一昨年頃から急激に注目を集めるようになった「ふるさと納税」。全国1,788自治体の中から好きなところに寄付ができる制度だが、昨年度最も寄付を集めた自治体はどこかご存じだろうか。

宮崎県都城(みやこのじょう)市だ。

宮崎県の南西端に位置する、宮崎市に次いで県内2位の人口約16万人ほどの都市。この都城市がなぜ2015年度の「ふるさと納税」全国1位になれたのか、現地で話を聞いてきた。

都城市の池田宜永市長と都城市PRキャラクター兼PR部長のぼんちくん

都城市の池田宜永市長は、2012年11月に市長就任。2014年に「みやこんじょPR課」を立ち上げ、"日本一の肉と焼酎"を、市を知ってもらうためのつかみとすることに決めた。

実は都城市、肉(牛・豚・鶏)の生産量が全国1位、さらに焼酎では市内に本社を構える霧島酒造がメーカー売上高全国1位。本当に"日本一の肉と焼酎"がある場所なのだ。

都城市は肉(牛・豚・鶏)の生産量が全国1位

「黒霧島」「白霧島」などで知られる焼酎メーカー売上高1位の霧島酒造は都城市市内に本社を構える(※写真の「赤霧島」「茜霧島」は数量限定品)

ふるさと納税の返礼品は、この"日本一の肉と焼酎"に絞った。どの自治体も返礼品としてさまざまなものを並べているなか異例のことで、当初は反対の声も少なくなかった。「満遍なく地元の特産品を並べたら他といっしょだし、肉と焼酎をPRしたいから『肉と焼酎だけを皿に載せなさい』って言ったんです。他のものを載せるとメッセージがぼけるから」(池田市長)。

こうして2014年10月から返礼品とした「日本一の肉と焼酎セット」によって、それまで年間200万円~300万円だった寄付金額が4カ月で4億円を超えた。2015年度には、寄附金額42億3,123円、寄付件数28万8,338件を集め、全国1位に。2016年度からは他の物産も取り入れ、現在では地元の企業70社と提携しているが、メインは変わらず肉と焼酎だ。ふるさと納税全国1位だと報道されたこともあって、2016年度の寄付は、なんと2015年度より増えているという。

都城市は2015年度のふるさと納税全国1位に

池田市長は、返礼品を100%地元の企業のものとすることにもこだわる。

「寄付をたくさんもらうためだけなのであれば、返礼品に外の企業の電化製品でも金券でも何でもばらまけばいいんですよ。そうしている自治体もありますが、都城市は100%地元の産物だけ。昨年度は42億円の寄付をいただいて、そのうち30億円くらいは返礼品として地元から肉や焼酎、その他を買っています。それは100%地元に落ちる。差額の12億円は市の純収入になるので、いつも市民の皆さんには『ふるさと納税でいただいた42億円、もれなく都城市のためになります』と伝えています」(池田市長)。

さらに、都城市を全国に知ってもらうために、霧島酒造の本格芋焼酎「黒霧島」ブランドに"乗っかる"というユニークな取り組みも行っている。

「行政が今までやったことがないことをやらないと、これからの行政は生きていけない。行政が民間に乗っからせていただこうということで、『あなたの知らない都城は、あなたの好きな黒霧島の故郷です。』『黒霧島 MADE IN 都城』という看板を掲げています。黒霧島と都城市をリンクさせるのが一番PRとして早いのではないかと思いまして」(池田市長)。

都城市を「黒霧島」でPRする