大井町線急行の増結、および来春のダイヤ改正は、東急にとっては、すでに中長期的な構想には織り込み済みのことでだったであろう。ただ実施には、少々、苦しい部分もあった。

ホーム延伸工事と、ホームドアの増設が行われた大井町駅

例えば、ホームの長さが足りない駅もあった。ターミナルの大井町と、東横線との乗り換え客が多い自由が丘である。いずれも7両分への延伸は可能だったが、キーポイントであったことには違いない。先見の明を示したとは言えないだろう。旗の台と大岡山は駅の改良時にホームを延伸済みだった。二子玉川と溝の口は10両編成対応の田園都市線乗り場の向かいが大井町線乗り場であるから、もともと問題はない。

車両の寿命をにらんで少子高齢化に対応?

6000系6両編成を7両に増やすための車両は、新たに製造された。6020系も老朽化した車両の取り換えではなく、純粋な増備と見られる。急行増発が予定され、かつ大井町線の7両編成は、同線の急行専用(7両対応ホームがある駅は、急行停車駅に限られるため)だから、取り換え対象の車両が見当たらないのである。

こうした例は、最近では比較的珍しい。利用客増に応じて単純に車両を増やすと、近い将来、起こる可能性がある利用客減少の際には、余剰車両の発生が懸念される。つまり、無駄な設備投資となりかねないからだ。

鉄道車両の寿命は30・50年とも言われる。実際は、車体の素材(鋼鉄かステンレスかアルミニウムか)や、会社ごとの方針も違いがあって、一概には言えないのだが、一応の目安である。新車1両の値段は2億円程度とも言われ、大きな設備投資だ。一度、造ってしまうと、要らないからすぐ廃車するとはいかない。