誤ったコンタクト使用には危険が潜む(写真と本文は関係ありません)

多くの人が使用しているコンタクトレンズ。ソフト・ハードタイプはもちろん、「1日使い捨てレンズ」や「2週間交換タイプ」なども選べ、ユーザーのニーズに応えてさまざまな製品が販売されている。

日本眼科学会は、国内のコンタクトレンズユーザーは、2008年の時点で1,500~1,800万人にも及んだと推測している。それからさらに数年たっていることを鑑みると、コンタクトユーザーはさらに増えていると予想できる。

だが、目というデリケートな部分に装用するため、コンタクトレンズは使い方を誤ると目の病気につながり、最悪の場合は失明の可能性も出てくる。今回はあまきクリニック院長の味木幸医師に、コンタクトレンズによる目の疾患やトラブル例について伺ったので紹介しよう。

失明症例数が多いワンデータイプ

コンタクトユーザーの中には、「ワンデータイプの使い捨てコンタクトが最も安全だ」と考えている人も少なくないだろう。だが、実はワンデータイプは目のトラブルを招きやすいと味木医師は指摘する。

「驚く方も多いかもしれませんが、コンタクトレンズによって失明している人の症例数が多いのは、世界的にみるとワンデーコンタクトなのです。なぜかというと、使用する人が多いというのもありますが、正しく使っていないからです。『もったいないから』と言ってずっと入れっぱなしにしているとか、『薬液つけて1週間使っていました』とか、決められた通りの使い方をしていない人が多いです」。

コンタクトレンズは、その機能に障害が生じた場合、生命や健康に重大な影響を与える危険があることから、適正な管理が必要な「高度管理医療機器」に分類される。心臓用のペースメーカーや、人工透析に用いられる機器も同じ高度管理医療機器に分類されていることからもわかるように、大いなるリスクを含んでいるのだ。

だが、比較的手軽に購入できるためか、ぞんざいな扱い方をする人がいることに、味木医師は懸念を抱く。

「コンタクトには必ず添付文書が入っており、『このような使い方はダメ』というのが書いてあります。ただ、箱を開けて文書を見ずにそのまま捨てる人も多いでしょうから、『一度必ず見るように』と強く推奨したいです」。

無理な使い方が招く感染症

コンタクトは普通に使用すれば問題ないが、装用感が合っていなかったり無理な使い方をしたりすることで、目の疾病や感染症が引き起こされる。下記に代表例をまとめたので参考にしてほしい。

角膜びらん

痛みを伴い、目が充血して涙が出る。角膜を保護する「上皮」がはがれ落ちて、その内部にある「実質」がむき出しになっている状態。コンタクトレンズ装用による酸素不足などが原因とされる。点眼や眼軟膏(なんこう)を塗布するなどの治療によって数日で回復する場合が多いが、再発性角膜上皮剥離へ移行する可能性もある。

角膜腫瘍

視力低下や痛み、充血、涙といった症状が出る。上皮がはがれ落ちて、内部の実質が傷ついている状態。放置しておくと、失明に至るケースもある。細菌やウイルスなど、コンタクト装用に伴う感染が主な原因。感染が原因の場合、原因となる細菌などに対する薬剤を点眼したり内服したりすることで、治療を行う。

角膜新生血管

充血や異物感といった症状を伴う。コンタクト装用に伴う慢性的な酸素不足が引き金となり、本来は血管がない角膜に血管が新生・侵入することが原因で起こる。コンタクト使用を控えることで症状が治まる。

巨大乳頭結膜炎

異物感や充血、粘度の高い白い目やになどの症状が出るほか、上まぶたの裏側に「乳頭」と呼ばれる小さなぶつぶつができる。コンタクトレンズに付着した汚れなどが原因となる。コンタクト使用をしばらく控えたうえで、抗アレルギー薬の点眼をすることで治療を行う。

