JR東海はこのほど、次期新幹線車両N700Sの先頭車両の車体と客室モックアップ(実物大模型)を報道関係者らに公開した。先頭車はN700系シリーズの先頭形状を進化させた「デュアル スプリーム ウィング形」を採用。前照灯は拡大され、新幹線では初となるLEDライトが採用される。2018年3月にN700Sの確認試験車が完成予定となっている。

JR東海がN700Sの先頭車両の車体と客室モックアップを公開した

東海道・山陽新幹線の車両として定着したN700系シリーズの「最高の新幹線車両」とされるN700Sの開発コンセプトは「新技術の採用」「『標準車両』の実現」「更なる環境性能の向上」「更なる安全・安定輸送の実現」「快適性・利便性の向上」の5つ。「デュアル スプリーム ウィング形」と呼ばれる先頭形状は、N700系シリーズの形状を踏襲しつつ、3次元形状を考慮したシミュレーション技術を活用して進化させたという。小牧研究施設での技術開発成果をもとに、左右両サイドにエッジを立てた形状とし、走行風を整流することで微気圧波・車外騒音・走行抵抗・最後尾動揺を低減する。

前照灯は先頭形状を生かし、窓開口拡大およびレンズ形状最適化によって照射範囲を広げ、視認性向上も図る。LEDライトの採用により、省エネルギー化・照度向上・長寿命化も実現するとのこと。車体デザインは東海道新幹線の象徴である白地に青帯を踏襲しつつ、先頭部の青帯でN700Sの「S」(「最高の」を意味する「Supreme」を表す)を表現する。

N700Sでは小牧研究施設の走行試験装置を活用して実用化した「台車振動検知システム」をはじめ、高性能と軽量化を追求した新型台車、集電性能向上と省メンテナンスを実現した新型パンタグラフなどの新技術も採用。小型・軽量化も徹底し、床下機器配置を最適化することで、16両編成の基本設計を用いてさまざまな編成長(12両・8両など)の車両を線区に応じて容易に適用できる「標準車両」も実現する。国内外問わず一層高品質な車両を低コストかつタイムリーに提供可能としている。

N700系・N700Aと比べて前照灯が拡大され、左右両側に盛り上がった先頭形状に

グリーン車と普通車の客席モックアップ。普通車も全座席にコンセントを設置

インテリアデザインは機能性を考慮しつつ、くつろげる空間となるように柔らかな曲面を採用。グリーン車は「ゆとりある空間と個別感の演出」をコンセプトに、シートはリクライニング時の座面と背もたれ角度を最適化し、くるぶしを回転中心としたリクライニング機構とする。フットレストは大型化され、足元スペースが拡大される。普通車は「機能的で快適な空間」をコンセプトに、シートは背もたれと座面を連動して傾けるリクライニング機構でより快適な座り心地を実現。普通車も全座席にコンセントが設置される。

N700Sの確認試験車は2018年3月の完成に向けて準備が進められている。確認試験車の完成後、次期営業車両(量産車)に反映する新技術の最終確認を行う。その後は東海道・山陽新幹線のさらなるブラッシュアップをめざし、技術開発を推進する試験専用車として活用されるという。N700Sは2020年度の営業投入が予定されている。