第85期A級順位戦(主催:毎日新聞社・朝日新聞社)は3回戦が大詰め。9月18日(金)には伊藤匠二冠―近藤誠也八段の一戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、力戦調の角換わり腰掛け銀の戦いから終盤の入り口でリードを築いた近藤八段が100手で勝利。苦戦の中盤を跳ね返して2勝1敗の白星先行に転じています。
中盤は伊藤二冠ペースも……
王位戦・王座戦とタイトル戦の連戦が続いた伊藤二冠は2か月ぶりの順位戦。ここまで佐々木勇気八段と永瀬拓矢九段に敗れているだけにそろそろ初日を出したいところです。両者の息が合って角換わり腰掛け銀へと進んだ本局は、後手の近藤八段による6筋位取りの趣向で幕を開けました。攻防の自陣角で手将棋模様の持久戦に持ち込みたい狙いが見て取れます。
駒がぶつかる前から共に慎重に時間を使って方針を練ります。先にペースを奪ったのは先手の伊藤二冠で、タダのところへの桂の成り捨てが膠着状態を打開する軽妙手に。駒損ながら飛車を成り込んだのはやはり大きく、夕食休憩後は近藤八段がいかに粘れるかという情勢が予想されました。しかしここで伊藤二冠の放った垂れ歩が事態を紛糾させます。
自然な垂れ歩が敗着に
先手のと金攻めは確実ではあるものの、実現までに手数がかかるのが問題。急転直下で手番を得た近藤八段の指し手に力が入ります。大切に思われた飛車を見切って質駒の角を入手したのが気持ちよい決め手。返す刀で角を打ち、先手玉を守る急所の金に狙いをつけて局面の主導権を奪い取りました。本譜の進行を思うと、伊藤二冠としては先に角を成る手が優先でした。
優勢に転じてからの近藤八段は冷静でした。終局時刻は23時55分、最後は自玉の詰みを認めた伊藤二冠が投了。中盤で竜作りという大きなリードを許しながらも一瞬の切れ味で棋勢をひっくり返した近藤八段の抜け目ない指し回しが印象に残る逆転劇となりました。近藤八段は2連勝で白星先行に。敗れた伊藤二冠は3連敗と残留に向け黄色信号です。
水留啓(将棋情報局)
