生涯でがんにかかる確率は男性62%、女性46%(国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター 最新がん統計 2015年4月22日)。CMなどでもいわれる通り、2人に1人はがんになる時代です。治療にかかる"お金"にも無関心ではいられません。

実は入院・手術以外の支出が負担になる

病気にかかって入院した場合、いったい何日くらい入院するのでしょう。厚生労働省の平成23年患者調査によると、平均在院日数は32.8日となっています。ただし、これはすべての年代、すべての病気の平均で、精神障害やアルツハイマーといった病気、高齢の方まで含めたもの。内容をよく見ると35~64歳・悪性新生物(がん)の場合、胃は16.2日、腸は12.3日、乳房は9.4日と、2週間前後しか入院していません。このように、最近は入院期間も短く、高額療養費制度もあるため、病気に対する備えは貯蓄で行い医療保険は不要という声も聞かれます。

確かに、初期の段階でがんを発見することができ、入院・手術のみで治療を終えることができれば、それほど多額の費用がかかることはありません。ただ不幸にも進行した段階での発見だったり、リンパ節への転移などがあった場合は、入院の前後に抗がん剤、放射線といった治療を行うことになります。多くの場合これらは通院での治療となり、手術と違い治療にも日数がかかります。となると、高額療養費制度があるとはいえ、限度額いっぱい(もしくは近く)の医療費を数カ月にわたって支払うことになるのです。

加えて病院へしばしば通うことになると、医療費以外のお金もいろいろ必要になります。病気と闘うためには、日常生活もこれまで通りとはいかないことも多く何かとお金がかかるのが現実。下のデータにあるように、がん治療の場合は遠方の病院へ通う人も多く、交通費や宿泊費は大きな負担のひとつ。抗がん剤には脱毛するものが多いため、ウィッグも必需品です。ちなみに、ウィッグは所得税の医療費控除の対象にはなりません。

治療は働きながら続けられる?

お金がかかることはもちろんですが、治療中、それまでと変わらない収入が得られるかということも大きな問題です。放射線や抗がん剤治療は、どうしても副作用があります。体調が悪い中で、これまで通り仕事を続けることができるでしょうか?

東京都保健福祉局が平成25年10月に行った調査によると、職種にもよって大きな差がありますが、いずれの職種でも2割程度の人は退職をしています。

退職した人はもちろんですが、退職しないまでも会社を休むことが多くなりますし、休職して傷病手当金の支給額は標準報酬月額の3分の2ですから、必然的に収入はそれまでよりも少なくなります。下のデータでわかる通り、個人で見ると6割弱、世帯としても半分弱の人は収入が減ったと答えています。

前記の「最新がん統計」で年齢別のがん死亡率を見ると、男女とも40代半ばくらいで増え始め、男性の場合は50代半ばくらいで急速に増加します。ということは、それなりに貯蓄もできているはずの世代ですから、治療に係る支出増にも対応できるかもしれません。

ただ最近は、特に女性の場合20~30代で乳がん、子宮がんになる人も増えていて、若年化する傾向にあるといいます。資産が形成されていない世代にとって、がん治療のお金として頼りにするもののひとつが、がん保険であることは間違いなさそう。とはいえ、がんにかかるのは日本人の半数、さらに収入が減るのはその半分程度ですから、必要以上に心配して高い保険料を支払い家計のバランスを崩しては本末転倒です。

自分に必要な保障内容を選び、定期的に見直しを

がん保険とひと口にいっても、診断、入院、三大治療(手術、放射線、抗がん剤)、通院といった治療全般をカバーするもの、診断時を重視したもの、年金のように分割して受け取るもの、治療費を実額で保障するものなど、その内容はいろいろあります。

自営業だから公的保障が少ない、がんになる可能性が高そう(がんは遺伝しないといわれていますが)、一度に受け取るとムダ遣いしてしまいそう……など、自分の状況を冷静に考えて必要なことを保障してくれる商品で、なおかつ無理のない保険料のものを選ぶことが重要です。

また、がん治療はどんどん進化していますから定期的な見直しも必要です。たとえば、20年くらい前のがん保険は、診断、入院、手術はカバーしていますが、放射線や抗がん剤治療は考慮されていないものがほとんどでした。最近人気の高度先進医療も将来は標準治療となり、さらに進化した治療方法が登場するかもしれません。がん保険も他の生命保険同様、定期的に見直すことが必要といえそうです。

<著者プロフィール>

鈴木弥生

編集プロダクションを経て、フリーランスの編集&ライターとして独立。女性誌の情報ページや百貨店情報誌の企画・構成・取材を中心に活動。マネー誌の編集に関わったことをきっかけに、現在はお金に関する雑誌、書籍、MOOKの編集・ライター業務に携わる。ファイナンシャルプランナー(AFP)。