「制作」の腕の見せ所

――『Fate/Zero』1stシーズン(1~13話)にて、ご自身のお仕事で「ここ頑張りました!」というものを教えて下さい
吉田:僕が担当したのは、第1話と、みんなでやった第8話、そのあと第9話でした。第1話は1時間SPだったので、単純にいつもの2倍の物量なんです。いつもを3泊4日の旅と仮定するなら今回は7泊8日で、しかもその団体客の初めての旅行でしたから、その大変さと、その後を左右する始まり、という意味でかなり緊張しました。1話は絵コンテ、演出もあおき監督だったので、全体としてどういう段取りでどういう方向に向かっていくかに気を配りながら進めましたね。あと、細かい部分でいえば、時計塔でケイネスがウェイバーの批判するシーンの論文表紙や、切嗣がアイリと一緒に見る敵の調査書などは、張り込み素材というものをデジタルで作って撮影で画面に張り付けるという作業になるのですが、例えば「ウェイバーの論文のタイトルは何か」とか「時臣の魔術属性を英訳すると何なのか」「調査書の各キャラの誕生日」といったものを最初の話数から間違っていたらファンの方をがっかりさせてしまうので、そういった部分も含め「丁寧に進めよう!」と心して臨みました。

高中:僕が担当したのは、第4話、みんなでやった第8話、そのあと第11話でした。第4話は初めて派手な戦いがある話数だったので「ここは盛り上げなきゃいけない」というプレッシャーをスタッフみんなが持っていました。そんな中で「どうしていくか、どう盛り上がる映像を作るか」を、演出さんや作画監督と一緒に話し合っていったのですが、第4話の演出の栖原さんが演出としてデビューの話数だったので「どうやって栖原さんをサポートできるか、いいものに仕上げるか」は結構意識しましたね。

吉田:制作にとっての「良い仕事」というのは、「視聴者が楽しんでくれる良い映像を作る」という事だと思うのですが、制作自身は画を描いたり、彩色をしたり、撮影をするわけではない事が多いので、制作の力で作品のクオリティーを左右するとしたら、「スタッフの士気を上げる」とか「スケジュールをどこでどう確保するか」「どうやって全体の意思疎通をはかるか」といった関わり方でしょうか。そうした仕事の先に「良い映像」が生まれたら、それが制作の「良い仕事」なのかなと思います。

『Fate/Zero』2ndシーズン、いよいよフィナーレへ!

――では、いよいよ2ndシーズン放送もフィナーレへ向け動き出しましたが、現在放送された中で「ここ頑張りました!」という所はありますか?
吉田:僕は第15話を担当しました。セカンドシーズンがスタートして2話目の話数で、エピソード的にもキャスター討伐・空中戦・エクスカリバー発動といった内容で、視聴者の方の期待もかなり高そうだと感じていました。あと、僕自身がTVシリーズでここまでのアクション話数を担当するのが初めてだった事も含めて、大変でしたが楽しかったです。第15話は3DCGをかなり多く取り入れましたが、CG作業が絡むカットは、制作作業工程が複雑になることが多いので、各セクションにきちんと時間を掛けられる様にしながら、特に撮影部の作業はかなり前から進め、全体として丁寧な段取りを心掛けました。

高中:僕は第16話を担当しました。16話はコンテ・演出が4話と9話を担当した栖原さんで、作画監督が白井俊行君という布陣でした。栖原さんはずっとランサー陣営回をやられてきて、そのランサー陣営の最後を描く話数という事で気合も入られていましたし、作監の白井君は僕と同い年の26歳で、第8話で作監として入ってはいるんですが、作監自体の経験は浅いので、栖原さんの意気込みと白井君の若さという二人の勢いを保ったまま突き進んでいけるように全体をフォローして進めて行きました。

二人のこれから

――お二人が思うufotableの魅力は、どんな点でしょうか?
高中:良いものを作ることに対して本気な事です。その「良いもの」に対する気持ちの向き方も、「俺たちが思ういいものを!」ではなくて「ファンが望むいいものを!」という方向に向いているのが好きです。そのぶん作るのは大変ですが、得られるものも大きいと感じています。

吉田:ひとつは、若い人が多くて、しかも活躍している事ですね。自分と同じ歳くらいのスタッフの活躍は励みになります。あと、全体的にアットホームな感じがあるのも好きです。事務所の下のユーフォーテーブルカフェで、新人歓迎会や忘年会といった会社のイベントをやったりする事も多いんですよ。

――そんなufotableの中で、お二人が近い未来(3年以内)に「こんな風になりたい」「こんな仕事がしてみたい」というものはありますか?
吉田:近藤さんと最初に会ったときに「脚本を書きたい」と伝えたんですが、その気持ちは今も変わっていません。勿論、今の制作の仕事も好きなのですが、近藤さんは「やりたい!と言っているとチャンスをくれる方なので、今もその機会を狙っています。でも、近藤さんにその話をする度に「制作は続けなさい」と言われるので、3年後だとまだ制作はやっているかもしれないのですが、個人的な夢として、面白い話を書いて、それを仕事にしていたいと思っています。制作としては、今よりも、もっともっと良い仕事をしていたいですね。

高中:僕は編集志望でufotableに入ったんですが、少し前にゲームムービーの仕事が入ったときに、編集をさせてもらえた事があったんです。ufotableはやる気があればやらせてくれるという、チャンスをくれる会社なんですが、だから「いつかもっと編集が出来るかもしれない」という思いもありますが、実はこのまま制作の道を進むのもありかな、とも思っています。

以前、近藤さんに「実は一番楽しいのは制作だよ」って言われた事があるんですが、確かに制作って面白いんですよ。それと、3年前って僕はただの制作進行だったんですが、それが今は『Fate/Zero』以外の作品も持つようになって、あの頃の自分が3年後にこんな風になっているなんて思わなかったので、という事は、自分の今の3年後を想像すると「制作を続けてプロデューサーになっているかも!」と期待しています(笑)。
吉田:お! じゃぁ、先輩の鈴木さんを喰(く)っていくぐらいの勢いで!
高中:超えてみせます!

――さらなるご活躍を期待しております! 本日はありがとうございました!