『Fate/Zero』の映像制作を支えるufotableの新進気鋭スタッフを7つのカテゴリーから紹介。今回は「制作」のお二人に話を聞きました。

はじめまして、吉田晃浩さん・高中優さん

――まずは、自己紹介をお願いいたします
吉田:『Fate/Zero』で各話の制作をしています吉田晃浩(写真右)です。2007年の4月に入社しました。僕は当時、別のアニメ会社で働いていたのですが、自分の中の夢として「いつか脚本家になりたい」と思っていたんです。でも、その会社でその夢をかなえるのは少し難しそうだったので、ufotableに転職をしました。

高中:同じく『Fate/Zero』で各話の制作をしています高中優(写真左)です。僕は2006年の12月入社です。その年の春に映画の専門学校を卒業したんですが、卒業後に就職することが出来ず、暫く時間がたってから縁あってufotableに入社しました。

制作:吉田晃浩さん・高中優さん

――お二人はどうしてufotableを選ばれたのですか?
吉田:ある日見たufotableのHPで「オリジナルをどんどんやっていきます!」という力強いメッセージが書いてあったので「これは面白そうだ」と思って近藤さんにすぐに連絡をして、面接をしてもらいました。もちろんその時に「脚本をやりたい」という事も伝えたんですが、そしたら「とりあえず制作からやってみないか? もうすぐ『劇場版「空の境界」』という作品をやるんだ」と言われて、その時いろいろお話を伺って、ここに入ったらチャンスがあるかもしれないと思って入社しました。

高中:僕はもともとアニメが好きで、その中でも仕事としては編集志望だったんです。でも「アニメの編集ってどうやったらなれるんだろう?」と悩んでいて、その時にたまたま「コヨーテ ラグタイムショー」の第1話を見たんですが、それがすごく面白くて、それで制作スタジオとしてクレジットされていたufotableのHPをみたら「いろいろ挑戦している会社なんだな。ここに入れば編集になれるかな?」と思って連絡をして入社しました。

――お二人は、ufotableに入って一番最初に担当したお仕事は何でしたか?
高中:僕が入社した時期は『がくえんゆーとぴあ まなびストレート!』の放送直前だったのですが、今ほど人がいない、というか全然制作が足りていなくて、『Fate/Zero』でラインプロデューサーをやられている先輩の鈴木龍さんが、まなびでもラインPをやりながら何本も各話制作を掛け持ちしているという状況でした。ただ、まだその当時は各話の制作をやれる程の力が自分になかったので、絵コンテのコピーをしたり、外回りで原画を回収したりといったお手伝いをやっていましたね。

吉田:僕はその『まなび』の放送が丁度終わった頃の入社だったのですが、会社の至る所に各話のカット袋が入った段ボールがあり、近藤さんから「とりあえずそれ片付けといて~!」って言われました。当時、僕の他に入ってきた人が3人いて、4人で一緒に片付けましたね。恐らく制作がすごく忙しかったからだと思いますが、かなり各話がバラバラに入っていたりして、その整理を2週間くらいひたすらやっていました。

「制作」とは、スタッフみんなのためのツアーガイド

――アニメにおける「制作」というのは、具体的にどんな仕事なのでしょうか?
吉田:僕等の仕事は「制作」や「制作進行」と呼ばれるのですが、基本的には作品全体は近藤さんや鈴木さんが見て、僕等は担当の各話制作を進める仕事です。それをわかりやすく言うと「ある1つの団体旅行のツアーガイドさん」みたいな感じだと思っています。

各話制作を旅行に置き換えると、まず「その旅の目的」「何時にどこに行く」という事を決めるのが、アニメではスケジュールや進行管理。それで旅行で連れていくお客さんが、アニメでは一緒に制作を進めるスタッフの皆さんです。旅行で現地に着いてから「今日は○○をします」「こういう段取りでここを廻ります」「あなたは○○を見てください」「何時に集まってください」といった風に決めたり盛り上げたりするのが、実際のアニメ制作作業での、各カット進行や打ち合わせだと思います。

高中:なるほどね。とすると、各話の演出さんが、そのツアーにくるお客さんの幹事かな?

吉田:そう、そんなイメージです。それで、実際に知らない国を旅する時にガイドさんって大事だと思うんです。ツアーガイドが、良い旅のためのコーディネートをしたり、時には引っ張っていったり、遅れる人やトラブルが発生したらフォローしたり、お客さん同士がけんかしたら「まぁまぁ」といさめたり。そんな仕事をするのが「制作」かなと思います。

高中:あぁ、なるほど確かに。僕等制作がそれぞれの旅をコーディネートして、各話の制作という旅を完遂するっていうのは、同時にいくつかの旅を掛け持つ感じも含めて、イメージに近いかもしれない。

吉田:よかったー!! 全然的外れだったらどうしようかと思った(笑)。

――お二人が「制作」として関わるのは、各話の映像を作るにあたって、先ほどのツアーガイドさんの例えだと、どのあたりから関わるものなんでしょうか?
高中:各話の演出さん、作画監督さんはラインプロデューサーの鈴木さんが決めたり、制作プロデューサーの近藤さんが決めるんです。

吉田:だから、僕たちがどの話数担当、って決まった段階では、すでに演出・作画監督が決まっていて、更に絵コンテがあったりする事も多いです。「幹事の方が、誰と、どこへどんな旅をしたいか」までは決まっている様な状態でしょうか。もっと具体的に例えるなら、新宿駅のバスターミナルに集合するぐらいからの参加です(笑)。そこから僕たちが、その旅をどうフォローして進行させていくか、という感じだと思います。

高中:あとは、旅行でも現地に着いたら、行きたい場所って人によって違いますよね。これはカットや版権の割り振りの話なんですが、例えば話数によっては、戦っているシーンもあれば日常のシーンもある。そしてアニメーターさんはそれぞれ、経験も違うし、得意な画も違うので、それぞれに合うオススメの所(カット)を皆さんにご提案する感じです。