ANAグループは4月1日、ANA羽田空港 機体メンテナンスセンター格納庫にて2018年新入社員のグループ合同入社式を実施した。各グループの先輩たちから手作りのビデオメッセージが贈られるなど、「あんしん、あったか、あかるく元気!」を掲げるANAらしい歓迎で、グループ36社2,672人(男性752人、女性1,920人)が迎えられた。

  • 2,672人がこの日、新しいANAに向けて第一歩を踏み出した

片時も忘れてはいけない理念「安全が全て」

2018年の4月1日は日曜日であったが、ANAホールディングス代表取締役社長の片野坂真哉氏はこの日に入社式を行うことに「なんの迷いもない」と話す。その理由として、航空会社のほとんどの現場の社員はシフト勤務で土日でも休みではないという状況であるからとしており、また、今年度の始まりである4月1日の朝一番に実施することに意味があるとしている。

  • ANAホールディングス代表取締役社長の片野坂真哉氏もこの日、社長4年目を迎えた

2,672人を迎えたる格納庫には、東京2020に向けて全国各地で羽ばたく特別塗装機「HELLO 2020 JET」が待ち構えていた。この2018年入社式のプロジェクトは、「ANAグループの風土と社員同士の関係性を伝えたい」という想いを込めて半年前から始まったという。

  • 特別塗装機「HELLO 2020 JET」がお出迎え

リハーサルの際、入社式統括からも「一人ひとりがANAの社員。みなさんにはこれだけの同期がいます。ひとりでは解決できないことも、チームスピリットをもって挑戦していってください。そして、仲間への感謝の気持ちを忘れないでください」というエールが贈られた。

  • 開始前に、礼のタイミングなどのリハーサルを実施

入社式は、「心を込めて演奏します。入社式した時の気持ちを思い出しながら」というメッセージとともに、ANAグループの有志による「チーム羽田オーケストラ」の演奏によって始まった。

  • ANAグループの有志による「チーム羽田オーケストラ」が入社式を彩る

列席者紹介に続いて行われた代表講話では、片野坂社長より「安全が全て」という言葉が、社長就任4年目ということも含めて4度繰り返され、さらに「この1点です」と続いた。これが経営の基盤、社会への責務、全てのANAの役員・社員が片時も忘れてはいけない理念であることを、一人ひとりの胸に刻み付けた。

  • 片野坂社長「安全が全て。この1点です」

この言葉に続き片野坂社長は、大田区下丸子にあるANAの研修所の中にある安全教育センターについて触れた。

「航空機やエンジンの性能が向上し、航空機の安全性は大きく高まっていますが、残念ながら航空機の事故はなくなってはいません。原因の中には、ヒトはミスをするものであるということに起因する、いわゆるヒューマンエラーも、大きな割合を占めています。だからこそ、社員一人ひとりが、安全をつくる、お客さまの安心を生み出すことを第一に日々業務に励んでいます。

私も先日、役員の何人かとともに安全教育センターに足を運び、研修を受けてきました。事故で大切なお父さまを亡くされた女の子がお父さまに切々と呼び掛けたお手紙に、私たちは頭を垂れて、事故の悲惨さを再認識せざるを得ません。今日までの安全が明日を保証するものではない。なすべきことは、地道に取り組んでいく不断の努力、安全にゴールはない。

この晴れがましい入社式の冒頭に、私は毎年航空機の事故の話をします。それは、CEOの私を含め、現在の役職員の中で、大きな事故を経験したものがいなくなっているからです。人間の鍛錬において、経験を重ねることが大切だとよく言われますが、航空機の事故に関しては、それはあてはまりません。私たちは、過去の事故を常に思い出し、犠牲となった方々のご冥福を祈る気持ちを全グループ社員で共有し、事故の教訓に学び、そして絶対に事故を起こさないという信念のもと、全員で努力してきました。みなさん、もう一度、胸の中で復唱してください。『安全が全て』であると」(片野坂社長)。

また片野坂社長は、LCCのバニラ・エアとピーチ・アビエーションについて、「フルサービスではなかなか真似のできない魅力的な価格やサービスを展開している」と述べ、両社を統合することでさらなるビジョン拡大を目指せることを、新入社員の前でアピールした。その一方で、3月に福岡空港でピーチ機が重大インシデントに認定されたことを受け、「この場を借りて心よりお詫び申し上げます」と述べ、安全に向けた不断の努力が欠かせないことを強調した。