GWをはさみ株価が2万円にタッチしてから、やや停滞気味でしたが、5月19日に再び2万円台に。こうした相場のときに、これまで株式投資をしていなかった人は「乗り遅れた」と、投資に躊躇するか、あるいは、慌てて投資をして高値掴みをしてしまいがち。現在のような相場で市場に参加するには、どんな観点で銘柄選びをすればいいのでしょうか。

株価がどうであれ、株式投資の基本ルールは不変

日経平均株価が2015年4月23日に2万133円に届き、実に15年ぶりに2万円台になりました。となると、もうこれから株式投資をしても旨みはない、と二の足を踏んでしまう人も少なくありません。しかし、株式投資で結果を出している人は、「休むも相場」という格言があるように、常に投資をし続けるのではなく、利益を確定させたり、相場が乱高下したりしたときなど、いったん資金を引き揚げて、様子を見るという行動をしています。しかし、常に投資のチャンスはあり、その機会をうかがっているだけで、決して市場から退場することはありません。

株式投資は、安値で買って高値で売る。この一言に尽きます。しかし、だれも安値は分からないし高値もわからないのです、たとえプロであっても。また、ある銘柄は高値圏と言われていても、すべての銘柄が同じように上昇トレンドを描いているわけでもありません。日経平均株価は文字通り、平均なのです。

日経平均株価は上場している銘柄のうち225銘柄が選ばれ、その加重平均を指数として発表しているものです。225銘柄のうちの数銘柄の株価変動によって、日経平均株価が大きく左右されることもありますし、日経平均株価が上昇しても、値下がりする銘柄もあるのです。

これから株式投資をするのであれば、まずは、こうした基本中の基本のことを知っておく必要があります。そのうえで、投資の基本ルールを抑えておきましょう。

たとえば、

  • 1銘柄に全力で投資しない。投資資金を小分けして複数銘柄に投資する

  • 異なる業種に分散投資する。海外に強い・国内に強いなど

  • 同じ業種のなかでも、上がる銘柄もあれば下がる銘柄もある

  • 欲をかかず、5%値上がりしたら売るなどの自分ルールを作る

  • 思惑から外れたら、思い切って損切りできるか自問自答する

特に最後の損切りは、投資に慣れた人でもなかなかできないことです。株を買うと決めたら、意外とハードルは低いもので、ネット取引ならなおさらで、「ポチッ」とするだけで株を買うことができます。買うときはだれもがソンするとは思わず、必ず儲かるものだと思うからです。でも、ソンをしたときに見切りをつけることは、自分のミスを認めることになるので、かなりの勇気が必要になるのです。

投資は、儲かることもあればソンをすることもあります。ソンをしたときに勇気を持って、その銘柄と決別できるかが重要なのです。

最近、人気の株主還元銘柄とは?

このところ株価が上昇するキーワードのひとつに「自社株買い」があります。これは企業が株式市場から直接、自社の株を買い戻すことを指し、株主への利益還元の一種と言えます。自社株を買い戻すことによって、1株当たりの純利益=資産価値を高めることになり、ひいては株価上昇のきっかけになるからです。これまでも定期的に自社株買いをしている銘柄はありますが、最近の話題は、これまで株主還元に積極的ではなかった企業が、高収益還元の一貫として自社株買いをしていることです。

株主への利益還元といえば、株主優待や配当を指していましたが、最近は自社株買いが注目されているのです。ただし、継続的に行われるのか、ほかの利益還元のレベルはどうなのか、といった観点も合わせて持っておきたいところです。

こうした株主への利益還元重視の銘柄を選ぶというのは、相場変動が大きなときには、ひとつの選択基準になります。もちろん、株価が上がり利益を得られる銘柄が投資家にとっては、いい銘柄ですが、株価が下がった時に、心理的な不安を軽減してくれるのが、株主優待や配当というわけです。

株主優待や配当で銘柄スクリーニングは、いろいろなサイトでできますので、最初の一歩としては、選びやすい方法でしょう。株主優待では自分が使えるもの、使えるお店があるものといった観点で選ぶといいでしょう。ただし、株主優待目当てが投資の目的になるのは本末転倒。株価が思惑と外れたら、手放す勇気を忘れないようにしましょう。

配当は、東証1部上場銘柄の平均配当利回り(年間配当/株価)は1.5%程度なので、少なくともそれ以上の銘柄を選ぶようにしたいものです。高配当銘柄と言われているものは、3.0~4.0%の配当利回りの銘柄です。ただし、株価が下がれば、結果的に配当利回りは上がるので、数字だけにとらわれず、過去の配当水準や、来期の企業利益などの指標をみることは最低限、必要です。

複数単元保有が失敗しないコツ

投資は売却できて一人前、とはよく言われます。下がったときはもちろんのこと、株価が上昇しているときも、心理的に売りにくいのです。まだ上がるんじゃないか、もう少し様子を見てから、と思っているうちに、株価が反転して下落してしまった、というのは、よくあることです。

株価上昇時でも、売りの心理的ハードルを下げる工夫に、複数単元を保有するということがあります。株価は1株あたりの金額を指しますが、売買するときには、100株単位などと売買単位が決まっています。これを単元株数といいます。

投資資金が少ない、もしくは銘柄を複数選べないという場合は、1銘柄、1単元から投資を始めますが、資金的に余裕があり、複数銘柄を保有できるという人は、同じ銘柄を2単元以上買うというのも、一つの手です。

こうすることで、売りをタイミングよく決断できなくても、まずは1単元を売って、利益確定するという方法がとれます。投資信託などではよくある方法で、投資したものすべてを売却するのではなく、口数単位など小口に分けて売却できるので、売りの決断をしやすいというメリットがあります。株式の場合は、前述したとおり、売買できる単元株数が決まっていますので、自分で2単元、3単元購入して、利益が出たら1単元だけ売るといった調整をすることになります。

いずれにしても、最初から全力で投資を始める必要はなく、株価が2万円になっても、今後も上げ下げを繰り返していくのですから、買いのチャンスは必ず訪れます。まずはデータを見る、チャートを見るなど市場に参加するところから初めて、買いの候補の銘柄選びをしておきましょう。

(※写真画像は本文とは関係ありません)

<著者プロフィール>

伊藤加奈子

マネーエディター&ライター。法政大学卒。1987年リクルート(現リクルートホールディングス)入社。不動産・住宅系雑誌の編集を経て、マネー誌『あるじゃん』副編集長、『あるじゃんMOOK』編集長を歴任。2003年独立後、ライフスタイル誌の創刊、マネー誌の編集アドバイザーとして活動。2013年沖縄移住を機にWEBメディアを中心にマネー記事の執筆活動をメインに行う。2級FP技能士。