数値の大きさや量を表す形容詞には、「高い」「強い」「大きい」「長い」などいくつもありますが、「効果」の場合は「高い」「大きい」のどちらを使いますか? 本稿では、「効果」の大きさを表す正しい形容詞についてご紹介したいと思います。

■数値に関わる名詞と形容詞

形容詞には、数値に関わる名詞に付いて、その大きさや量などを表すものがあります。例えば、面積が「広い」、利息が「高い」、変動が「大きい」、温度が「低い」等がそうですが、時折、名詞と形容詞の組合せに迷うことはないでしょうか。

「面積が低い」「温度が小さい」とは言わないでしょうし、迷うこともないでしょう。では、「効果」という名詞の場合ではどうでしょうか。「効果が高い」と表現する人もいれば、「効果が大きい」という人もいるでしょう。今回は、この「効果」という名詞に付く正しい形容詞について考えたいと思います。

■「高い」と「大きい」の意味

「高い」と「大きい」の意味を辞書で調べてみたところ、「高い」は、「空間的に基準面よりかなり上にある」「音や香りが顕著である」「序列・価値が上位にある」「志向が高尚である。低俗なものを嫌う」「数量的に多い」「時間的に遠い」「尊大である」と記されています。

一方、「大きい」は、「(物の形の)容積・面積・身長などがほかのものより上回っている。多くの範囲を占めている」「規模がまさっている。勢力がある」「数量が多い」「年上である」「音量がまさっている」「度量がある。包容力がある。スケールが雄大だ」「重大である。重要である」「おおげさだ。実際より誇張されている」「いばっている。謙虚でない」「程度がはなはだしい。ひどい」という意味を持っています。

両者の意味を比べてみると、「上方までの距離」を表す場合には「高い」、「面積やサイズ」などの場合には「大きい」と表現するのが適切であることが分かります。しかし、両者に共通して、「数量的に多い」「数量が多い」という意味があることから、「数値や数量」に関しては、どちらも使用できると考えることが出来ます。

■効果が「高い・大きい」どっちが正解?

前述のとおり、単に意味だけで見れば、「数値や数量」の場合には「高い」でも「大きい」でも間違いではありません。

国立国語研究所がすすめているコーパス言語学(実際に使用された大量の言語の産出データを収集・電子化し、それを用いて言語の仕組みを探ること)によると、「効果が大きい」という従来の表現が、近年、若い世代を中心に「効果が高い」と使われていることが確認されています。

また、NHK放送文化研究所は2013年、「現状では、『効果が大きい』という言い方のほうが一般的です」としながらも、同研究所が実施したアンケート調査では、年代が高いほど「効果が大きい」を支持する人の割合が多いものの、30代以下では「効果が大きい」と「効果が高い」の割合はほぼ同じという結果が出ており、このことから、徐々に「効果が高い」のほうがふさわしいという考えが増え、今後「高い」のほうが主流に成り得ることを示唆していました。さらに、近年では、「度合いのはなはだしさ」を表すのに「高い」が使われることが多くなってきていると言います。この現象は、特に「○○性・○○率・○○度(が)」などで多く見られるようです。

「高い」と「大きい」という形容詞に限定し、コーパス言語学によるほかの例を見てみると、「可能性」や「割合」では「高い」も「大きい」も使用されていますが、いずれも「高い」を使用するケースが多いようです。「頻度」は「高い」に限られ、「恐れ」は「大きい」が優勢、「リスク」はほぼ同等となっています。

このように、数値を表す名詞と形容詞の組合せには、その名詞ごとに相手を選ぶ癖があるだけではなく、時代とともに変化することもあり、「この名詞には絶対にこの形容詞」と断言するのは難しいケースが多いようです。


今回は、「効果は高い」「効果は大きい」のどちらが正しいかということをテーマにお話ししました。現状、両者はほぼ同等の割合で使用されており、どちらが間違いとは言えないようです。しかしながら、年齢が高いほど「効果が大きい」を支持する人が多いことは明らかです。ビジネスシーンでは、誰と仕事をしているのかといった状況も踏まえて使うようにするといいかもしれませんね。