JR北海道は6日、新型車両H100形「DECMO」の試作車(量産先行車)の報道公開を実施した。同社初採用という電気式気動車システムをはじめ、基本仕様はJR東日本の新型車両GV-E400系に合わせた。これに極寒対策等の北海道仕様を加えた車両となる。

  • 新型車両H100形「DECMO」の試作車(量産先行車)が報道公開された

新型車両H100形「DECMO」は、おもにローカル線で運行される一般気動車(キハ40形)の老朽取替用として導入が計画され、川崎重工製の試作車2両(H100-1・H100-2)が2月に落成。北海道へ輸送された後、2月下旬から基本的な性能を確認する試験が始まった。試作車による走行試験は2018年度も行われ、冬期を含めた各種検証を行うとしている。

試作車2両はともに1両で運行可能な両運転台車。ワンマン運転にも対応する。今回はH100-2号車の外観・内装が報道関係者らに公開された。

  • H100形「DECMO」は川崎重工製。車体側面に愛称名ロゴマークを掲出

車体はステンレス鋼製で、シャープでエッジ感のある先頭形状とし、ブラックフェイスにイエローを配置して警戒色を強調した。車体前面にグリーンのライン、車体側面にグリーンとホワイトのラインが入り、自然との調和を表している。前照灯はLED化され、上下に配置することで降雪時などにおける前方視界の視認性向上を図った。車体側面に愛称ロゴマークも掲出。愛称名「DECMO(デクモ)」は「Diesel Electric Car with MOtors」の略で、「モーターで走行する電気式ディーゼルカー」を表現している。

車内はグリーンやブルーなどの配色で北海道らしさを表現。定員は99名(座席36名)で、客室中央部に横3列(1列+2列)の固定式クロスシート、乗降口近くにロングシートを配置し、優先席や車いすスペースを設けた。車いす対応トイレも設置し、室内におむつ交換台も用意している。床面高さは115cmで、キハ40形より9cm低床化された。

  • 車内はロングシートと横3列(1列+2列)の固定式クロスシートを配置。優先席を設け、車いすスペースも設置している

  • 車いす対応洋式トイレの室内におむつ交換台も

冷房装置の設置により、年間を通じて快適な室内空間の提供が可能に。窓は上部のみ内側に開くタイプとし、自然換気を行えるようにしている。室内の灯具はすべてLED灯を使用。運賃表示器は液晶式として外国語にも対応し、運賃表示や次駅案内などの情報提供を行う。

H100形「DECMO」の最高運転速度は100km/h、エンジン馬力は450PS。電気式気動車システムにより、電車と共通の機器を採用するため、コスト低減とメンテナンス時の負担軽減を図れるという。落失が懸念される部品(推進軸や自在継手など)、複雑な構造で故障しやすい機器(変速機など)がなくなり、運行時および保守時の安全性・信頼性向上も見込まれる。急勾配での落葉・積雪による空転の発生を抑制する装置、鹿の出現などによる急ブレーキ時の車輪踏面傷の発生を抑制する機能も搭載し、定時性の確保に努める。

なお、H100形「DECMO」はJR東日本のGV-E400系の基本仕様に合わせつつ、北海道のローカル線における運行形態を踏まえ、片運転台車は予定していないとのことだった。既存車両を置き換える線区や量産車の導入時期などについては現時点で未定。約1年間にわたる走行試験を経て、量産化に向けた検討を行うとしている。

  • 新型車両H100形「DECMO」の車内・外観