左から設楽統、小池栄子、松本人志

許可取りのジレンマ

丸山:取材の許可を取ってしまうと、「そこまでしかできない」という制限が出てきます。僕の行くところでは、行政に許可を取ってしまうと、ここまでしかダメとかそういうの結構あるんです。許可を取らずにやる時は、僕の責任の上でやるので好き勝手にできるんですけど。佐藤さんも同じじゃないですか?

佐藤:そうですね。僕は法を犯してまではやりませんけど(笑)。

丸山:僕は法を犯した人に接したりしなきゃいけないから(笑)。

――ゴンザレスさんは現地でどうやって取材をはじめるんですか。

丸山:フェイスブックでその街に住んでいる人を見つけて手当たり次第に連絡してみるとか、現地のレストランから数珠つなぎで聞いていったり。途中で途絶えてしまうと、またそこに戻って別の人を紹介してもらったりします。

――スラムの偉い人もそうやって探す?

丸山:そうですね。偉い人を探すのは比較的、楽です。「この辺でいちばん偉い人誰?」って聞いて教えてもらう(笑)。こういう言い方すると誤解があるかもしれませんが、途上国では悪い人と偉い人がほぼほぼイコール。「あなたの話ではなくて部下の話で何かありませんか?」とか「昔のビジネスパートナーの話で」みたいな聞き方をして、「あなたを取材しに来たわけじゃない」と分かってもらえるとだいたい通してくれたりします。

松本人志、設楽統、小池栄子との会話

――スタジオのお三方とはどんな感じで会話するんですか? それぞれ優しいとか、やりづらいとかあるんですか?

丸山:やりづらさはないです。松本さんはじめ、みなさんが興味の赴くままちゃんと聞いてくれるので、それを1つ1つ返していると時間が来てしまうという感じで。

佐藤:僕もそうですね。話しづらいとかはないんですけど、むしろこんなに話しやすくていいのかと不安になるくらい。でも、松本さんと目が合うとなぜかそらしてしまう(笑)。なぜですかね、なんか変な感じがします。求められてる感がするというか(笑)。そういう点でいうと、設楽さんが一番話しやすいんですかね。

放送していない危険地帯

――世界各国を旅して、まだ表に出してないものもあるんじゃないですか? せっかくですから、そういうの聞きたいです。

丸山:去年10月にシリア難民を取材しました。みなさんニュースで見たことがあると思いますが、シリアで内戦があって難民がものすごく増えているんです。難民がヨーロッパを目指しているルートを一緒に旅をする企画を考えまして、ギリシャからドイツまで陸路を旅しました。スタート地点から一緒に旅をしようと思ったんですが、難民の人たちを滞在させたくない国は難民をバスに乗せて移動させるんですね。そのバスに乗ろうと思ったんですけどダメでした。

――その旅で危険な出来事は?

丸山:海外配信のニュースなどを見て、そういうことがあるのかなと思って行ったんですが、意外と整然としているというか。難民でもお金がかかるので、お金持ちの人しかいないんですよね。だから、僕なんかよりもよっぽど良い身なりをしていて、携帯も持っています。移動ルートを確認するためにもスマホが必要なのでみんなWi-Fiスポットに集まっています。Wi-Fiスポットに行けば、難民に会えますよ(笑)。

――そこでの食事は?

丸山:難民のニュース映像を見るとレーションのよなものを食べていたので、どんなものなのか気になっていました。実際に見せてもらったら残している人が多かったんですよね。「食わしてもらえないですか」とお願いしてもらったんですが、これが本当にマズくて。パスタと野菜を大量にゆでて、オイルを絡めているだけで塩気も味も何にもないんです。麺も伸び切っているし、冷めているし、本当にマズかったです。ボランティアの方々が炊き出しで振る舞っているんですけどね。

――お腹壊さないんですか?

丸山:これは大丈夫でしたけど、お腹はよく壊します。ケニアの時は牛の変なスープを飲んだんですけど、あれはその日の夜に脂汗と腹痛で目が覚めました。毎回スラムで何かを食べると、1日、2日はお腹がすごく痛いです。でも、慣れますけどね。腹痛は慣れだと思います。

アヘンを吸い過ぎて動けなくなった男

丸山:ギリシャのアテネでアヘンを吸っている難民に会いました。難民の中には内戦で追われてきた人たち意外に、お金に困って豊かな国を目指す経済難民と呼ばれる人々がいます。彼はインドとパキスタンの間にあるカシミールから来たと言っていました。お金はないけど、アヘンはいっぱい持っていて、それを途中で売って旅費にしようと思っていたそうなんですが、アテネに着いたところでちょっと疲れたので一服したら、ハマっちゃって(笑)。次に友だちが調達してくるまでそこで待つしかないらしいです。難民がいると聞いて行ったその公園には、ジャンキーしかいなくて、カメラを向けたらめっちゃ怒られたんですけど、彼だけは撮らせてくれました。

――「お前もやれよ」みたいに誘われないんですか?

丸山:お金を払えばくれると思うんですけど、僕は「ドラッグ好き」なわけではないので。ドラッグをやっている人には興味ありますけど。

――お酒は好きなんですか?

丸山:お酒は大好きです。お酒、タバコ、嗜好品は何でも一通り試すようにしています。ただ、ドラッグはちょっと……。

――いちばん好きな食べものは?

丸山:食べものは……肉とか(笑)。家畜の肉とかではなくて、ジビエのように野生動物の肉が好きです。その国でしか食べられない肉とかあれば、やっぱりテンション上がります。

宇宙ロケット発射の瞬間を撮影

佐藤:カザフスタンのバイコヌール宇宙基地でロケットの発射を撮影しました。そこはロシアが年間で多額のお金を払って借りている遊牧民の土地です。街中には宇宙ロケットをたたえる壁画やレーニン像があって、70年代のロシアから時間がストップしているような雰囲気でした。宇宙ロケットのモニュメントが団地の中にあったり、大陸弾道ミサイルが公園にあったり、その周りをベビーカーを引いた人が歩いていたりします。

なぜ僕がここに行きたかったというと、本の表紙にしたかったというのが第一でした。今、世界でロケットを打ち上げている場所は、たくさんあるようで実はそんなになくて。アメリカのケネディ宇宙センター、日本の種子島、カザフスタンのバイコヌール。中国にもありますが、大きいのはその3つ。ケネディもそうですけど、種子島で撮影できるビューポイントは打ち上げ場所から3キロ離れているんです。ロシアはその辺りも雑で、1.5キロぐらい先で打ち上げを見ることができます。

とにかく爆風がすごくて、何かあった時のためにシェルターも作られていました。1.5キロ先にある50メートルのソユーズロケットが、光りながらものすごいスピードで空に昇っていく光景は他にない。飛行機とも違うし、鳥とも違う。ネットでは「ロケットの撮影の仕方」などは当然解説されていなくて。鳥やスポーツカー、F1、野球……それぞれ撮影の仕方のメソッドが確立していますが、宇宙ロケットの撮影の仕方はないので、一発勝負。グーグルマップで調べたら、東京タワーとスカイツリーの距離が縮尺で合うみたいだったので、東京タワーに一人で上ってスカイツリーを撮影していました(笑)。結果的には無事に撮ることができました。