日本デザイン振興会はこのほど、2015年度グッドデザイン賞の受賞結果を発表した。鉄道関連では、箱根登山鉄道3000形「アレグラ号」が「グッドデザイン・ベスト100」に選ばれた。「グッドデザイン・ベスト100」受賞対象は、今後発表されるグッドデザイン金賞など特別賞の候補となる。

「グッドデザイン・ベスト100」に選ばれた箱根登山鉄道3000形「アレグラ号」

箱根登山鉄道3000形「アレグラ号」は、繁忙期の輸送力増強を目的に導入された同社25年ぶりの新型車両。両端に運転台を設けた単車構造で、単車運転の他に3000形同士の2両編成、2000形2両編成との連結による3両編成での運転も可能だ。2014年11月に運行開始した。

同車両は「伝統と現代性をあわせ持ち、箱根の風景に溶け込むデザイン」をコンセプトに、車両前面に大型ガラス、側面には床面から天井近くまで大きく広がる展望窓を採用。この展望窓には、優先席、車椅子スペース、立ち席を配置し、すべての乗客が眺望を楽しめるように配慮した。車両の両端にある前面ガラス窓を大きくするため、運転室と客室の仕切りを最大限透明にし、運転台を低く抑える工夫も施した。このため、運転席に装備される機器類の一部を天井上に収納しており、外観デザインのポイントともなっている。

また、座席下に荷物置きスペースを確保することで荷棚を取り去り、握り棒や照明なども極力目立たない表現でデザインすることにより、座席からも雄大な景色を楽しめるように設計されている。外観デザインは登山鉄道としての力強さと親しみを表現するため、きっぱりとした面構成でまとめ、箱根の四季にふさわしい「バーミリオンはこね」と名づけた赤い色彩を施すことで、形態と色彩により箱根の自然を際立たせるように意図したという。同社初となるVVVFインバータ制御装置やLED照明の採用による使用電力量削減にも努めた。

これらの取組みについて担当審査委員は、「フルハイトの展望窓を配置することで箱根の自然を身近に感じられる展望ゾーンを設けるとともに、大型解放窓を設置したことで自然の風が感じられるなど、豊かな移動体験が可能となる。箱根の移動風景を生かしたモビリティデザインを高く評価したい」と評価した。

鉄道関連ではその他、西日本鉄道の西鉄柳川駅とソラリアプラザ、ひたちなか海浜鉄道の湊線駅名標、函館市電の路面電車停留場、JR東日本の仙石東北ライン、JR西日本の「JRシティネットワーク広島」ブランディングへの取組みなどがグッドデザイン賞に選ばれた。