「頑張れ」「頑張ってね」と私たちは日常、気軽にこの表現を使っていますが、元が命令形の「頑張れ」は、語尾に「ください」を付けても、やはり命令形であることには変わりありません。つまり上司や先生など、目上の人に向かって言うのは失礼な表現にあたります。とはいえ目上の人であっても、励ましたいときはありますよね。失礼にならないよう「頑張ってください」と言いたいときは、どうしたらいいのでしょうか。

そこで本記事では、目上の人に使える「頑張ってください」の敬語表現を紹介します。ぜひあなたの「応援したい」「励ましたい」気持ちを伝えてください。

「頑張る」の本来の意味

  • 「頑張る」の本来の意味

    「頑張る」の本来の意味を正しく理解しましょう

「頑張ってください」が本当に敬語としてふさわしくないのかどうなのかを確かめるため、まず「頑張る」の意味を押さえておきましょう。

「頑張る」の主語は「自分」だった

広辞苑によると、「頑張る」は当て字で、もともとは「我に張る」、つまり「周りの言うことを無視して自分のエゴを押し通す」というあまりいい意味ではありませんでした。そこから「どこまでも忍耐して努力する」という意味が生まれてきました。いずれにしても「頑張る」の主語は「自分」でした。

それが一転して人に向かっていう言葉になり、いいイメージになったのは、「1936年のベルリン五輪でアナウンサーが『前畑ガンバレ』と声の限りに応援したことがきっかけとなった」という考察があります。アナウンサーによる「自分の持てる力を精一杯ふりしぼれ」という声援は、多くの日本人の共感を呼んだことでしょう。

「頑張ってください」は命令形を丁寧にしただけ

「頑張れ」という言葉が広まり、「頑張ってね」「頑張ろう」「お互い、頑張りましょう」と、日常でもさまざまな言い方がなされるようになりました。それにつれて、本来の「我に張る」はもちろん、「忍耐して努力する」という意味さえも薄れていき、今では相手を励まし、力づける言葉として多くの人が使っています。

しかし、いかに丁寧に「頑張ってください」と言ったとしても、本質的には相手に向かって「励め」「努力せよ」と命令しているのですから、上司や目上の人に向かって使用するのは適切ではありません。もっと適切な表現を使う必要があります。

それでも「頑張ってください」と言いたいときは?

  • それでも「頑張ってください」と言いたいときは?

    上司や目上の人に向かって「頑張ってください」という意思を伝えたい際はどうすべき?

たとえ立場が上であっても、上司や目上の人が、気持ちが落ち込むような出来事に遭遇することがあります。そんなとき、どのように伝えれば失礼にならないのでしょうか?

「頑張ってください」の直接的な敬語表現は存在しない

これまで見てきたように、命令形である「頑張れ」には敬語表現はありません。「頑張れ」に相当する定型的な表現がないため、場面に応じて考えるしかありません、

目上の人や年長者に「頑張ってください」と言うのは不適切とわかっていても、相手に「本当に頑張ってほしい」と思い、その気持ちを伝えたいのはどんなときでしょうか? あなたが「頑張ってほしい」という気持ちを伝えたいときは、まずは相手の状態を理解し、相手が今、どんな気持ちでいるかを考えましょう。

「励ましたい」「応援したい」という気持ちは失礼ではない

人を励ますのは、よくない状態の相手の心を奮い立たせようとするときです。そのため気をつけなければ、相手の状態をよくないと決めつけることで失礼になったり、「上から目線」「尊大」と受け取られたりする怖れがあります。友人であっても、相手を励ますつもりだったのが、「上から目線」と受け取られ、気まずくなった経験を持つ人もいます。

しかし、「相手を思いやり、元気になってほしい」と思う気持ちは決して失礼なものではありません。通り一遍ではない、日頃の関係を踏まえた具体的な言葉を伝えれば、相手の気持ちも上向きになり、元気が出てくるはずです。そんな表現を探しましょう。

「頑張ってください」という気持ちが伝わる文章例

  • 「頑張ってください」という気持ちを伝えよう

    「頑張ってください」という気持ちを伝える文章例を紹介します

ここでは「頑張ってください」の代わりになるような表現を、さまざまな場面に合わせて見ていきます。

文例1 将来の希望を表現したい

入社当時に世話になったA部長が40代で希望退職することになりました。新しい職場で頑張ってほしいと伝えたいときの表現です。

文例1: 新たな道が開けますことを心からお祈りしております。

文例2: A部長のお力が発揮できる職場に巡り会えますことを祈念しております。

文例3: これまでのご実績を掲げ、さらなるご活躍をされることを楽しみにしております。

文例2 応援する気持ちを表現したい

独立・起業する上司に向けて、応援していることを伝えます。

文例1: これからもますます精力的に、仕事、プライベート共に充実した日をお過ごしください。A部長の会社のご発展を祈念しております。

文例2: A部長が社長となって精力的に働いておられる姿が目に浮かびます。機会があれば、新しい仕事の話をお聞かせください。心から応援しています。

文例3: A部長の会社と一緒にお仕事をさせていただく機会を心待ちにしています。その際に、少しでも成長した私の姿をお見せできるとよいのですが。

文例3 思いやりの気持ちを表現したい

お父さんの介護で職場を離れ、地元へUターンしなければならなくなった上司のケースです。「いろいろ大変だろうが頑張ってほしい」という気持ちを伝えましょう。

文例1: A部長がおそばにいらっしゃることで、お父様もさぞかし心強いことでしょう。お父様とお幸せな日々が続きますことを、心より願っています。部長もお体を壊すことのないよう、くれぐれもご自愛ください。

文例2: ご実家での介護は、今までと勝手が違うこともあろうかと思いますが、どうぞご無理をなさいませんように。適度に息抜きをしながら、第二の人生を楽しんでください。どうかお元気でお過ごしくださいますように。

文例3: 介護にはストレスはつきものと耳にしております。どうぞ体調には十分ご留意ください。責任感の強い部長のことですから、過度に頑張られるのではないかとそれだけが心配です。くれぐれも気持ちをお楽に、故郷での生活を楽しんで過ごされるよう願っております。

ビジネスシーンでも気持ちを伝えることは大切

  • ビジネスシーンでも気持ちを伝えることは大切

    ビジネスシーンで気持ちを伝える際に大切なこととは

ビジネスシーンで私たちが留意することは、大きく分けて2つです。

1点目は、誤解が生じないように、正確なコミュニケーションを心掛けることです。ビジネスの現場では、些細な誤解が大きな損失を招きかねません。そのため、時間や場所、金額やプロジェクトの内容など、できるだけ正確に伝え、また聞くことが大切です。

2点目は、率直でありつつも、決して失礼にならない表現を心掛けることです。相手との関係に応じて適切な言葉遣いをすることで、ビジネスを円滑に進められます。

しかし、言葉遣いのうえで「失礼にならない」「間違った敬語を使わない」とだけ考えていると、コミュニケーションはよそよそしい、機械的なものになってしまいます。人間同士の営みであるビジネスが機械的になってしまっては、人間関係が次第にギスギスしたものになってしまいます。儀礼的な美辞麗句、テンプレート表現に陥らず、相手の「今」の気持ちにより近い、心の通い合うコミュニケーションを心掛けましょう。

励ましや応援を必要としている相手は、自分の友だちや部下ばかりではありません。上司や目上の人であっても、困難に遭遇している人には、相手の気持ちに寄り添った励ましの言葉を贈りましょう。