日本で一番忙しい空港・羽田。国土交通省の平成27年統計における乗降客数では、7,531万6,718人(国内線: 6,256万6,875人、国際線: 1,274万9,843人)で2位の成田(国内線: 672万743人、国際線: 2,804万5,188人、合計: 3,476万5,931人)の2倍以上となっている。そんな羽田で活躍するJALのグランドスタッフ(GS)に、羽田の日常や知られざるGSの秘密をうかがった。

羽田空港国内線で勤務している金山花生さんに、グランドスタッフの知られざる日常をうかがった

全GSの頂点を決めるコンテストも

羽田からJALの翼で飛び立つ乗客は、1日平均して約3万5,000人いるという。そのため、GSの人数も、JAL最大となる約1,260人(国内線: 約700人、国際線: 約560人)が業務に当たっている。今回、お話をうかがったのは羽田空港・国内線で活躍している金山花生さん(2009年入社)。GSの接客スキルを競う「空港サービスのプロフェッショナルコンテスト」のファイナリストという実力者だ。

このコンテストは毎年11月に開催しており(初開催のみ2月に実施)、2016年開催で5回目となる。男女問わず、国内・海外のGSがそれぞれの空港を代表して出場し、アナウンスとカウンターチェックの実技で競う。ただナンバーワンを決めるだけではなく、それぞれの空港でどのようにJALならではの"おもてなし"がされているのかを学ぶ場にもなっているという。

2013年に開催された第2回「空港サービスのプロフェッショナルコンテスト」にて。JAL社員が乗客役となり、イレギュラーの場でどう適切に対応できるかを試す

なるべく空港時間を短縮したい時は?

ここからは、「羽田を活用する上で知っておきたい」ことや「GS、実はこんなこともしています」ということを金山さんにうかがってみた。

国内線でなるべくスムーズに飛行機に乗りたい時はどうしたらいいですか?

金山さん: お預けの荷物がないようでしたら、直接保安検査場に進めるサービス「JALタッチ&ゴー」をご利用いただけます。PCやモバイル端末にて予約・購入し、当日までに座席指定もしていただければ、出発便の15分前までに保安検査場に到着していれば大丈夫です。ビジネスユーザーの方だとこのサービスを利用される方が多いので、普段のカウンター業務でビジネスユーザーの方と接する機会は少なくなっているように感じています。

国内線でも、荷物を預けたいという場合もありますよね。

金山さん: お客さま自身で荷物をタグ付けする「JALエクスプレス・タグサービス」というものもあります。タグ付けされた荷物を専用カウンターにお持ちいただいての受付でしたら、有人カウンターでタグ発行・取り付け・お預かりするよりもスムーズです。タグ発行機は羽田のほか、伊丹、新千歳、福岡、那覇にも設置しています。

カウンターではグランドスタッフが旅のサポートをしてくれるが、スタッフを介さずに搭乗することもできる

「子連れで飛行機旅をするのは大変! 」という人も多いと思います。そんな人に「ぜひ活用してほしい」という空港サービスはありますか?

金山さん: 羽田には通常カウンターの他、車いすのご利用や盲導犬の同伴、特別食の有無など、お客さまのニーズにあった旅をサポートする「スマイルサポートカウンター」を設けています。事前予約なしで利用できるサービスとしては、搭乗口まで利用できるベビーカーの貸し出しや、優先搭乗の改札サービスがございます。

また、座席に限りがありますが、3歳未満のお子さま同伴のお客さまは「クラスJ」の優先座席をご利用いただけます。ただし、クラスJは満席になることも多いため、希望される方は当日のカウンターではなく、インターネットで事前に座席指定されることをオススメしています。

CAとGSでは化粧にも違いあり

CAだと、「前髪が目にかからないようにする」「爪の先は2mm以内」など、メイクや身だしなみに関して細かい規則があるとうかがいました。GSにもそうした規則はありますか?

金山さん: お客さまに接する業務ですので、身だしなみに関しては入社してすぐに学ぶ機会があります。ピアスのパールは5mm以内、爪の先は2mm以内、指輪は両手で1個以内、前髪が目にかからないようにする、などというのはCAと同じです。

グランドスタッフはアイシャドーにもこだわりが

GSならではで言うと、アイシャドーをパープルやピンク、グリーンなど目立つカラーでしっかり入れるというのがあります。お客さまに対面している際、目線を下ろしてPC作業をすることがありますので、華やかな印象を与えられるようにという意味が込められています。逆に、ベージュやピンクなど華美にならないカラーでのマニキュアは、CAには必須になっていますがGSに対しては規定はありません。

襟元のバッジは、コンテストの際にファイナリストへ贈呈された「Service Adviser JAPAN AIRLINES」のバッジですよね? その隣のバッジはどのようなものでしょうか?

金山さん: この夏より、国内線全線でCAがそれぞれに縁のある47都道府県をデザインしたバッジ「縁(ゆかり)都道府県バッジ」を着用して乗務していますが、実はGSも着用しています。お客さまとのコミュニケーションのきっかけになれば、というところでスタートした取り組みですが、受付ではなるべく早く済ませたいというお客さまと接する機会が多いので、このバッジがコミュニケーションのきっかけになったということはまだ少ないですね。今後、そうした機会が増えればいいなとは思っています。

上はコンテストのファイナリストに贈呈されたバッジで、下が「縁都道府県バッジ」。金山さんは出身地である岐阜デザインのバッジを付けていた

遅延・欠航の乗客対応、「できません」は言わない

台風や大雪などで遅延・欠航になることもあるかと思います。そのような時、空港ではどのように対応されていらっしゃいますか。

金山さん: 遅延・欠航などの情報はOCC(オペレーションコントロールセンター)で決定され、そこから現場の私たちに連絡が入り、空港にいらっしゃるお客さまにご案内しています。この8,9月は台風が立て続けに発生し、条件付き運航(到着空港が悪天候で着陸できない場合、引き返すまたは着陸空港を変更する)になるケースもありました。遅延・欠航情報はホームページやツイッターなどでも発信していますが、場合によっては羽田への乗り口でもある浜松町駅にスタッフが立って案内することもあります。

また、フライト目的が仕事か旅行かで、お客さまの希望は変わってきます。こちらで調べてお答えできることは各自が対応していますが、以前、条件付き運航の飛行機に乗ろうか、最終便に変更しようかと悩まれている親子のお客さまがいらっしゃり、到着空港のスタッフに状況を電話で確認して対応したこともありました。到着空港では天気も回復に向かっており、おそらく到着も大丈夫だろうという情報がもらえたので、そうお客さまにお伝えしたところ、「どうしたらいいのか分からなくて困っていたから、相談できて良かった。ありがとう」と言ってもらえたことがありました。

乗客からの「ありがとう」はやはりうれしいもの

そうしたイレギュラーな時はナーバスになっている方も少なくないと思います。特に気をつけていることがあれば教えてください。

金山さん: まず、じっくり聴くことを心がけています。また、「できません」とは言わず、「こうした方法がございます」と代わりの案を出すようにしています。「できません」と言ってしまうと否定されてしまったという印象を与えてしまいます。限られた状況だとしても、できるだけお客さまの心に寄り添ったサービスができるように心がけています。

最後に、羽田では今、首都圏空港として機能強化が進められています。羽田で働くスタッフとして今後に期待するところや想いを聞かせてください。

金山さん: 私は国内線勤務なのですが、今後は国内線でも海外からのお客さまの利用がさらに増えてくると思われます。もう少し英語の勉強が必要だなと感じていますが、日本のおもてなしの心も含め、魅力をお伝えできる機会が増えることが楽しみでもあります。