東京・浅草と言えば、雷門から浅草寺へ続く「浅草仲見世商店街」のあのにぎわいをイメージする人も多いだろう。仲見世の歴史は江戸時代より昔の元禄・享保の頃と言われている。長さ約250mの通りには、東側に54店、西側に35店、合計89店の店舗があり、海外からの観光客も含めて人が途絶えることがない。

平日・休日問わず、浅草はいつもにぎやかだ。外国人観光客の多さにもびっくりさせられる

しかし、浅草には仲見世のほか、「伝法院通り」や「お祭り商店街 西参道」など、浅草寺を中心にして情緒ある商店街が広がっていることをご存知だろうか。今回はそんな浅草寺周辺の通りから、ちょっとした食べ歩きにぴったりな300円以下グルメを紹介しよう。

人形焼も1個からパクリ

浅草で食べ歩きをする前に注意しておきたいことがある。そう、浅草では食べ歩きは禁止なのだ。「え!? 」と思った人もいるだろうが、通りには人が多く、ぶつかったり衣類を汚してしまったりというトラブルを防ぐためである。各店には椅子やカウンターが設けられているので、飲食はそうした場を活用するようにしよう。

浅草仲見世商店街には89店がずらりと並ぶ

マナーを心得たところでグルメ巡りスタートだ。まずは浅草仲見世商店街から。仲見世に足を踏み入れたならば、ちょっと「浅草きびだんご あづま」で1杯を。ここではビールではなく、夏季限定のほんのり甘い「冷やし抹茶」(税込110円)だ。あづまの看板メニューは、江戸時代に仲見世に実在した門前のきびだんごを再現した「きびだんご」(5本税込330円)。ちょっと300円に上乗せになってしまうが、抹茶をいただくならあわせて楽しみたい。

夏季限定のほんのり甘い「冷やし抹茶」(税込110円)

下町娘風の店員も素敵

そして、浅草土産の鉄板と言えば人形焼だろう。通りからは職人が一つひとつ手作業で焼く姿も見ることができ、長年使われてきたのであろう器具の色合いにも歴史を感じる。ハトのマークの「木村家人形焼本舗」も、実演販売をしている店舗のひとつ。北海道十勝産特選小豆を使用して焼かれる人形焼は、鳩・五重塔・提灯・雷様と、浅草にゆかりの4種類で型取られているのもかわいらしい。

人形焼は複数入ってひとつ500円程度から販売しているところが多いのだが、「本家 梅林堂」では焼きたての人形焼を1個60円(税込)、2個100円(税込)で販売しているので、ちょっとだけ楽しみたい人にぴったりだ。なお、機械で個包装までされる人形焼の様子を通りから眺めるのも興味深い。

「木村家人形焼本舗」で職人技を見学。いま、まさにあんを入れているところ

どんどん作られる「本家 梅林堂」の人形焼(1個税込60円~)も見ていて楽しい

もし、仲見世で天ぷらのような丸いものを食べている人がいれば、おそらくそればあげまんじゅうだ。あげまんじゅうもいろいろな店が提供しているが、中でも「中富商店」の「あげまんじゅう」(1個税込80円)は色鮮やか。プレーン、梅、抹茶、ゴマの4種類あり、中にはしっとりとしたこしあんが詰まっている。

「中富商店」の「あげまんじゅう」(1個税込80円)は見た目も鮮やか

仲見世の裏にも名店あり

次は浅草仲見世商店街の裏道へ。"日本一きびだんご"と記されたのぼりを掲げた「吉備子屋 浅草店」は、昔話『桃太郎』を読んだ息子の「きびだんごが食べたい」という願いを叶えるために作ったのが始まりだとか。「きびだんご」は5本入って270円(税込)というお手軽さもうれしい。ビー玉サイズの団子が4つ連なった串にはきな粉がたっぷりかかっているので、きな粉が飛び散らないようにご注意を。ほかほか団子で心もおなかも幸せが満ちてくる1串だ。

「吉備子屋」のほかほか「きびだんご」(5本/税込270円)

