いてあるので、それでいいんですよ」と、優しいフォローが入っていた。

ももたろう、いぬ、さる、きじが揃っているところに、鬼ヶ島の鬼たちが登場。巨大なこん棒を振り回す「青鬼」をグランジの五明拓也、細身の「赤鬼」を「ヒーロー大好き芸人」で知られる御茶ノ水男子のしいはしジャスタウェイが演じるほか、手下の鬼をカートヤング、アイパー滝沢、バイク川崎バイクたちが担当し、ももたろうとの戦いの合間に得意のギャグなどを入れながら、剣による激しい立ち回りを披露した。

本作のアクション監修を務めるのは、本家本元の「スーパー戦隊シリーズ」でも活躍している「ジャパンアクションエンタープライズ」であり、石田たちの殺陣も本格的なものに仕上がっているようだ。

最後には「待たせたな!」と、いぬ、さる、きじがカッコいいヒーロー(イヌレッド、サルイエロー、キジブルー)に変身して登場。主演のはずの石田を食いまくる目立ち方で、華麗なポーズを取った。石田は「前半は僕が頑張って鬼と戦いますが、結局やられてしまって、最後にこいつら(いぬ、さる、きじ)がヒーローに変身して鬼に勝利する、という筋書きです」と、「ももたろう」と「ヒーローアクション」を融合させ、そこに「笑い」をも組み合わせた本作の特色を改めて熱く説明した。

終了後の囲み取材の席で、相方の井上裕介は今回の舞台について何と言っているか? という質問を受けた石田は「さあ? 僕は漫才以外では井上との仕事をNGにしていますので」と、あえて冷たく突き放した発言を連発して、周囲の笑いを誘った。

舞台『ももたろう』の最終的な目標は?と問われた石田は「グッズ爆売れ」と即答。と、いうのも「正直、赤字なんですよ。毎公演、満席になったとしても"引く"ほどの赤字になってしまいます。でもそんなことはどうでもいいんです。ルミネtheよしもとで夏休みにこういう楽しそうな舞台をやっている、とみなさんに知ってもらって、観に来てくださったらいいなと思いまして。僕とプロデューサーとで赤字分は支払おうと(笑)」と、採算度外視でクオリティの高い舞台を作り上げようという固い意志を示した。ゆくゆくは毎年の夏休みに、しかもルミネtheよしもと以外の場所にも出演の幅を広げていきたいと、夢を膨らませた。

舞台『幼児・小学生・戦隊ファン向け 特別企画 ももたろう』は、2018年7月23日~8月10日の間、開催される。料金は大人1500円、幼児・小学生は500円(2歳以下は無料)という、子どもに優しい料金設定なのも注目である。開催スケジュールの詳細については、公式HPを参照していただきたい。