みなさんは、「これでじゅうぶんです」と書くとき、「十分」と「充分」のどちらを使用しますか? 話すだけなら迷うことはありませんが、いざ文字にするとなると、どっちが正しいのか分からない人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、「十分」と「充分」の違いについて調べてみました。

  • 「充分」と「十分」の違いは?

■「十分」と「充分」の意味

「十分」を辞書で引くと、「十分/充分」と記載されており、両者が同じ意味の言葉であることが分かります。意味は、「条件を満たして、不足がないさま。満足できるさま」です。

■「十分」と「充分」の違い

意味からすれば、両者に違いはありませんが、あえて両者の違いを述べるとすれば、次の2点が挙げられます。

まず1点目は、「十分」は数字の「十」を使用していることからも分かるとおり、一、二、三……九までは不足状態であり、十分ではありません。「腹八分」という言葉を例にあげると、「腹八分」は、まだ食べられる(食べたい)けど満腹になるまで食べていない状態を示しています。十で完全に満腹と言えるのです。

一方、「充分」には量的な基準はありませんので、たとえ、まだまだ食べられる状態だとしても、その人が満足していれば「充分」と言えます。つまり、「十分」は数的・量的に満たされていることであり、「充分」は感覚的・精神的に満たされているという違いがあると言えます。

2点目は、「じゅうぶん」の漢字は本来「十分」のほうであって、「充分」はあて字ということです。文科省も、「十」のほうを教育漢字として扱っており、教科書や公文書などでは「十分」と書くのが一般的とされています。

■「充分」は間違い?

あて字である「充分」ですが、決して使ってはいけないものではありません。文科省では「十分」を推奨していますが、憲法では「充分」が使われており、少々矛盾を感じてしまいますが、それだけ両者に大きな違いはないという事ではないでしょうか。実際、「十分」でも「充分」でも構わないという見解が、現在では多く見られます。基本的には「十分」を使い、適宜「充分」を使用するようにするといいかもしれません。

■「十分」と「充分」の使い分け

では、「適宜」とはいつか。例えば、「時間はまだ十分あります」という表現を見て、あなたは「時間はまだ充分にある」と思いましたか? それとも「あと10分ある」と思いましたか? このように、一見分かりづらく誤解を招くような文脈になる場合には、あえて「充分」を用いた方が良いのではないでしょうか。

また、「充分」は気持ちが満たされていることを表すため、「その言葉だけで充分です」など、自分の気持ちを表す際には「十分」よりも「充分」を用いた方が好ましいでしょう。

ただし、公文書などで「充分」が使えない場合には、「時間は多分にあります」「その言葉だけで満足です」など、別の言葉で表現するという手もありますので、参考にしてみて下さい。

■「十分」と「充分」の例文

十分

  • 「資料の枚数は足りていますか?」「はい。十分です」

会議の出席者が15人であれば、資料は15部あれば十分と言えます。

  • 「練習の成果を十分発揮することができました」
  • 「練習の成果を十二分に発揮したいと思います」

「十分」は持っている力の全て(100%)であり、「十二分」は持っている力以上(120%程度と捉えられることが多い)を示します。

充分

  • 「もう一杯いかがですか?」「いえ、もう充分いただきました」
  • 「今でも充分幸せです」

いずれも、人から見てもわからないもので、その人が感覚的に充分満たされていれば「充分」と言えます。


今回は、「十分」と「充分」の違いについてお話ししました。意味や使い方に多少の違いはあるものの、実際には、そこまで厳密に使い分けされていないのが現状です。とは言え、一つの文章の中で両者が入り混じって登場するのは好ましくありません。教科書や公文書では「十分」で統一されていることから、ビジネスシーンでも、基本的には「十分」のほうを使用した方が良いでしょう。