そのほかにも、「細菌性角膜感染症」や「アメーバ角膜炎」などの感染症もある。例えば、水道水にはかびやアメーバが潜んでいる。水道水でコンタクトを洗浄してそのまま使用するだけでも、十分に危険だということがわかるだろう。さらに、コンタクトケースも見落としがちだが、感染症のリスクをはらんでいると味木医師は話す。

「目の感染症になった人を調べると、汚れたケースを持っている人が多いですね。ケースから取り出した菌を培養したら、感染症の菌と一緒だったということもありました。ケースを3カ月ごとに替えているとまず大丈夫です。また、2つ保持して、片方を使用している間にもう1個を洗ってしっかりと乾かしてから使うという方法もお勧めです」。

写真中央に見える白い斑点と、その上方にある小さな斑点が角膜腫瘍だ(あまきクリニック提供)

角膜内皮細胞の減少にも注意

目の疾病も怖いが、コンタクト使用で気をつけないといけないもう一つの点は、「角膜内皮細胞」が減ることだ。私たちが何かを見るうえで欠かせない角膜は、3つの層で守られている。角膜をバリアーのように保護する一番外側の上皮、上皮の1層下でレンズの役目を果たしている実質、そしてさらにその内部にある「内皮」からなる。

「上皮は傷ついても1週間ほどで再生しますが、実質は透明で再生しません。角膜潰瘍になると実質までダメージを負い傷痕が残ってしまいます。実質の中央に傷痕が残ると、『社会的失明』(目の中心に視力障害をきたすが、光を全く感じないわけではない)につながってきます」。

そして内皮だ。実質側の水分調整をする役割を果たす内皮は、蜂の巣のような六角形の内皮細胞がびっしりと集まって形成されている。生後間もない状態だと、内皮1平方ミリメートル当たりに3,500~4,000個ほどの内皮細胞がびっしりと詰まっている。ただ、さまざまな要因でこの細胞は減っていく。

「かつての酸素非透過性のコンタクトはこの内皮細胞の脱落がひどかったのですが、最近販売されているものは正しく使えば急激に減ることはありません。ですが目のけがや手術、加齢、酸素不足で細胞は脱落していきます。脱落していくと細胞の数が減り、形もきれいな六角形が大小不同になってきます」。

少々の角膜内皮の欠損であれば、周りからきれいに細胞が埋めてくれる。だが、大きな欠損があった場合、細胞は不整な形のままそこを埋めようとし、障害が残るケースが出てくる。角膜内皮障害に対する外科的治療としては角膜移植しかないが、角膜移植はドナー待ちというのが現状。コンタクトの誤った使い方で、角膜内皮細胞が減ることがないように努めよう。

2つの点に注意してコンタクトを使おう

便利な反面、正しく使用しないと自分自身にダメージが跳ね返ってくるコンタクトレンズ。それだけに、味木医師は2つの点に注意してコンタクトと付き合ってほしいと話す。

「まずは、『メガネを必ず持っていることを前提に、コンタクトを使ってほしい』ということです。コンタクトがないと生活できない人がいるのも事実ですが、よくない使い方をして見えなくなるのは患者さん自身の目なのですから。もうひとつは、『QOL(生活の質)を高める使い方をしてくだい』ということです。誤った使い方をして診察に来られた方は、クリニックに来た時間と診察にかかった費用、そしてもしも使用中止になった場合は使用中止という3つのデメリットが発生し、QOLも低下します。毎日安全に使えば、この無駄な3つがなくなるので、きちんと正しくコンタクトを使用するようにしましょう」。

写真と本文は関係ありません

記事監修: 味木幸(あまき さち)

あまきクリニック院長、慶緑会理事長。広島ノートルダム清心高校在学中に米国へ1年の留学。米国高校卒業後に母校に戻り、母校も卒業。現役で慶應義塾大学医学部入学。同大学卒業後、同大学眼科学教室医局入局。2年間の同大学病院研修の後、国家公務員共済組合連合会 立川病院、亀田総合病院、川崎市立川崎病院・眼科勤務。博士(医学)・眼科専門医取得。医師として痩身や美肌作り、メイクアップまでを医療としてアプローチする。著書も多数あり。