『ウルトラマン大百科』(ケイブンシャ) 著者私物より

また怪獣倶楽部メンバーの仕事は、青年向けのムックだけに留まらず児童ターゲットの書籍類でも変わらず高いクオリティを発揮した。1978年8月発行の『ウルトラマン大百科』(ケイブンシャ)では、『ウルトラQ』から『ウルトラマンレオ』までのシリーズ7作品の基本設定と全ストーリーを一冊にまとめるという画期的なコンセプトにより、こちらも大人から子どもまでを巻き込む大ヒット書籍となった。

ページに挿入されるミニコラムなどもルビ(ふりがな)入りの文章でありながら、明らかに青年層に向けたようなマニアックな内容のものがあったりと、まったく子どもに媚びていない直球な内容となっている。放送当時の児童雑誌ではほとんど紹介されていなかった『タロウ』後半や『レオ』の怪獣・宇宙人についても、しっかりと設定や紹介文が載せられている。

実は、第二期「ウルトラマン」シリーズ『帰ってきたウルトラマン』『ウルトラマンA』『ウルトラマンタロウ』『ウルトマンレオ』の怪獣・宇宙人の設定資料が現在も充実している根底には、「怪獣倶楽部」メンバー諸氏による尽力があったからに他ならない。これら出版物、およびレコード商品のヒットを受けて、全国各地のテレビでは『ウルトラマン』『ウルトラセブン』をはじめとする「ウルトラマン」シリーズの再放送が始まり、これが引き金となって「第三次怪獣ブーム」と呼ばれる社会現象を巻き起こすことになった。

「ウルトラマン」シリーズだけではなく、すでに『メカゴジラの逆襲』(1975年)で一時終了していた東宝映画の「ゴジラ」シリーズにも、熱い注目が注がれた。第1作『ゴジラ』のメイキング記事をはじめとする重厚極まりない研究・資料ムック『ファンタスティックコレクションNo.5 特撮映像の巨星 ゴジラ』(1978年5月)や、ベストセラーになった『ゴジラ大怪獣事典』(1978年2月)など講談社による一連のゴジラ本(グループ有翼人名義)も「怪獣倶楽部」メンバーの仕事である。

『ファンタスティックコレクションNo.5 特撮映像の巨星 ゴジラ』(朝日ソノラマ) 著者私物より

東宝レコードから「ゴジラ」シリーズの主要な音楽を集めて構成されたLP(竹内氏と西脇氏が選曲、構成を手がけた)『ゴジラ オリジナル・サウンドトラック』(1978年2月)なども大ヒットし、この翌年(1979年)には「ゴジラ」誕生25周年記念のリバイバル興行「ゴジラ映画大全集」が実現している。


「『ゴジラ オリジナルサウンドトラック』は、その前に東宝レコードで出していた『日本の映画音楽』の第4弾『伊福部昭の世界』が、他の作曲家レコードの倍(4,000枚)の売り上げを示したのを受けて企画されました。それまでは子ども向けの主題歌集くらいしかなかったゴジラのレコードだけど、映画用のオリジナル・テープを元にしたものを作ったのはこれが初めてのことでした」(西脇)


「映画のサントラレコードっていうのは以前からありましたが、それはレコード用に演奏し直した音楽がメイン。映画の中で使われたオリジナル音源が商品化される先がけとなったのが『ゴジラ オリジナルサウンドトラック』ですね」(原口)


「『ウルトラマン』のBGMもそうでした。キングレコードからオリジナルBGMシリーズを出そうと企画するまで、音楽は効果音と一緒で、ステージショウのバックでしか聴くことができない。そんな時代だったね」(西脇)