ガールズバンドをテーマとしたメディアミックス・プロジェクト『BanG Dream! (バンドリ)』のファーストライブ「BanG Dream! First☆LIVE Sprin'PARTY 2016!」が2016年4月24日、東京・品川ステラボールにて開催された。

『BanG Dream!』は、アニメーションミュージックビデオ・コミック・楽曲リリースなどのメディアミックスを通して、女子高生ガールズバンド「Poppin' Party(ポッピンパーティー)」の物語を描いていくプロジェクト。大きな特徴は、戸山香澄役の愛美、花園たえ役の大塚紗英、牛込りみ役の西本りみ、山吹沙綾役の大橋彩香、市ヶ谷有咲役の伊藤彩沙の5人の声優自身が声優ガールズバンドユニット「Poppin' Party」を結成し、ライブでは彼女たち自身が楽器を演奏してのライブを見せる。楽曲プロデュースを上松範康氏(Elements Garden)が手がけているのも大きなポイントだ。

これまでにユニット「Poppin' Party」は幾度かのワンマンライブを行ってきたが、今回のライブは「BanG Dream! First☆LIVE」と銘打った。その意味はすぐにわかったのだが、ライブ本編中、彼女たちは基本、常にキャラクターとして語り、歌い続けるのだ。ステージで繰り広げられるのは、彼女たちが日常風景の中で歌っている姿や、作中の「Poppin' Party」が初めて出演するライブイベントのステージの一コマを切り取って再現したもの。ライブのオープニングや転換中は、キャラクターたちがいつか大きなライブステージに立つ夢を語り合ったり、ライブに向けてカラオケで練習したりする姿がムービーや、紗幕に投影された映像への生アテレコで描かれる。

たとえばライブの合間に大塚が「私は中学の時から路上ライブをやってきました。でも仲間と奏でる音楽って素敵なんだなって思いました」なんて言葉を客席に投げかけるが、これはあくまでも役柄の「花園たえ」としての台詞。大塚自身はその言葉に恥じないだけの練習をわずか1年4カ月の間に重ねてきたという。面白いのは声優として役柄を演じるだけではなく、演者の個性も取り込んだオーバーラップの仕方をしていること。声優、アーティストとして人気の大橋彩香だが、実は彼女は学生時代からドラムのレッスンを受け、ドラムの大会にも出たことがある経歴の持ち主。そんな彼女のロック少女としての表情がステージからちらっと覗く感じがとても良い。「Poppin' Party」センターの「戸山香澄」はマイペースで自然と周りを巻きこむような元気な少女だが、ステージで歌うと不思議な力や存在感を感じさせる少女。そのキャラクター性はステージ上の愛美自身が放つ光と不可分なものだろう。アニメの映像のキャラクターと演者をオーバーラップさせ、キャラクターと共に演者が成長していく。そのコンセプトを「声優自身によるガールズバンド」に落とし込んだのが本作の発明だろう。

1stシングルを2月に発売したばかりの彼女たちには持ち歌も少ないので、前半戦にはソロのアニメソングカバーコーナーがセットリストに入った。演目は愛美の「GLAMOROUS SKY」(映画『NANA-ナナ-』)、西本の「God knows…」(『涼宮ハルヒの憂鬱』)、大塚の「空色デイズ」(『天元突破グレンラガン』)、伊藤の「DISCOTHEQUE」(『ロザリオとバンパイアCAPU2』)、大橋の「一番の宝物~Yui final ver.~」(『Angel Beats!』)の5曲。だが、キャラクターを演じながら、自分たちも演奏しながらのカバーは、通常イメージするライブのカバーコーナーの域は大きく超えていた。特に圧巻だった曲が幾つかあり、まずは西本の「God knows…」。『涼宮ハルヒ』で同曲が披露された学祭ライブは、アニメにおけるバンド演奏描写では伝説となっているほどのシーンで、この曲のギターとベースを声優である西本と大塚が弾きこなしたのには恐れいった。大橋の「一番の宝物」は、『Angel Beats!』で作中のガールズバンド「Girls Dead Monster」が歌ったナンバー。切なくも力強いバラードを大橋が圧巻の歌唱力で歌い上げ、愛美がアコースティックギターでサポートするステージは、本当にこれだけでお金が取れるものだ。伊藤の「DISCOTHEQUE」はアニソンというより水樹奈々の定番ライブナンバーのひとつであり、正直伊藤がこの曲をハイトーンのキャラ声でさらっと歌いこなすほどのポテンシャルの持ち主だとは、驚かされた。

パフォーマンスの生感を非常に感じたのは一番最後にドラムとして加わった大橋で、「Yes! BanG_Dream!」のようなかなり練習をやりこんだ楽曲では満開の笑顔で、本当に楽しそうに演奏しているのだが、「ティアドロップス」は譜面をきりっと真剣な表情で追いながら演奏を見せる。真剣モードの時はあまり照明を当てず演奏に徹している感じなのだが、その垣間見えるガチさ、真剣さに生物のライブならではの良さを感じる。何より、5人のステージから感じる空気感には、どこか学生時代の文化祭のようなものがある。もちろん、熱唱する愛美の奥で笑顔の大橋が楽しげにドラムを叩いてるような、こんな華のある学園祭バンドはそうは存在しないのだろうが。

新曲「走り始めたばかりのキミに」を演奏し、二度目の「Yes! BanG_Dream!」はちょうど10曲目。通常のライブの感覚では決して多いとはいえないが、声優たちが生演奏で見せるステージとして見て、彼女たちの努力を疑う人はいないだろう。物語とステージ、キャラクターとの演者とのシンクロの見せ方として、新しい可能性を感じるステージだった。

アンコールの5人はライブメインビジュアル衣装に着替えて登場。このコーナーだけは、キャラクターを演じる5人自身として登場。MCでは西本が「チャレンジしてきた想いが少しでも伝わってればと思います」と涙を見せる場面もあった。良かったのは5人がこのステージからとても手応えと楽しさを感じたことが伝わってきたことで、曲を増やしてもっとライブをやりたいとの声も聞かれた。愛美は「今回がファーストライブ、何度も回数を重ねて、もっと大きな会場で、そんな夢を叶えられるバンドだと自負しています!」と誇らしげに語っていた。ラストナンバーは「STAR BEAT!~ホシノコドウ~」。この曲は、8月3日に「Poppin' Party」のセカンドシングルとして発売されることが発表された。Blu-ray付生産限定盤には、アニメーションミュージックビデオがフルバージョンで収録されるとのことだ。

ひょっとしたらこれは新しい伝説の始まりになるかもしれない、そんな予兆を確かに感じるファーストライブだった。

BanG Dream! First☆LIVE Sprin'PARTY 2016! - セットリスト

M-01 Yes! BanG_Dream!
M-02 GLAMOROUS SKY / 愛美
M-03 God knows… / 西本りみ
M-04 空色デイズ / 大塚紗英
M-05 DISCOTHEQUE / 伊藤彩沙
M-06 一番の宝物~Yui final ver.~ / 大橋彩香
M-07 ティアドロップス
M-08 ぽっぴんしゃっふる
M-09 走り始めたばかりのキミに
M-10 Yes! BanG_Dream!
EN-01 STAR BEAT!~ホシノコドウ~

(C)バンドリ!プロジェクト