その吉備子屋から浅草寺方面に行った先にある「梅園 浅草本店」は安政元年(1854年)創業で、永井荷風の小説の中にも登場する有名店。甘味処のほか、和菓子販売店も展開しており、「栗きんとんどら焼」(税込248円)や「抹茶あんみつ」(税込540円)などと、ついあれこれと目移りしてしまう。中でも、夏ならやっぱりボリューム満点の「最中アイス」(税込250円)を。小豆アイスは甘すぎないシャーベットタイプで、さっぱり食べたい時にオススメだ。

「梅園 浅草本店」の店先にはおいしそうな和菓子がずらりと並ぶ

「最中アイス」(税込250円)はちょっと大きめサイズ

また、今回の「300円以下グルメ」からはちょっと出てしまうが、同じ通りにある「浅草シルクプリン 雷門店」の「浅草シルクプリン」(税別352円)は、絹のような食感とビターなキャラメルが特長の一品。雷門や人力車のイラスト入りの瓶は愛らしく、お土産にも喜ばれそう。なお、同じ瓶デザインで、「マンゴープリン」「チーズプリン」「いちごプリン」(各税別352円)も取りそろえている。

お土産に「浅草シルクプリン 雷門店」の「浅草シルクプリン」(税別352円)を

肉にこだわったホットスナック

仲見世の中ほどで交差する伝法院通りにも、いろんなグルメスポットがある。まず、メンチカツ専門店「浅草メンチ」では、幻の豚と称される高座豚と牛肉をブレンドした「浅草メンチ」(税込200円)を。メンチカツは随時揚げられており、生パン粉仕立ての衣はサクサク。一口食べれば肉汁が口いっぱいに広がる。また、大きめにカットされたタマネギが甘さを引き出しており、ちょっとからしをつけると味がピシッとしまる。

「浅草メンチ」の「浅草メンチ」(税込200円)は甘い肉汁がたっぷり

その隣に店を構える「富福」では、熱々の「黒毛和牛カレーパン」(税込290円)が楽しめる。厳選された国産の黒毛和牛を用い、同社オリジナルのスパイスで8時間以上煮込んで作るカレーは、ピリッとした辛味ではなく肉の旨味が利いた甘口タイプ。丸くふくらんだパンは衣がパリッとしている。しっかりとカレーが入っているので、食べる際はこぼれ落ちないようにご注意を。

黒毛和牛にこだわった「富福」の「黒毛和牛カレーパン」(税込290円)

富福から一旦、仲見世を横切って、東に広がる伝法院通りに来たならば、甘納豆の「浅草 大沢屋」に立ち寄ろう。3日間かけて毎日作られる甘納豆は、そら豆や白花豆、黒豆、ひよこ豆と種類が豊富。また、豆によってきなこや砂糖など味付けも異なり、それぞれを店先で試食できるのがうれしいところ。気になった甘納豆を少しずつ楽しめるよう、「ちょこっとサイズ」(50g/150円)から展開されているので、ちょっとした手土産にもちょうどいい。

「浅草 大沢屋」には試食のほか、50gの「ちょこっとサイズ」(税込150円)もあり、それぞれをちょっとずつ楽しめる

魅力はその大きさだけじゃない!

最後は、浅草寺の西側に広がるお祭り商店街 西参道へ。この通りでは、昭和20年(1945)創業の「浅草花月堂 本店」で、ぜひ「ジャンボめろんぱん」(税込200円)を食べていただきたい。週末は1日2,000個以上売れることもあるようで、店先からも発酵中のメロンパンがぎっしり並んでいる様子をうかがうことができる。名に恥じることのない大きさはもちろん、中のもっちり感にもびっくりさせられる。持ち帰りにも対応しているが、できれば焼きたてのカリッとした皮を楽しんでいただければと思う。

「浅草花月堂 本店」の「ジャンボめろんぱん」(税込200円)

中はほかのメロンパンでは味わえないほどのもっちり感。店内には発酵中のメロンが並んでいる

今回は300円以下で楽しめるグルメを紹介してきたが、もちろんこれ以外にも様々なグルメが浅草にはひしめいている。「いつも仲見世しか通っていないな」という方、今度浅草に訪れる時は、縦横無尽に浅草を歩いて自分好みのお店を発見してみよう!

※記事中の価格・情報は2015年6月取材時のもの