西武ホールディングスは、6月24日に西武第二ビル「くすのきホール」で第21回定時株主総会を実施した。同社によれば、今年は358人の株主が会場に出席したとのこと。審議で質問した株主数は10人。うち4人が鉄道関連の質問等を行った。
昨年に引き続き、同社代表取締役社長 社長執行役員兼CEO兼COOの西山隆一郎氏が株主総会の議長を務めた。鉄道関連の質問等はすべて西武鉄道取締役の町田明氏が回答した。
西武球場前駅リニューアルに関心、駅の「スマート化」に指摘も
西武鉄道は6月17日、西武球場前駅(狭山線、山口線)のリニューアルについて発表している。ベルーナドームをはじめ、多彩なレジャー施設への玄関口となるエリアで、さらなる魅力向上をめざし、今後の発展も見据えて駅空間を整備。2029年度まで4年間かけて駅舎の建替えとコンコースの美装化、大屋根の設置といったリニューアルを行う。
その西武球場前駅に関して、所沢在住という株主から質問があった。「駅前の改修については大変喜ばしい」とした上で、「先日の大雨で駅前が浸水し、改札内や店舗にも水が入って大変だったところを見ました。改修にあたって、今回のようなことが起きなくなるのか、気になりました」とコメント。西武球場前駅は2025年3月から「駅係員による遠隔対応駅」(インターホンで案内)となったが、「野球開催日やイベントがある日はスタッフが多くいらっしゃって安心している」一方で、「基本的にいまは無人駅で、平日に行ったこともありますが、本当に人もいなくてガラガラ。なにかあったとき、遠隔になるのは少し不安」とも語った。
これに西武鉄道取締役の町田明氏が回答。「ご指摘の通り、先日、大雨による浸水等もありました。こういった点につきまして、改修時に自治体等とも協議を進めながら、快適な駅となるようリニューアルを進めていきます」「イベント非開催時の状況について、窓口で専属的に案内する係員は配置していませんが、一部時間帯を除き、係員も駅に配置しています。近接の駅等とも連携しながら、非常時の対応が必要なときは速やかに対応します」と述べた。
西武球場前駅だけでなく、他の一部駅でも「駅係員による遠隔対応駅」(インターホンで案内)への移行が進んでいる。別の株主もこのことに言及し、「いまは乗降者数2万人前後の駅でも無人化が進んでいる」と指摘。「(無人化する)判断基準と、今後増加するのか、メリットはあるのか。我々からすると、地元の生活路線を支えるため株主になったという部分もあり、自分たちの生活が不便になるようなものは望ましくないという思いもあるので、どういった展望があるのかお聞きしたい」と質問した。
町田氏は、「いわゆる無人化、我々は『スマート化』と申し上げていますが」と前置きした上で、「労働力不足が加速する中、鉄道事業を安定的に持続させることが目的。IT等の新技術を活用しながら、お客様の安全を確保しつつサービスを維持し、引き続き可能なところはスマート化を進めたい」と回答。「リモート対応についてはインターホン等を活用し、駅係員が不在の場合であっても遠隔でお客様対応を行うことを想定しています」と説明した。
池袋線・新宿線「各駅停車が少なすぎる」改善求める声
西武池袋線・新宿線に対し、「ダイヤを両方なんとかしてください。あまりにも各駅停車が少なすぎます」と訴える株主もいた。各駅停車から急行・準急などの列車へスムーズに接続できず、途中の駅で長時間待つ場合や、各駅停車から各駅停車への乗換えを強いられる場合もあるという。池袋線・新宿線の各駅停車のみ停車する駅に関して、現行の時刻表を確認すると、比較的本数の多い池袋線でも、駅によっては平日日中に運転間隔が10分以上空くこともある。新宿線も各駅停車は平日日中におおむね10分間隔が基本となっている。「新宿線は接続も非常に悪い。待避というか、待ち合わせの駅も設定されていません」との指摘もあった。
「はっきり言って、ここでもう3度ほど同じ質問をしています。でも改善されません。なぜでしょう」と株主は言う。「もうちょっと沿線のお客さんや株主の話を聞いてください。じゃないと本当にお客さん逃げていきますよ。不動産にも響きますよ。ダイヤが不便だからという理由で引っ越されて、どうやってお客さんを戻すんですか?」と不満を述べる場面もあった。
町田氏はこれを受けて、「列車のダイヤは西武鉄道全線全駅のご利用状況や、急行・各駅停車を含む種別構成、接続など、全体的に考慮した上で策定しています」と説明。「各駅停車が少ないとのご指摘は、ご不便をおかけしているものと受け止めていますが、今後も需要動向を丁寧に見極めながら、利用状況に即したダイヤ編成を検討します」とした。新宿線中井~野方間で進めている連続立体交差事業にも触れ、「事業等により設備が一部使えないところもありますが、そうした設備も改良を進めています。連続立体交差事業等で完成した設備を使用し、より良いダイヤをめざしていきます」と語った。
障がい者割引や上下分離方式に関する質問も
その他、障がい者を対象とした割引制度に関して、利用条件のひとつに「西武線内を50キロを超えて乗車する場合のみ」とあるものの、「新宿線だと50kmいかないんですね(西武新宿~本川越間は47.5km)。池袋線も、池袋から行くと飯能より先の武蔵横手(西武秩父線)まで行ってようやく50km超えるくらいなので、実用性に欠けるのではないかと思います。もう少し利用しやすい条件にしていただけたら」という要望も。「障がい者割引等の社会政策的な割引のあり方については、公的助成の可能性も含めて慎重に検討する必要があるとの認識です。割引制度のあり方について、継続して検討していきます」と町田氏は答えた。
「滋賀県の近江鉄道は上下分離式に移行していますが、(グループ内の)他の鉄道事業でもそういったことはあるのか」という質問もあったが、「近江鉄道のような地方鉄道は民間企業単独で鉄道事業を行うことがきわめて困難で、上下分離によって自治体等の支援を得ているという認識です。西武鉄道においては都市鉄道であり、公共性が高く、安全安心を第一に安定的な事業運営を継続していくことが使命と考えています。引き続き、お客様に選ばれる沿線にするべく、路線全体を立体的に運営していきます」(町田氏)とのことだった。
西武鉄道は今後、新宿線へ新車両「トキイロ」の導入、「ニューレッドアロー」を改造した新宿線観光特急の導入とJR線への直通運転、新型レストラン列車の導入などを予定。これらの新車両は鉄道ファンらの間でも話題となった。小田急電鉄や東急電鉄から譲り受けた「サステナ車両」の導入拡大、新型車両による「レオライナー」の車両更新も進められている。
一方、西武ホールディングスの株主総会で今回出された質問内容を見ると、新車両や新規事業よりも、駅サービス、ダイヤ、割引制度といった日常利用に直結するテーマが多くを占めた。沿線住民でもある株主から、利便性を維持しながら鉄道事業をどう持続させるかという視点の質問が相次いだことは、人手不足と設備更新への対応が求められる都市鉄道の現状を映し出しているといえるかもしれない。
株主総会では、鉄道事業の他にもバス事業や不動産事業、さらに埼玉西武ライオンズに関する質問・要望も複数寄せられた。なお、今回の決議事項だった「第1号議案 剰余金の配当の件」「第2号議案 取締役14名選任の件」「第3号議案 監査役3名選任の件」については、いずれも賛成多数により原案通り可決・承認されている。



