スカイツリーの登場で、その周辺は、まるで新しく作られた街のように様変わりした。しかし少し歩みを進めれば、そこには古くから続く下町風情が息づいている。そんな下町のひとつ、曳舟に「キラキラ橘商店街」というキュートな名前の商店街がある。ここは、昔懐かしい街並みを残していることから、ドラマで使われることも多いという。実際にはどんな街で、どんな食べ歩きができるのだろうか。

ふとすると、猫がいる。みんなシャイなのか、なかなか写真を撮らせてくれない

「キラキラ」のネーミングに胸躍る

筆者の取材候補地リストの「キラキラ橘商店街」の項目には、選んだ理由に「何だか名前がいい」と書いてあった。きっと、大きな商業施設のように凝った意味合いで付けられたのではなく、だからこその素朴さが「キラキラ」の4文字に溢れている。訪れてみると確かに素朴で、小さなキラキラがいろいろなところにあるような気がした。

キラキラ橘商店街の最寄り駅は、京成曳舟線「京成曳舟」駅。スカイツリーのある押上駅からは一駅、2分の乗車となる。駅から明治通りを東に10分ほど行くと、キラキラ橘商店街のゲートを見つけた。

平成元年に新しくされた商店街のゲート。「キラキラ橘商店街」の名前もその時に公募で決められたという

この付近は以前、壺に落ちる水滴の音を楽しむ「水琴窟(すいきんくつ)」の取材で訪れたことがあった。昭和の面影を存分に残す家々の間には、細い路地が入り組むように続く。町の人は、見知らぬ筆者に対しても不意に声をかけてくるような人懐こい下町感があった。キラキラ橘商店街はどうだろうか。

創業大正元年! 昔懐かしいコッペパン

商店街を歩いてみると、「とても古風な個人商店が多い!」ということに気付くだろう。猫も、これまで訪れたどの商店街よりもうろついている。古風な店のひとつ、「ハト屋パン店」は、大正元(1912)年創業という老舗だ。看板には「カステラ」と書かれているものの、ショーケースの中にはいくつかのコッペパンが並んでいるだけ。その潔さに、妙に惹かれてしまうものがあった。

コッペパンは戦後から作り始めたとのこと。ひとつひとつ形が微妙に違うところに手作り感がある

コッペパンは130円、ジャムまたはピーナッツクリームを挟んでもらうと160円。写真はピーナッツクリーム入り

おでん屋でスカイツリーを発見!

商店街の案内所の方によると、「ここにはお惣菜のお店が多い!」とのこと。確かに、"地元の台所"どころか"地元の食卓"的にすぐに食べられるお惣菜の店が並んでいる。

おでん種の店「大国屋」では、夏だというのに鍋におでんを仕込んでいた。「さすがに暑い」と思いつつガラスケースを見渡すと、ひょろ長いさつま揚げを見つけた。どうやらスカイツリーを象(かたど)っているらしい。

さつま揚げ「スカイツリー」と、花の形がかわいい「紅生姜揚」(各60円)。スカイツリーは青のりが入っている。「すぐに食べるなら」と、串に刺してくれた

食べ歩きの定番、唐揚げも欠かせない

焼き鳥の店「鳥正本店」で、「やっぱり焼き鳥が人気ですか」と問うと、「食べ歩きには唐揚げもオススメですよ」とのこと。唐揚げは100gで140円。「大体4個で100gだから、食べ歩くなら串に4つ刺しますよ!」と言ってくれた。

唐揚げ(140円/100g)。刺そうとしたのは焼き鳥用の串だったため「ごめんなさい、3個しか刺さらなかった……」と照れくさそうな笑顔で串を差し出してきた。「1個食べたらもう1個刺します!」とのことだったので、急いで1個食べ、刺してもらった

ちょっと歩いた先、昭和な商店街の中ほどに、まるで代官山にでもありそうなオシャレなカフェ「すみまめカフェ」を見つけた。続いてはそんなオシャレカフェで見つけた限定ドリンクを紹介しよう。