加藤浩次インタビュー後編。前編(加藤浩次が語るコント愛「仕事じゃない」 - 極楽とんぼ時代のネタ作りと"狂犬"誕生秘話【前編】 2015年6月2日掲載)では、"コント"と"芸人・加藤浩次"について尋ねていったが、後編のテーマは"司会業"と"俳優業"。加藤はさまざまな役割にどんな心境で向き合っているのだろうか。

加藤は、『スッキリ!!』(日本テレビ)、水曜深夜の『なら婚』(日本テレビ)、『スーパーサッカー』(TBS)、『ガッチリマンデー!!』(TBS)、『この差って何ですか?』(TBS)と、『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ)以外のレギュラー番組全てでMCを務めている。

しかも、明石家さんま、ダウンタウン、ウッチャンナンチャン、ナインティナイン、爆笑問題、くりぃむしちゅー、ネプチューンら他のMC芸人とは異なり、芸人たちが多数集まる番組が少ない。その代わりに生活情報、スポーツ、経済などの他ジャンルでのMCが目立つのだが、芸人としてこの立ち位置は異例と言える。

なぜ芸人をイジる番組出演が減った?

加藤浩次 撮影:大塚素久(SYASYA)

「加藤さんのような立ち位置のMC芸人はいないのでは?」と尋ねると、少し考えてから意外な先輩芸人の名前が返ってきた。

「(首をひねりながら)まあ、僕はみなさんがやらない仕事をやらせてもらっているだけなんですけど…………あっ、(島田)紳助さんとかも、同じような番組をさんざんやっていたじゃないですか! それに最近は役者さんも司会やるし、アイドルもお笑い番組やるし、ボーダーがなくなっていますよね。僕は決して『今のような形でやりたい』というのがあるわけじゃなくて、ただ流されているだけなんですけど(笑)」

それにしても、タレントやアスリートに加え、文化人、経済人、ネット人など、あらゆるジャンルの有名人を仕切るのは難しいはずだ。加藤はどんなことを心がけているのか。

「(あっさりと)特にないですね。誰かに司会のやり方を教えてもらったこともないし、一人になってから必死にやってきただけですから。司会の仕事が増えているのもたまたまでしょうし、僕らよりも長い時間番組のことを考えているスタッフさんたちに乗っからせてもらっている、という感じなんですよ。僕のMCはそんなもんです(笑)」

企画段階から自分の意見を出すMCも多い中、加藤は立場をわきまえて"使われる側"に徹しているようだ。だから目指す司会像を尋ねても「申し訳ないけど、全くないんだよな~」、司会のコツを尋ねても「それが分かればもっと仕事があるでしょ」と笑われてしまった。どこまでも"力まず自然体"のスタンスらしい。

他の芸人MCのように「大勢のひな壇芸人をイジる」番組への出演がないことについては、「オファーがないですからね。どうしてなのか各局のスタッフに聞いといてくださいよ(笑)。(元相方の)山本(圭一)の問題があって一人になったので、いったんそういう番組をやめて、そのままになっているんじゃないですかね」と話した。ロンブーやココリコなどへのアドバイスで知られ、後輩芸人からの信頼も厚い加藤だけに、再びひな壇芸人を仕切る姿も見たい気がする。

キャスティングには口を出さない

現在、加藤の出演番組で最も気になるのは、平日朝の『スッキリ!!』。今春で相棒がテリー伊藤から上重聡アナに変わり、コメンテーターが2人から4人に倍増されるなど、大幅なリニューアルがあった。加藤はこの変化をどう感じているのか。

「テリーさんいなくなって大きく変わりましたよね。僕が変なことを言ったら修正してくれたし、独自の意見も言ってくれたし、ゲストが来たときに盛り上げてくれたし、今までやってくれていたものは本当に大きかったですから。今はどういう形で回していくのが一番いいのか、毎日模索しているところです」

番組のリニューアルに関して、加藤の意向は何も伝えていないという。倍増したコメンテーターに関しても「キャスティングには一切口を出さない」そうだが、ジャンルの異なる4人にどのような基準とタイミングで話を振っているのか。

「想定台本のようなものはありますが、ほとんどその通りにはならないので、自分の温度に任せています。『これはこの人に聞きたいな』とか、『この人あまりしゃべってないな』とか、そんな程度ですよ。あと、僕は勝谷(誠彦)さんが好きだったので、卒業して寂しいですね。だって、今どきあそこまで好きなことを言っちゃう人っていないじゃないですか(笑)」

ところで、加藤は『スッキリ!!』に出演しはじめてから、毎朝全ての新聞を読んでいるという都市伝説がある。これを本人に尋ねてみると……、「全部ではないですよ(笑)。一応、目を通さないと、とは思っていますけどね」とやんわり否定。ただ、主要新聞はひと通り読むなど、努力を続けていることは間違いない。そうした「努力していますよ」というところを少しも感じさせないのも、人気の秘けつなのではないか。