アクセルとブレーキの踏みかえが劇的に減少
セレナのDNAである「EASY」は「すべての人が実感できる使いやすさ」に表れているというが、この部分については、e-POWERとの組み合わせで「ワンペダル操作」(日産は「e-POWER Drive」と呼称)という新たな機能が追加となった。
e-POWERは100%モーター駆動で走り、アクセルの踏み込みを弱めたり完全に踏むのをやめた時には、電気を回収してバッテリーを充電する「回生ブレーキ」がかかる。回生ブレーキはエンジンブレーキのようなものだが、これがエンジン車より効くというか、アクセルペダルの操作によく反応する。加減速をアクセルの踏む・弱めるで操作できる点は「ゴーカート」と似た感覚で、踏むのをやめればクルマを停止させることもできる。
アクセルだけでクルマを操作できる領域が広がれば、アクセルとブレーキの踏みかえ回数は少なくなる。中谷氏は「ブレーキの踏み変え頻度がドラマティックに減ると思っている。初めて乗る人は、どこで(どのくらいのアクセルペダル操作で)止まるかについて慣れが必要と仰る場合もあるが、1時間も乗ってもらえれば、楽に止められるようになる。社内データではあるが、踏みかえ回数は7割くらい減る」と説明する。
高速道路を走行する時には、アクセルペダルの操作でエンジンブレーキをかけつつ速度を調整することがよくある。この操作をワンペダルで行うと、回生ブレーキが効きすぎてギクシャクしないかと心配だったのだが、セレナ e-POWERで高速を走った印象としては、そこまで違和感は感じなかった。
クルマの大きさを感じさせないリニアな加速
「FUN」の部分に寄与するe-POWERの特性、それはモーター駆動であることそのものだ。電動ならではの力強い加速とリニアな反応は、停止状態から走りだす時にはっきりと感じられる。つまり、スッと発進できる。「踏んだ分だけ加速するというところを、実際に、具体的にモーターでやるのは結構大変で、どういう風に電流を流すと余計な振動をせず、スムーズにモーターが回るかは、『リーフ』(日産の電気自動車)で長年培ってきた制振制御技術が生きている」というのが中谷氏の解説だ。
エンジン、バッテリー、モーターの全てを持つe-POWERは、場所をとるシステムでもある。セレナが大事にしてきた室内の広さ、つまり「BIG」の部分には悪影響がでてもおかしくないが、セレナ e-POWERではモーターをエンジンルームに積み、バッテリーはエンジンルームと前席下に格納することで「ミニバンNO.1の広さはそのまま」維持できたとしている。
このように、セレナとe-POWERの組み合わせは相性抜群というのが日産の説明だが、e-POWERを投入する背景には、同クラスのミニバン市場で強力な競合車と同居するセレナの販売を加速させたいという思惑も当然ある。