思春期の少年たちが抱く女子中高生への妄想を描き、写真集としては異例のヒットを記録した『スクールガール・コンプレックス』の映画化作品『スクールガール・コンプレックス~放送部篇~』が、17日から公開をスタートした。写真が動画になることを、生みの親である写真家・青山裕企はどのように捉え、また"フェチ写真"を生み出すきっかけはどこにあったのか。

映画『スクールガール・コンプレックス~放送部篇~』

青山氏は、2007年に"記号的な女子校生"をテーマにした写真でキヤノン写真新世紀・優秀賞を受賞。被写体となる女子校生の顔をはっきりと映さず、スカートからすらりと伸びる足やブラウスの隙間からちらりと見える素肌などにフォーカスし、少年のうしろめたいような感覚を表現した。映画『スクールガール・コンプレックス~放送部篇~』は、その写真集の世界観はそのままに、女子高の放送部を舞台に繰り広げられる青春ガールズムービー。森川葵と門脇麦がダブル主演を務め、少女たちの不器用で、真っすぐな恋心を描き出した。

試写室で見終わった時のことを「僕にしか分からない衝撃がありました」と振り返る青山氏。写真集と映画では、制作手法が全く異なることから、映像を見るまでは当然想像できるはずもない。しかし、互いの"シンクロ"は予想以上だったという。青山氏は「これだけ原作と映画がどちらに寄りかかることなく、肩を組みながら進んでいったパターンもめずらしいのでは」と冷静に分析し、「関わる皆さんが作品を深く理解して頂いた上で、取り組んで頂いたからだと思います」と監督をはじめ、スタッフが作品と誠実に向き合っていたことが良い結果へと結びついたのではと予測する。

青山裕企(あおやま ゆうき)
1978年愛知県名古屋市生まれ。2005年筑波大学人間学類心理学専攻卒業。2007年キヤノン写真新世紀優秀賞受賞。東京都在住。HKT48・指原莉乃のフォトブック『さしこ』、HKT48のCDジャケット写真なども担当。

主役を務めた森川と門脇は青山氏がオーディション時から押していた2人。「グイグイ感がなく、それでいてどこか気になる感じ」とその共通する魅力を語り、「これはどこにも言ってない話なんですけど…」と続ける。「僕は写真をずっと撮っているので、どうしても女の子の体つきを見ざるを得ないというか、身体のフォルムや肉付きなどを鋭く見るんですね。僕がスクールガール・コンプレックスの写真を撮るということを考えたとき、森川さんぐらいのスタイルが、一番撮りやすいですね。門脇さんはそれとはちょっとずれるんですが、撮ってみたいという気持ちがすごく湧きました。もしかしたら、すごくいいものが撮れそうという気持ちが湧くのが、門脇さんでした。写真的には、そういう直感が重要なので」

写真集『スクールガール・コンプレックス』が生まれるきっかけは、7年前までさかのぼる。複数名で行うことになったある写真展のテーマが"変態"だったことから、青山氏は"変態"について真剣に考えはじめる。掘り下げ続けてたどり着いたのが、思春期の思い出。当時抱いていた女性との距離感、共学の教室に女性がいるにも関わらずなかなか話しかけられない奥手な自分など、性体験のない状態で発揮された"妄想力"にスポットを当てた。「もうあの頃には戻りたくないし、当時カメラがあっても女の子なんて撮ることはできないけど」と語る青山氏。「もし撮れてたらすごいことになってたなと思って、当時の妄想力や欲望の視線を作品にできるかなと思って撮り始めた感じです」とそのきっかけを明かす。

以降、青山氏は「絶対領域」「BODY PARTS」「スク水 sukumizu」「パイスラッシュ」「はさみっこ」など、さまざまなフェティシズムを切り口に写真集を出版。フェチ写真の先駆者的な存在に見られがちだが、実情は違うようだ。「僕が開拓しているように見えるんですが、実際はこういった企画のオファーが来ているんです」とその背景を明かし、「企画していただくからには全力で取り組むので、僕が熱を持って撮っている雰囲気になるんだと思います」と語っていた。

今後の新たなフェティシズムに対するアプローチはあるのか。青山氏は「ほんと身も蓋もない話なんですけど」と前置きしながら、「オファーがあればというかんじです(笑)。別にフェチな写真を撮りたいというわけではないので。自分のフェチって何なのか? というのが、色々撮りすぎてわからなくなってまして、ここ最近はずっと、耳が好きですね。だから、耳をテーマに本を出せたら良いんですけど」と次回作への展望を明かしている。

青山裕企氏のこれまでの作品(一部)

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