――さて、そんな「月追いの都市」をあらためてライブでやったきっかけは?

日山「ずっとライブをやりたいとは言っていたんですけど、『月追いの都市』は初期の自主制作作品だったので、そのライブに実際どれだけの人が来てくださるかも分からず、個人で主宰するにはリスクが高いというのもあり、なかなか機会がなくて……」

霜月「『月見ル君想フ』というライブハウスは、背景に月の映像がキレイに出たりするんですけど、こういうコンセプトのハコで、そのコンセプトにあった世界観のライブをやりたいと思ったのはきっかけの一つかもしれません。それで、日山さんと2人で見に行って、ここで『月追いの都市』をやりたいねって思ったのが動機としては大きいと思います」

日山「大きかったですね。ハコを見に行って、ステージを想像して、踏ん切りがついた感じです(笑)」

――ライブの実現に向けて、アルバムを再構成する作業はいかがでしたか?

霜月「そこはほとんど日山さんですね。ライブ用に台本を書き下ろしたり」

日山「こういうハコでコンセプティブにやるのなら、オリジナルCDを再現するのではなく、朗読も入れてアコースティックな編成でやりたいなと。ただ、オリジナル版はすごく造語のコーラスが多くて、そこにストーリーの多くが含まれている作品だったのですが、アコースティックでライブをやるとすると、造語の部分を何とかしないといけない」

――といいますと?

霜月「ボーカル部分と重なっているコーラスがほとんどなので、私が歌えないんですよ(笑)。ライブで表現するとなると、コーラスを用意して歌ってもらうしかないんですけど、アコースティックでやるとすると、できるだけシンプルな構成にしたいじゃないですか。そうなるとハモるぐらいで精一杯になるので」

日山「あと、造語なので、言葉で発しても意味が伝わらない(笑)」

霜月「サウンドとして何となく造語だというのはわかっても、何を語っているかは歌詞カードをみないとわからない。ステージでやるなら、ちゃんと日本語にしたほうが、聴いている方にも伝わりやすいので、今回は朗読というカタチをとりました」

――曲はすべてピアノメインのアレンジですね

霜月「ピアノのアレンジは谷岡(久美)さんなんですけど、原曲を大事にした上で、ピアノならではのすごくいいアレンジにしていただけたと思います。原曲のおいしいフレーズをうまく取り込んでくれて、ピアノだけなのに、すごく厚みのあるアレンジで、原曲を知っている人が聴いても、全然寂しい感じがしないアレンジにしていただきました。そのおかげで、すごくシンプルな構成ながら、音楽的はすごく幅広いものになったと思います」

――曲をいじったりはしていないのですか?

霜月「曲を足したりはしていませんが、朗読のバックにインストを弾いて頂いたりはしています。オリジナルはない部分なんですけど、朗読の内容に合わせて、元のCDではコーラスでやった曲をインストにしたり、ほかのラグクーア作品からモチーフに関連した楽曲を持ってきたり。ラグクーアシリーズは、『月追いの都市』に限らず、今まで私と日山さんと空乃さんとで、『花想少女~Lip-Aura~』などいろいろと関連作も制作してきたんです。なので、ラグクーア作品として聴いてくださっているコアなファンの方々にも、『この曲、どこかで聴いたことがある』みたいな感じで楽しんでもらえるんじゃないかと思います」

――実際にライブでやってみた感想はいかがですか?

霜月「ファンの方々の"待ってました感"というか、熱意や思い入れをすごく肌で感じたライブでした。少しでも見逃さないようにしようというお客さんの空気感と、それに応えたいという気持ちの一体感がすごかったです。朗読の導入から始まり、月の映像も含めた空間の異世界感。私自身、ラグクーア世界にトリップした感じがすごくあるステージだったと思います」

日山「とにかくいらして下さったお客さんが温かかったですね。ライブの最後にお見送りをしたのですが、たくさんの方から『ずっと待ってました』『感動しました』と言っていただけて本当に嬉しかったです。皆さんの笑顔や泣き顔を見て、やってよかったなぁと。あとはやはりライブなので、昼と夜でピアノと歌と朗読の3人の雰囲気が変わったりするのが、すごくリアルな感じで印象に残っています」