重要文化財の中での対局

第2局の対局場は高知市の高知城、その敷地内にある追手門の中で行われた。

手前の建物が追手門(おうてもん)。大手門と同じ意味で城の正門にあたるものだ。奥にそびえたつのが本丸の天守

高知城は戦国時代の名将、山内一豊が土佐藩24万石の大名となった際に築城した「南海の名城」とうたわれる城。また、幕末には坂本龍馬の出身地として長州・薩摩とともに維新の原動力となった藩でもある。

高知城の天守

高知城のお堀

高知城の天守など本丸の建物と追手門は、近代に再建されたものではなく、江戸時代に建造されたものが修復されながら現在まで残っている。本丸の建物が完全な形で残っているのは日本で唯一とのことだ。そして当然ながら重要文化財である。

桜の標本木は開花寸前のツボミだった

同じ敷地にある山桜は満開

三ノ丸の広場には桜の木が数多くあるのだが、その中の一本が高知市の桜の開花を判断する標本木となっている。見に行ってみると、ツボミが赤く染まってふくらんでおり、いまにも咲きそうな気配。残念ながら当日は咲かなかったのだが、翌日の日曜日に人間の勝利を祝うように数倫の花が開いて、開花宣言が出されている。

路面電車は高知市民の足

高知市の生みの親、山内一豊像

角換わりの力戦形へ

いよいよ始まった対局。最初の注目はまずどんな戦型になるのか。作戦の選択権は主に先手番のSeleneにあるので、Seleneがどんな作戦を選ぶかと言ってもいいだろう。そして戦型がある程度決まったのが下図の局面だ。

図1:18手目△8八角成まで

図1の局面は後手の永瀬六段が角交換したところ。角換わりと呼ばれる戦型なのだが、通常よく見られる定跡形とは少し違う。それは後手が飛車先(8筋)の歩を交換して切っていることだ。人間同士の将棋の常識では「飛車先の歩交換3つの得あり」という格言もあるように、そう簡単には飛車先の歩を交換させないように指す。それをSeleneはあえて交換させているのだ。

開発者席から見たSeleneの画面

電王手さんは前回の電王手くんよりも大きくなった印象。貫録が出てきた

この傾向は過去にもあって、例えば「第2回将棋電王戦」第2局のponanzaも矢倉と呼ばれる戦型で相手に飛車先の歩をあっさり交換させている。これはコンピュータ将棋の特徴とも言えるが、もうひとつ理由がありそうだ。それは、プロ同士の実戦例に少ない戦型に早めに持ち込むことで、プロの研究にはまらないようにする意味があるのだ。