「色指定」と「仕上げ検査補佐」

――それでは『Fate/Zero』1stシーズン(1~13話)にて、ご自身のお仕事で「ここ頑張りました!」というものを教えてください
松岡:二人共ファーストシーズンのほぼ全話でどこかしら仕上げ作業をしているのですが、それ以外だと、私は第9話の「色指定」ですね。最初、ランサーの過去のシーンから始まるんですが、その時代らしい色の参考資料があまりなくて、ケルト神話などを自分なりに調べて「こういう色が合うかな」と試行錯誤してどの色を使うかを決めました。モブキャラ(名前が決まっていない様なキャラクター)などは「色指定」がそのキャラクターの色を決めないといけないので、セピアでもモノクロでもないあの色味をどう出したら良いのかは、かなり悩みましたね。

小宮:私は第11話で、「仕上げ検査補佐」として検査を手伝った事です。第3話でも「検査補佐」としてクレジットに名前は出していただいたのですが、深く「仕上げ検査」に携わったのは第11話が初めてだったので、思い入れ的な部分で印象が強いです。「仕上げ検査補佐」というのは、社内だけだとどうしても物量的に塗り切れない部分を外注した際に、その外注先から戻ったものを1カットずつ「色の間違いがないか、正しく塗れているか」といったチェックをする仕事の補佐ですね。第11話は1画面内のキャラ数が圧倒的だった「王の軍勢」が、検査的にはかなり大変でした。

『Fate/Zero』2ndシーズン、いよいよフィナーレへ!

――では、いよいよ2ndシーズン放送もフィナーレへ向け動き出しましたが、現在放送された中で「ここ頑張りました!」という所はありますか?
松岡:私はファーストシーズンで、4・9・13話の「色指定」をしたんですが、どれもランサーが登場する回なんです。そして、第16話でも色指定をしていまして、またまたランサーの回の色を塗りました。4話の活躍、9話の悲哀、13話の変化、16話の終焉と、ランサーチームの全てを色指定しまして、思い入れとしても強いです。16話の色指定は、気持ち的にもかなり来るものがありましたが、グッと堪えて頑張りましたね。

小宮:仕上げとしては毎シーン毎カットが勝負で、とにかくキレイにキレイにを心がけて塗っているのですが、それ以外で、11話に続き、15話と20話で「仕上げ検査補佐」をしまして、特に15話は本編の物量的にすごい話数だったので、15話の色指定・仕上げ検査をされた佐藤直子さんと一緒に、1カット1カット丁寧な検査を頑張ったつもりです。出来上がった映像のすごさには感動しましたね。

千葉絵美さんという存在

――お二人が思うufotableの魅力は、どんな点でしょうか?
小宮:仕上げとしては、撮影部との近さが魅力のひとつでしょうか。ufotableは撮影部と仕上げ部が隣同士にあって物理的な距離が近くて、日々いろいろなやり取りをしているんですが、だからこそ、本編制作の一番最後、ギリギリまで粘って作業ができるんです。撮影でOKにならないと放送されないので、どう進めると限られた時間内で最良の映像に向かえるか、最後はデジタル部一丸となる事も多いです。他の会社に入ったことがないので分からないのですが、多分、他の会社に比べて、相談しやすかったりスムーズに作業出来る環境なんじゃないかな、と思います。

松岡:それ、すごく分かります。ufotableって『Fate/Zero』だけじゃなくて、関わっている全部の作品への愛が深くて、誰もがクオリティーのためにいつもギリギリまで粘るんです。しかも誰も弱音を言わないんですよ。私が入社した時に初めて参加した『劇場版「空の境界」』第三章の時から、ずっとその雰囲気は変わらないです。あの時もすごいと思ったんですけど、今も変わらず、すごいです。

――でそんなufotableの中で、お二人が近い未来(3年以内)に「こんな風になりたい」「こんな仕事がしてみたい」というものはありますか?
小宮:私たち、というか仕上げチーム全員が「色彩設計」の千葉絵美さんを尊敬していますね。

松岡:千葉さんは、その時代、その瞬間の流行に合った色を、どんな作品でもその時にすぐ出せるのがすごいんです。例えば「アニメ文庫」の『ギョ』と『百合星人ナオコサン』という180度違う作品を同時にやって、そのそれぞれで作品にあった色彩設計が出来る方なんですよ。 小宮:同時に全然違うベクトルに持って行けるって、色の世界ではすごい事だと思います。だから私もあんな風になれる様に、まずは「色指定」をしたいですね。それから、もともと色んな作品に関わりたいという気持ちが根っこにあるので、例えば『ギョ』や『百合星人ナオコサン』の様に違うベクトルの作品など、色んな作品で色指定をやってみたいです。そして、最終的には色彩設計をやりたいですね。なので、今はコツコツ目の前の仕事を続けていって、いつかそんな風になれたらと思います。

松岡:私は今『Fate/Zero』で「色指定」をさせてもらっていますが、まだ自分の色が好きになれないというか、自分の色に自信が持てていないんです。先輩達は「大丈夫。経験だよ!」と言って励ましてくださるのですが、悩んだまま前に進むのは、時として作品やスタッフや視聴者の方に申し訳なく感じる部分もあるので、今は日々精進して経験を積んで頑張って、いつか自分の作る色に自信を持って、千葉さんの様な「色彩設計」さんになりたいと思ってます。

――さらなるご活躍を期待しております! 本日はありがとうございました!