世間では「ゆとり世代」「さとり世代」と称され、消費意欲があまりないと語られてきた最近の若者。一方、そのなかには「パリピ」と呼ばれ、近年ハロウィン、ラン系イベント(カラーラン、エレクトリックラン等)、自撮り棒、リムジン女子会……など、数々の流行に火をつけてきた人たちがいる。では「パリピ」とは何者なのか、どのように経済に影響をもたらしてきたのか。『パリピ経済 パーティーピープルが市場を動かす』を出版した博報堂ブランドデザイン 若者研究所リーダーの原田曜平さんに聞いた。

原田曜平
1977(昭和52)年東京生まれ。慶応義塾大学卒業。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。著書に『ヤンキー経済』『さとり世代』ほか。日本テレビ「ZIP!」、TBS「情報7daysニュースキャスター」レギュラー。

「パリピ」とは?

「パリピ」とは「パーティーピープル(party people)」の略。「パーティーピープル」→「パーリーピーポー」→「パリピ」と派生した言葉だ。「その名の通り、パーティーやクラブイベントに代表されるような、にぎやかでキラキラした集まりに参加して大騒ぎするのが大好きな若者たちのことを指します」と原田さんは同書で説明している。

――「パリピ」という言葉自体が生まれたのはいつ頃からなのでしょうか

パーティーピープルは随分昔から使われていた言葉です。現在のような文脈で使われるようになったのは、2014年8月25日にテレビ番組『月曜から夜ふかし』(日本テレビ)で、ラッパーのイルマニアさんを「パリピ」として紹介した放送がきっかけでした。番組が放送される前から、既に若い子たちは「パリピ」という言葉を使っていましたが、大人にまで認知されるようになったという意味では影響が大きかったと思いますね。

――「パリピ」が何か流行らせ始めたのは?

ハロウィンを例にすると、若者の間では、2005年~2006年頃には認識されていたかと思います。メディアに取り上げられ一般的に認知されるようになってからは、少なくとも3年経ちます。

若者のヒエラルキーって?

――「パリピ」を含め若者とは何歳くらいなのでしょうか

一概には言えませんが、大体は現在の大学生から20代半ば程度の人であると思います。

――「ゆとり世代」や「さとり世代」と言われている世代と一致するんですか

そう思います。

■同書では、トレンドを追う若者のヒエラルキーが4つに分類されており、下記のとおり紹介されている。

「フィクサー」…イノベーター。とにかく新しいものに真っ先に興味を持ち、最初に買う人。例: 帰国子女(主にアメリカ)、クリエイター系、内部進学者・附属生、富裕層の子弟など。
「パリピ」…アーリーアダプター。積極的な情報収集を経て、早い段階で購入を決意する人。例: 読モ、ダンサー、DJなど。
「サーピー」(サークルピープルの略。サークルに所属する平均的な学生)…アーリーマジョリティ。平均的な人々よりは早く新しいものを取り入れる人。
「パンピー」(一般ピープルの略)…レイトマジョリティ。新しいものに対して懐疑的で慎重派の人。

『パリピ経済 パーティーピープルが市場を動かす』(原田曜平 著/新潮社/740円+税)

――本のなかで、若者のヒエラルキーが「フィクサー」「パリピ」「サーピー」「パンピー」として4つに分類されていました。流行がつくられる流れは、「フィクサー」に影響を受けた「パリピ」が発信して、「サーピー」「パンピー」が後に続く、と

そうですね。トレンディーでクールなものであれば、比較的この流れで流行するものが増えているとは思います。

――若者は世間から「ゆとり世代」「さとり世代」と言われ、あまり消費しない世代と言われてきた印象にあります。そんな世代でも「パリピ」が他の若者たちを動かすのでしょうか

広い意味で言うと"動かす"ですが、どちらかというと"火をつける"という感じじゃないですかね。若者のなかでボリュームゾーンは「サーピー」「パンピー」の人たちなので、彼らが受け入れないと火が消えてしまうことも大いにあるとは思います。だからこそ、「パリピ」はあくまでも流行の"火付け役"なんじゃないかなと。