これまでにない劇場として注目を集めているIHIステージアラウンド東京。客席の周囲を取り囲む360 °全てにステージが展開され、巨大なお盆に乗った観客席が回転し、没入感の中で舞台を楽しめるという。現在豊洲に建設中の新劇場は、TBSが中心となった一大プロジェクトだ。
3月30日からは、劇団☆新感線の人気演目である『髑髏城の七人』を、“花・鳥・風・月”と4つのシーズンに分けそれぞれ異なるキャスト、演出で1年3カ月にわたる長期公演を行う。すでにSeason花では小栗旬、Season鳥では阿部サダヲが主演を務めることが発表されている。TBSという、テレビ局が中心となってこれほどの大きな公演を行うのはなぜなのか。同局の吉田尚子事業局長に話を伺った。
■吉田尚子 |
会見にも様々な部署が協力
――今回のIHIステージアラウンド東京と『髑髏城の七人』については、製作発表記者会見でも出演者のみなさんが「こんなにお金がかかっているなんて」と驚かれていたり、社長が登場したり、かなり大がかりなプロジェクトなのかなという印象でした。
TBS局内のスタジオを使って事業イベントの会見したのは初めてでした(笑)。全社のプロジェクトということで、いろいろな部署が頑張ってくれまして、テレビ番組を担当しているプロデューサーが会見の演出もしてくれたんです。ホテルなどで会見を行っている場合も多いと思いますが、今回はスタジオならではのしかけもあり、様々な部署の協力があって実現できました。
――なかなか、テレビ局が全社的なプロジェクトとして舞台をプロデュースするというのはあまりないのかなと思ったのですが、いかがでしょうか。
TBSの中では、これだけ全社で舞台を作るというのは初めてですね。一つの演目だけではなく、劇場そのものを作ろうというところからスタートしているので、合計4社での大プロジェクトになっています。縁があってオランダの360°シアターの舞台を実際に観た者がいて、「ぜひ日本のみなさんにご紹介したい」という思いがここまで大きくなりました。
もちろん会社としても、色々な会議があるわけです(笑)。そういうところでお話しながら、様々な部署の人たち、さらには役員も社長まで含めて「面白そうだ、やってみよう」と言ってもらえたのは、嬉しかったしありがたかったですね。
放送は放送で生活に身近な良さがありますが、舞台はまったく違う、現場に来て直にその場で空気を共有していただけるエンタテインメントですので。そういう所でもTBSとして、様々なお客様に楽しんでいただける豊かな文化を提供していかなければ、というのは、会社全体の思いでもあります。
――社長が「総合エンタテインメント事業を目指す」とおっしゃっていたと思いますが、どういった展開を考えられているのでしょうか。
もともとの私たちテレビ局のDNAというのか、今までみなさんが触れたことのないようなことに触れていただいて、怒ったり泣いたり感動したりしていただけるのが好きで、そういったことをすごくやりたいという人たちの集まりなんですよね。それは放送に限らずということで、今回も「こんなものがあったんだ」「TBSが新しいことをやってるぞ!」と、ワクワクする感じをみなさんに伝えられたらと思っています。
今回のプロジェクトに関して言えば、360°ステージがあり、演目の真っ只中に放り込まれる“没入感”を味わっていただけると思うんです。とはいえ、やはりテレビ、ラジオ、インターネットといったTBSのメディアを通じて「こんなに素晴らしいものができましたよ」というお話はどんどん伝えていこうと思っています。調整中ですが、DVDメディアや配信といった形で二次的に楽しんでいただける可能性も探っているところです。
このプロジェクト自体は、2020年までを予定していますが、まさにオリンピックの年ですし、アジアで一つしかない劇場ということで、海外から来たお客様にも楽しんでいただければと思っています。どこまで実現できるかはがんばりにかかっていますが、風呂敷は大きい方がいいですから(笑)。夢は大きく、目標も大きく、ですね。