このように、「怪獣倶楽部」メンバー諸氏は、70年代の終盤になるとそれぞれプロのライターや編集者として多忙になり、結局第六号は原稿がそろっていたにも関わらず、発行されなかった。児童向けがほとんどだった「特撮」「怪獣」関連出版物を、ファンの作品研究欲を満たす方向性へと変えていったことで勃発したのが「第三次怪獣ブーム」であり、その仕掛人たちはまさに「怪獣倶楽部」メンバーだったのである。
「第六号は『空の大怪獣ラドン』の特集をやろうということで、みんなの原稿もそろっていた。僕も比留間伸志(ミニチュア製作)さんにインタビューしていたんです」(原口)
2011年に惜しくも故人となった竹内氏の生前の人となりについて、西脇氏、金田氏、原口氏に尋ねると、
「竹内さんは資料でも何でも、自分だけが所有して満足というんじゃなくて、印刷物などの商品にして大勢のファンたちに"公開"することにこだわっていた」(原口)
「資料を抱えてしまうことはなかった」(金田)
「出版でも音楽でも、1人でも多くのファンたちに面白さを伝えたいという思いで仕事をしていた」(西脇)
という言葉が口々に返ってきた。竹内氏の特撮作品、怪獣映画にかける強い"思い"のエッセンスはドラマ『怪獣倶楽部』の劇中でも、十二分に感じられる。
ドラマ『怪獣倶楽部』は、関西(MBS)ではすでに最終回(第4号)の放送が終了しているが、関東(TBS)での放送は6月27日。この日は、奇しくも竹内氏の命日にあたる。原口氏が経営する「BAR KAIJU-CLUB」(2016年オープン)では、今宵も怪獣倶楽部メンバーが酒と怪獣談義を求めてふらりと訪れるという。「怪獣倶楽部」はかつて存在したのではない。現に今も実在している。
秋田英夫
主に特撮ヒーロー作品や怪獣映画を扱う雑誌などで執筆。これまで『宇宙刑事大全』『宇宙刑事年代記』『メタルヒーロー最強戦士列伝』『ウルトラマン画報』『大人のウルトラマンシリーズ大図鑑』『ゴジラの常識』『仮面ライダー昭和最強伝説』『日本特撮技術大全』『東映スーパー戦隊大全』『ゴーグルV・ダイナマン・バイオマン大全』『鈴村健一・神谷浩史の仮面ラジレンジャー大百科』をはじめとする書籍・ムック・雑誌などに、関係者インタビューおよび作品研究記事を多数掲載