2016年8月26日に公開、週末動員数1位を12回記録、興行収入は250億円を突破した映画『君の名は。』。様々な映画賞にノミネート・受賞し、日本アカデミー賞ではアニメーション作品としてはじめて最優秀脚本賞受賞に輝いた。さらに日本のみならず、アジア圏でも大ヒットを記録、また7月に発売となったBlu-ray&DVDも異例の大ヒットとなっている。

ロングランのあまり、公開後約1年を経てようやく7月にBlu-ray&DVDが発売された同作。 この大ヒットについて、出演者はいったいどのように感じていたのか、立花瀧役の神木隆之介、宮水三葉役の上白石萌音に話を聞いた。

左から神木隆之介、上白石萌音 撮影:宮田浩史

映画館で偶然友達にばったり

――『君の名は。』に出演されていたお二人ですが、これはヒットするぞという予感はありましたか?

神木:公開されないと本当にわからないものなので、確証はありませんでしたが、試写や関係者の方達、取材で接するインタビュアーさんの評価もすごく高くて、心に届いている作品なんだという実感はありました。取材の時にも長く感想を語っていただいて、本当に細かいところまで見てくださっていたんです。でも、こうなるとは思っていませんでした。

上白石:私も「まさかここまで」という感じですね。オーディションに行く前、仮の台本を読んだ時から「すごい映画ができるんだな」という予感はあって、アフレコの際もずっと持ち続けるどころか、むしろ拡大していくくらいの感じだったのですが、「ここまでヒットするなんてか」と。途中から、自分のこととは思えないほどの感覚になっていきました。「すごいなあ」と、理解のキャパを超えました(笑)。

――週末のランキングでも「今週も1位か!」と毎週驚いていました。

神木:大根(仁)監督から「1位をゆずれよ!」と連絡が来ました(笑)。

――周りの方からも、そういう反応はよくあったんですか?

神木:「観たよ」という声はたくさん聞きました。僕も普通に映画館に観に行ったら、偶然友人に会いました。

上白石:その映画館、すごい!

神木:本当に嬉しかったです。友人と偶然会うということは、普通に観に来てくれるということなので。同級生の俳優仲間も、取材で『君の名は。』を観たと言って、僕の表現について語ってくれていたんです。同い年の友達にも「観たい」と思ってもらえて、刺激が届いているんだと思ったら、嬉しかったです。

――上白石さんもそういった周りの反応は実感されていましたか?

上白石:私は今、大学生なので、観ている層がドンピシャでした。廊下を歩いていたら、いろんなところで『君の名は。』の話がされているんです。「三葉がこの学校にいるらしいよ」と聞こえたりして。教授が『君の名は。』の言葉に関する考察の授業を始めたこともありました。正直、「良いレポートが書けるな」と思いましたし、私が座ってじっと聞いていたので、先生も気まずそうでした(笑)。作品の横の広がりだけでなく、奥行きや深さも実感しました。

アニメの熱さを感じた

――日本アカデミー賞でも、特撮映画の『シン・ゴジラ』、アニメ映画の『この世界の片隅に』などとあわせて、邦画の垣根がなくなっているのではないかという雰囲気を感じましたが、そういう流れは感じましたか?

神木:去年はそういった作品を楽しんでくれる人たちがいた年だったのかな、ということはすごく感じました。俳優が声の仕事をしたり、声優さんたちが歌って踊ったり、いろいろとこちらの垣根もなくなってきていますよね。

それこそ『君の名は。』で音楽を担当された、RADWIMPSの野田洋次郎さんも俳優をされていますし、その他にもまわりの俳優仲間がジャンルの垣根を越えた、色々な活躍を見ると、新しいことをするタイミングなのかもしれない、とも思いました。皆さんが何を求めているのか、僕らも全く予想がつかなくなっていますし、いろんなことにチャレンジしたい気持ちがあります。声優という点で言えば、今回、島崎信長さんや石川界人さんと掛け合いをするときもすごく緊張しましたが、信長さんたちが優しく迎えてくださったから、安心してできました。

上白石:やっぱり、アニメって熱いですよね。日本を出て、アメリカなどでも文化が根付き始めているし。『君の名は。』で色々な国に行って、文化が違う方と一緒に映画を鑑賞して、反応の違いもすごく面白くて。今の日本の日常を切り取ったような絵が海を越えて広まっていくのは、すごく面白いことだと思いました。国の垣根も超えてしまったような感じがして。いろんな言語に吹き替えられて、そういう広がりは今まで私の中にはなかったです。