米FRB(連邦準備制度理事会)と日銀は4月25日の週に、それぞれFOMC(連邦公開市場委員会)と金融政策決定会合を開催して、当面の金融政策を決定する。

米FRBは「ゆっくりとした利上げを続ける」意向を表明か

4月26~27日に開催されるFOMCでは、金融政策の「現状維持」が決定されるとの見方が有力だ。4月18日時点で、FFレート(政策金利)の先物に織り込まれた利上げ確率は、4月FOMCではゼロ%だ。6月までで14%、年内でも49%だ。つまり、わずかな差ながら、「年内に利上げなし」がメインシナリオとなっている。

ただ、ボストン連銀のローズグレン総裁は18日の講演で、「金融市場は悲観的すぎる」と発言しており、もっと速いペースでの利上げを想定しているようだ。FOMCのメンバーのなかでも、ローズグレン総裁は利上げに慎重な「ハト派」の一人と目されており、その総裁が上記の発言をしたことに意味があるかもしれない。

ただ、足元ではFRBが利上げに踏み切るのは難しいように思われる。アトランタ連銀の短期予測モデルGDPNowによれば、今年1-3月期の実質GDPは前期比年率0.3%増と予想されている(4月19日時点)。弱いGDPの発表が確実視されるなかで、その前日に利上げに踏み切るのは、さすがにタイミングが悪かろう。「ゆっくりとした利上げを続ける」との意向を重ねて表明するのが精々(せいぜい)ではないか。

日銀は「躊躇なく行動する」可能性も

4月27-28日に開催される日銀の金融政策決定会合は、もっと読みづらい。2013年春の黒田日銀誕生以降の「量的・質的金融緩和」、最近では1月に始まった「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の効果に対する疑念が強まっている。そうしたなか、黒田総裁は13日のNYでの講演でも、「マイナス金利を導入していなければ、日本の金融市場はより悪い状況になっていただろう」と日銀の政策対応に自信を示した。そのうえで、必要であれば躊躇なく行動するとの意向を改めて表明した。

マイナス金利導入以降、ドル安円高が進行した。日銀短観3月調査によれば、大企業・製造業が想定する2016年度の為替レートは117円台半ばだ。現行水準はそれより10円近く円高に振れており、企業収益や景気への悪影響が懸念される。

15日に閉幕したワシントンG20(財務相・中央銀行総裁会議)の共同声明では、「金融政策のみでは、均衡ある成長につながらない」「競争力のために為替レートを目標とはしない」と改めて釘を刺されている。

それでも、金融政策決定会合後に公表される「経済・物価情勢に関する展望(展望レポート)」で、景気や物価見通しは下方修正されるかもしれない。熊本地震の影響は未知数ながら、すでに多くの工場が操業を停止するなど、決して無視できるものではなさそうだ。そうであれば、日銀は「躊躇なく行動する」かもしれない。

FOMCの結果判明は日本時間28日午前3時ごろ、金融政策決定会合の結果判明は同日の正午過ぎだ。

執筆者プロフィール : 西田 明弘(にしだ あきひろ)

マネースクウェア・ジャパン 市場調査部 チーフエコノミスト。1984年、日興リサーチセンターに入社。米ブルッキングス研究所客員研究員などを経て、三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社。チーフエコノミスト、シニア債券ストラテジストとして高い評価を得る。2012年9月、マネースクウェア・ジャパン(M2J)入社。市場調査部チーフアナリストに就任。現在、M2JのWEBサイトで「市場調査部レポート」、「市場調査部エクスプレス」、「今月の特集」など多数のレポートを配信する他、TV・雑誌など様々なメディアに出演し、活躍中。

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