本屋B&B(東京都・下北沢)は6月3日、今年会社を退職した長谷川哲士さん、かっぴーさん、菊池良さん、市原えつこさんによるトークイベント「退職したけど何か質問ある?」を開催した。起業・転職・フリーランスと、退職後の進路がバラバラな4人。どうして退職したのか気になって会場で確かめてきた。

今回のイベントのためにかっぴーさんが描きおろしたイラスト

「退職」について語ったのはこの4人

左から、かっぴーさん、長谷川哲士さん、菊池良さん、市原えつこさん

■かっぴーさん
広告代理店からキャリアをスタートし、面白法人カヤックに転職。趣味で描いていた漫画を2015年9月に一般向けにインターネットで公開し、その反響を受けWeb漫画家へ転身。2016年2月に株式会社なつやすみを設立した。

■長谷川哲士さん
リクルートで2年半求人広告業を経験。その後フリーランスを2年、面白法人カヤックのコピー部で4年を過ごす。2016年1月より株式会社コピーライターを設立し、独立している。

■菊池良さん
学生時代に公開したブログの『世界一即戦力な男』 がヒット。その後、Web制作会社でオウンドメディアのライターを経験。2016年4月、某IT企業に転職し、現在ライター業をしている。

■市原えつこさん
2011年某IT企業に入社。大学時代の卒業制作で「セクハラ・インターフェース」を制作。2016年4月からフリーランスに。

起業・転職・独立のきっかけ

イベントの冒頭では、退職して転身した4者4様のきっかけを紹介。

市原さん:「前職は居心地が良かったので、このまま数年いても良いんじゃないかと思ってたんですけど、占い師に『あなたの守護霊が会社から出そうとしているから、1回足を折って考えさせようとする時期が来る』というふうに言われたんですよ。それを忘れて過ごしていた1カ月後くらいに、会社の階段からすべり落ちて、足を折ったんです……(苦笑)。それをきっかけに進路を考えて、足を折った1週間後に上司に『辞めます』って言いました」

長谷川さん:「会社組織にいると、自分が個人でやったことが炎上しても、会社の責任になることがありますよね。でも個人だったら、炎上しても自分以外に誰の被害にもならないし、知名度も上がります。他の人に迷惑をかけたりとか、他の人の給料にも影響があったりすると可哀想ですが、被害に遭うのは自分だけなので。それが理由のひとつかもしれないですね」

かっぴーさん:「最初は会社を辞める気はゼロだったし、漫画は遊びとしか思ってなかった。でも漫画を描き始めたら、どんどん反響が大きくなって、池田エライザさんがTwitterで僕の漫画を読んでくれていることを言ってくださるまでに……(笑)。そういうこともあって、マジで自分の漫画をみてくれた人が増えたんだなあ~と思って、辞めることを考えるようになりました。この頃から社外の人から漫画を描いてください、と言われるようになって。会いにいくたびに『(会社を)辞めないんですか?』と言われてましたね(笑)」

菊池さん:「前職のWeb制作会社のときに、会社の駅前にあったいろいろなカフェをローテーションして外で作業をしていたんですけど、だんだん飽きてきたな……って(笑)。環境を変えてみようかなと思って飛び出しました。最寄り駅を変えたかったんです」

「やりたい」ことより「頼まれる」仕事

続いて、参加者からの質問に対して4名がひたすら答えるという形式で進行。イベントでは赤裸々な回答が次々に飛び出したが……、今回はそのなかの一部を抜粋して紹介していこう。

Twitter上では「#退職カフェ」のツイートからリアルタイムでの質問も受け付けていた!

■質問:「独立(転職願望)は前からあったの?」

かっぴーさん:「B&Bを運営している博報堂ケトルみたいなクリエイティブエージェンシーに憧れていて。大きな広告代理店に転職するより、少数精鋭のイケてる広告プランナーになりたかったので、仲間をみつけて広告プランナーの会社をつくろうとずっと思っていました。でも気付いたら、趣味で描いていた漫画がバズって、わけの分からないことに……(笑)。真夜中に漫画を描いていて、2週間に1回くらい自分何してるの!? って冷静に考えるときがある。独立願望はあったんですが、まさかそっちで……という感じですね」

菊池さん:「今の時代っぽいですね。そっち(漫画)がバズっちゃったから、そっち(の仕事)をやろうっていう」

市原さん:「菊池さん、実感がこもってますね(笑)」

菊池さん:「僕の場合も『世界一即戦力な男』が成功したことがきっかけで、前職のWeb制作会社でも今でもライター業をしているので」

市原さん:「もともとライターになろうと思っていたんですか?」

菊池さん:「ライターになろうっていうか、それしか選択肢がなかった(笑)。営業はできないし、プログラミングを勉強するのも厳しいし、できることで考えたらライターしかないなと。軽い気持ちで始めてみたら、もう今年で29歳なので、もはやライターとしてキャリアを積むしかない。他に道がないって感じです(笑)」

かっぴーさん:「真面目な話をすると、学生の頃に広告をやっていけるかなぁ……? と思っていたとき、当時先生だったCMディレクターの中島信也さんに『俺、普通すぎるんですよねぇ~』と相談したら『自分がやりたいことより、人から頼まれたことをやった方がいい』って言われたんですよね」

市原さん:「たしかに……! 本当にそうですね」

かっぴーさん:「今まさに僕と菊池くんは、『これをやってよ』と言われたことが仕事になっている」

市原さん:「それって楽なんですか?」

かっぴーさん:「なんだろうなあ……(ニーズがあることは)お金になる(笑)」

(一同笑い)

長谷川さん:「市原さんは、頼まれることが多いんですか?」

市原さん:「作品をつくるときは基本的に自分発です。でも、作品がきっかけで私を知ってくださった方からお仕事を依頼して頂いてます」

長谷川さん:「なるほど。僕もなんとなくコピーライターで独立しようかなと。先輩コピーライターの方たちがみんな成功すると独立するイメージがあったので、いつ独立しようかな? というのはずっと考えてたな」

かっぴーさん:「なんとなく、広告業界はそうですよね。独立しなきゃダメみたいな風潮がある」