東京国際空港ターミナル(TIAT)、日本空港ビルデング(JAT)、日本電信電話(NTT)、パナソニック(パナソニック)は8月8日~2018年3月31日に、羽田空港国際線・国内線旅客ターミナルにて、情報ユニバーサルデザインの取り組みの公開実証実験を開始する。

NTTはスマートフォンのカメラ等を看板や物体にかざすだけで、母国語で有益な情報を得ることができる「かざして案内」を導入

羽田空港では、訪日外国人増加とともに少子高齢化が進む中、ユニバーサルデザインの取り組みにおいて、最新の情報技術(ICT)との融合が必須となると考え、2015年12月よりユニバーサルデザインの高度化に取り組んできた。このほど、こうした取り組みに一定の成果が見られたことにより、羽田空港を利用者が実際に利用できる、公開実証実験の環境を整えた。

実証内容として、NTTは「かざして案内機能」(案内サインからの館内ナビ、飲食店メニューの多言語・多文化対応)、出国審査口の混雑計測・予測と動的サインによる「人流誘導」、音声明瞭化技術の「音サイン装置への実装」。パナソニックはロボット電動車いす「WHILL NEXT」による自律走行、LinkRay技術を用いた訪日外国人向け交通案内を実施する。

NTTは、スマートフォンのカメラ等を看板や物体にかざすだけで、母国語で有益な情報を得ることができる「かざして案内」を導入。かざした結果、交通情報等が母国語で閲覧できるだけでなく、今いる場所とターミナル全体を一目で把握できる立体地図や、ユニバーサルデザインに配慮したルート案内、不慣れな日本料理等を分かりやすく紹介する、といったコンテンツを利用できる。

今回、TIAT公式HPの「かざして案内」機能を利用することで、旅行客の方がアプリをインストールせずに簡易に利用できるようにした。かざす対象は、空港内の誘導看板・案内看板、特定レストランのメニューを第一弾とし、2017年度末には全レストランのメニューや観光案内ポスターなどに拡張することを予定している。今回の公開実証実験の中で、利用率や旅行客からの意見を踏まえながら、サービス化に向けてより使いやすいインタフェースやコンテンツを提供していく。

誘導サイン(TIAT 3F 出国審査口付近)

人流誘導は、画像認識技術を活用してカメラ画像から人流を自動計測するとともに、混雑状況やその予測結果に応じて自動的に表示コンテンツを変更し、プロジェクタやデジタルサイネージなどで提示するというもの。エリアの状況に合わせて表示言語の提示時間を調整しつつ、外光の入り具合に応じて表示位置を変えるなど、多数の人に伝わりやすいデザインで案内情報を提供することが可能となる。今回の公開実証実験の中で、出国審査口での混雑計測・予測精度の評価や混雑平準化の効果を確認し、サービス化を目指す。

カメラによる群衆解析(TIAT 3F 出発ロビー)

音サイン装置への実装に関しては、ボリュームを上げることなく、周囲に騒音があっても人の耳に聞き取りやすい音声案内を実現する。空港内の既存の音声案内装置を用いて、事前に収録した環境音を利用して作成した明瞭化音声を視覚障がい者に提示する評価実験を行い、その有用性を確認している。

インテリジェント音サインの適用イメージ

一方のパナソニックに関して、WHILLとパナソニックが共同開発している「WHILL NEXT」は、今後さらなる空港利用増加が見込まれるPRM(Passengerswith Reduced Mobility)の安全で快適な移動を実現するためのロボティクスモビリティ。2017年度は空港内での自動停止機能、自律移動機能、隊列走行機能の技術検証を行うとともに、航空会社の協力によって現場分析を行い、スタッフの作業負荷軽減と乗客の利便性向上の検証を行う。

ロボット電動車いす「WHILL NEXT」による自律走行

(左から)自動停止機能、自律移動機能、隊列走行機能

LinkRay技術を用いた訪日外国人向け交通案内は、訪日外国人の3人に2人が空港で困っている(観光庁「外国人旅行者に対するアンケート調査結果について」より)「公共交通機関の情報」に着目し、「乗換案内」を提供しているジョルダンとの協業により、LinkRay技術でスマートフォンと連携する「交通案内サイネージ」を設計したもの。

LinkRay技術を用いた訪日外国人向け交通案内

空港に到着した外国人旅客が最適な交通手段をスムーズに選択できるようにするためのワンストップ交通案内を多言語で提供し、その有効性を検証する。また、京浜急行電鉄の協力により、羽田空港国際線ターミナル駅でもLinkRayスポットライト型を使用し、券売機上の路線図にスマートフォンをかざすだけで目的地までの経路を多言語で検索・案内するサービスも提供する。