鈴蘭の「味噌らーめん」。しかし、サッポロラーメンはみそだけじゃない!

ラーメンは札幌グルメの代表格。それだけに店も味も実にたくさんある。しかし、味の好みは各人によって異なるため、「この店こそNo.1」という紹介は不可能に近い。それでも人はおいしいラーメンを求める。情報も欲する。そこで今回は「昔ながらの味」、「600円台」、「地元で愛されている」をキーワードに3つの名店を紹介したい。

みそラーメン誕生以前、80年前の味を今に

サッポロラーメンといえば、やはりみそラーメンを思い浮かべる人が多いだろう。実際みそラーメンの発祥地は札幌で、全国的な有名店「味の三平」が開発したことはラーメン好きの知るところだ。

では、みそラーメンが生まれる前、札幌ではどんなラーメンが食されていたのか。その味を実際に食べて確かめることができるのが、札幌市西区にある「四代目いちまる」である。

みそラーメンが誕生する前は、札幌でもラーメンといえばしょうゆ味だった。この店では、現代風な味のしょうゆラーメンとは別に、初代店主が屋台で出していた「昔風しょうゆ」というメニューを用意している。

初代店主がチャルメラを吹きながらこのラーメンを作っていたのはもう80年以上も前のこと。とんこつをゆっくりと煮込むことで作る、あっさりしつつも深いコクのある味わい。寒冷地の屋台が生んだ、身も心も温まるようなやさしいラーメンなのだ。

その味を、時を経た今でも変わることなく楽しめるのがこの店。昔ながらのなじみの味を求めてやってくる高齢者の常連客も多い。また、転勤で道外に移住したにもかかわらず、年に一度は来店する人もいるという。

小さな店舗は昔ながらの風情を残しつつ、モダンな内装に仕上げられている。女性ひとりでも入りやすい雰囲気が魅力的だ。2012年10月中には、同じ西区に2号店もできる。

これぞ原点の味、四代目いちまる「昔風しょうゆ」(600円)

多くの常連客から支持される素朴で深い味わい

次に紹介するのは「ラーメン専門店 胡桃(くるみ)」。札幌市豊平区にあるカウンターだけの小さな店だ。オープンして18年目。住宅街の中の少々分かりにくい場所にあるのだが、連日常連客でにぎわっている。

ラーメン店には、看板メニューを掲げる店が多いが、この店は、みそ、塩、しょうゆのいずれも人気だという。それぞれの味にファンがいるのではない。常連客でさえ、のれんをくぐる度にどの味にするか迷ってしまうのだ。

かなり保守系のみそ派の私も、この店のベストな一杯は決めがたいが、今回は「塩ラーメン」を紹介したい。この店の味は総じてあっさり系なのだが、塩ラーメンはひと口目からパキッとしたインパクトが十分にある。

食べ続けても味に飽きたり疲れたりすることはない。ひと口目のおいしさがいつまでも後を引き、食べ終わった瞬間もう一杯食べたくなってしまう。まさに毎日でも食べたくなるおいしさなのである。

胡桃の「しおラーメン」(600円)

ご主人に聞くと、素材はあくまでもシンプル。素材それぞれのバランスが取れていることと、惜しまず手間をかけることが大切なのだという。鶏ととんこつ、野菜だけを使うスープの取り方から、塩味のまろやかさを感じてもらう秘訣(ひけつ)まで、こだわりがたくさんだ。

これらはもちろんオフレコだが、仮に公開してもまねされる心配はないという。気温や季節に応じた細かな手のかけ方は、身体でしか覚えることができないとご主人は断言する。論より証拠、ぜひとも食べていただきたい一杯である。

●information
ラーメン専門店 胡桃
北海道札幌市豊平区月寒東3条6丁目6-17

毎日でも食べたくなるやさしい味わい

しょうゆ、塩とくれば、最後は当然みそラーメンだ。私が保守系みそ派であることはすでに公言したが、それだけに好みの店はたくさんあり、悩むところではある。しかし冒頭に挙げた3つのキーワードから、札幌市豊平区美園(みその)にある「味の鈴蘭」を推したい。

美園という場所は、札幌の中でも有名店が集まる激戦区だ。そんな場所で27年間営業してきた「鈴蘭」のラーメンも総じてあっさり系。

寝かせ味噌の深い風味がたまらない、鈴蘭の「味噌らーめん」(650円)

赤と白のみそ、そして複数の素材をブレンドして1カ月以上寝かせる特性みそととんこつ、丸鶏、昆布等で取るスープ。いずれも安全性や食べやすさを十分に考えた素材を厳選しつつ、毎日でも食べられるような味に仕上げている。

鈴蘭の「坦坦麺」(750円)は、優しい辛さがじっくりと利いてくる

あっさりとしながらも奥の深い味に加えて、しょうがの風味がパンチとなってさらに食欲をそそる。こちらのラーメンもクセになる味で、毎日のように通う常連客も多数いる。季節限定メニューもそろう。また、寒さが増すこれからの季節は、常連客から坦坦麺のオーダーも多くなるという。

ところで、ここで紹介した3軒の麺は、すべてサッポロラーメン王道の中太チヂレ麺。サッポロラーメンの味は多様化しているが、麺が中太チヂレ麺であることだけは必須条件であろう。

また、今回紹介した3軒は、いずれもインパクト系ではなく、毎日でも食べたくなるというもの。札幌を旅行する際には、ぜひ足を運んでいただければと思う。