Amazonプライム・ビデオにて配信中されているオリジナル連続ドラマシリーズ『仮面ライダーアマゾンズ』の劇場版『仮面ライダーアマゾンズ THE MOVIE 最後ノ審判』(監督:石田秀範)が、2018年5月19日から全国劇場にてロードショー公開中である。

1974年にテレビ放送された『仮面ライダーアマゾン』をベースにして、スマートな変身ヒーロー像とは180度異なる"野獣のような仮面ライダー"を現代によみがえらせる狙いで作られた『仮面ライダーアマゾンズ』は、人間の肉を食らう危険な人工生物「アマゾン」に対処するさまざまな立場のキャラクターたちが、ただひたすら懸命に"生きる"ため激しく争い、傷つけあうという生々しい人間ドラマが志向されている。

  • 神尾佑(かみお・ゆう)。1970年、福島県出身。北区つかこうへい劇団一期生として1994年から2001年まで在籍した後、テレビドラマ、映画、舞台など幅広い分野で活動を行う。フジテレビ系ドラマ『SP警視庁警備部警護課四係』(2009年)、NHK大河ドラマ『八重の桜』(2013年)、NHK連続テレビ小説『マッサン』(2014年)、NHK大河ファンタジー「精霊の守り人」シリーズ、テレビ東京特撮ドラマ『ウルトラマンX』(2015年/神木隊長役)、映画『新宿スワンII』(2017年)など出演作品多数。撮影:大塚素久(SYASYA)

自らもアマゾンでありながら、人間を守るためアマゾンを狩り続ける宿命を背負っている2人の仮面ライダー、アマゾンオメガ/水澤悠、アマゾンアルファ/鷹山仁の戦いには、血しぶきや肉片が常に飛び散る凄惨極まりないビジュアルが常につきまとう。衝撃的なまでの映像表現や個性的なキャラクター同士が織りなす群像ドラマなど、いくつもの魅力的な要素が視聴者の心をつかみ、2016年のSeason1(全13話)に続いて2017年にSeason2(全13話)が配信。そして2018年春、待望の劇場版が公開されることになった。

Season1で野座間製薬の国際営業戦略本部長、Season2ではアマゾン殲滅部隊「4C(フォーシー)」の局長を務める橘雄悟は、かつてアマゾンを軍事兵器として利用する計画を企てたこともある人物。本作における人間の"悪"の部分を担う者の一人であり、その威圧感のあるたたずまいによって画面に強烈な緊張感をもたらした。ここでは、橘を演じた神尾佑さんにご登場いただき、配信ドラマシリーズ(Season1、Season2)や映画『最後ノ審判』での撮影にまつわるエピソードについて、語ってもらった。※劇中のネタバレを含む箇所があります。ご注意ください

――神尾さんは『仮面ライダーオーズ/000』(2010年)のドクター真木役でライダーファンに鮮烈な印象を残されましたが、『仮面ライダーアマゾンズ』への出演依頼があったときは、どのようなご感想を持ちましたか。

最初は「またライダーに出るの?」みたいな感じでしたね(笑)。『オーズ』にドクター真木役で出たとき、いろいろなことを"やりきった"つもりでしたから、また仮面ライダーに出るのなら、ぜんぜん違ったキャラクターじゃないと面白くないな、とも思いました。

――「仮面ライダー」シリーズと、通常のドラマ作品とでは、キャラクターの演じ方に違いがあったりするのでしょうか。

「仮面ライダー」の場合、最初に台本をもらって読んでもわからないんですよね。世界観もそうなのですが、番組オリジナルの用語がたくさん出てきて、キャラクター同士で難しい単語が飛び交うんです。だから台本を一読しただけでは、どういうことなのかさっぱりわからないところから入ることになります。自分の役柄が作品の中でどういった立ち位置なのか……すら最初はわからない状態ですからね。

――最初の段階では、キャラクターのゴールが見えていないということですか。

撮影をしながら、次の台本をもらって「次はこういう展開になるのか」とわかる状態ですからね。自分(橘)はどういった立ち位置なのか、どういう方向性でいけばいいのかを探り探りやっていって、だんだんと人物像が構築されていく感じです。

――Season1での橘は、野座間製薬の国際営業戦略本部長として、悠の義母・令華のライバル的存在でした。Season2では4Cの局長としてアマゾンの殲滅や、溶原性細胞の軍事利用を企むなど、より厳しさ、ハードさが高まっていった印象があります。

そうですね。Season1のころはまだ「偉い人(天条会長)」が上にいらっしゃって、橘はその「部下」という立場でしたが、Season2では上の人たちがみんな更迭されて(笑)、橘がトップに躍り出たって感じですよね。Season2の第1話を撮られた石田(秀範)監督からは、「好きに演じていいですよ」と言われましたし、自分がトップだという思いがありますから、最初からキャラクターをわかりやすく把握して演じることができました。

――立場が変わったことで、Season1のころとSeason2のころとでは、橘の演じ方が変化したりしましたか。

基本は変わっていませんが、服装を意識して変化させましたね。Season1ではスーツに色を使っていましたが、Season2ではモノトーンで通して「冷徹」な印象を持たせようと考えました。

――かつて令華の秘書を務めていた加納省吾が、Season2では橘の有能な秘書として行動を共にしていました。加納を演じられた小松利昌さんの印象はいかがでしたか。

彼も独特なキャラクターを持っていて、芝居も上手いですから、一緒にやりやすかったですよ。橘と加納の2人だけで進めるシーンも多かったこともあり、お互い面白がって芝居をやっていました。

――映画『最後ノ審判』も手がけられた石田秀範監督は、田崎竜太監督、金田治監督と共に『オーズ』からのお付き合いですね。

石田監督からは、基本的に"お任せ"というか、「好きにやっていいですよ」と言われるんです。でも、ただ好きに演じればいいというわけではないんですね。石田監督って、怖いじゃないですか、見た目が(笑)。現場でも妙な緊張感をはらんでいるんです。『オーズ』のころから一緒にやってきてわかるんですけれど、毎回必ず、監督の予想を超えるというか、予想を裏切る「何か」を提示しなければいけないんですね。毎回、石田監督とはそういう静かな戦いをしていました。そういった、こちらの気持ちを汲んでくださるので、「好きにやっていいよ」と言ってくださるんだと思います。石田監督が「おお、お前はそういう風に来たか!」と言ってくれるような「何か」をいつも出してやろう、持っていこうという気持ちで取り組んでいました。