脱サラして駄菓子屋ゲームに情熱
わずか10円で遊べる機械なれど文化財。情熱は駄菓子屋ゲームを中心としたビジネスを手がけてみたいという方向へと進んだ。そのアイデアが板橋区主催の「第1回空き店舗活用コンテスト」で大賞を獲得したことがきっかけとなり、1年前に脱サラ。そして今回、都が支援する「地域連携型モデル商店街事業」に指定された板橋イナリ通り商店街の活性化プロジェクトの核として採用され、今年の3月についにオープンするまでに至ったのだという。
将来的には「板橋区のランドマークになればいい」と語る岸さん。「板橋区にはあまり観光資源がないので、今は活性化に力を入れている。そのなかで自分も一役買えれば」とのことだ。実際、その目論見は成功しており、オープンしてまだ間もないものの、10円ゲームを遊ぶためだけに土日は地方からわざわざ家族連れで訪れる人も多いとか。すでに北は北海道から南は四国まで、全国各地から噂を聞いてやってきているらしい。確かに取材日は平日の昼間であったが、ゲームに興じる大人の姿も少なくはなかった。もちろん学校を終えた小学生もいる。筆者もそのなかに混じってプレイ。初対面だがゲームという共通言語があるせいか、世代を超えて「攻略法教えてよ」「難しいよな、これ」とか和気藹々と言い合いながら遊べるのがいいところだ。うん、童心に返る。
世代を超えて"楽しみ合える"空間
……しかし、心はそうでも相当に腕はなまっていたようだ。最初に紹介した『新幹線ゲーム』をはじめとした10円玉を弾くタイプのゲームは、かつてはアウト穴に落ちることなどほとんどなくなるまで上達した。クリアを前提としてそれまでの最短時間を皆で競ったものだが、本日はみるみる間に10円玉が失われていく。ハングリーさが足りないですねぇ、と岸さんからツッコミ。たっぷり1時間は遊んでも、せいぜい500円の出費のみ。財布の重みには響かない。そんな大人の余裕も実力を鈍らせているのだろうか。くそお。
結局、獲得した景品は恥ずかしながらわずか。それはブタメンと駄菓子に変わった。そう、こちらでは景品は駄菓子と交換ができる昔ながらのシステムを採用している。今時、珍しいことにカタヌキ遊びなども用意しているのだ。「遊び感覚をつけてあげると子どもたちが喜ぶ。泥臭いアイデアだがコンビニやスーパーではできないサービスを提供してスキマ産業を狙っている」とは岸さんの弁。当然、ブタメン用のお湯もある。不思議なことに大人も子どもたちに混じって駄菓子を食べていくという。駄菓子とはいえ勝負の報酬だ。勝って獲得したものは旨いということか。当然、ブタメンも旨かった。
なお、駄菓子屋ゲーム博物館では定期的にイベントなども開催。ニンテンドーDSのゲームでは勝負にならないが、駄菓子屋ゲームなら息子に勝てる。昔取った杵柄を自慢したいなら家族で訪れてみてはいかがだろう。強いオヤジを見せられるかもよ!? (次ページでは駄菓子屋ゲーム機を写真で紹介!)
『駄菓子屋ゲーム博物館』について
■住所 東京都板橋区宮本町17-8 ■開館時間 土日祝:10時~19時、平日:14時~18時 ■定休日 火曜日(祝日と重なった場合は翌水曜日が定休日) ■入場料 無料 ■アクセス 都営三田線「板橋本町」駅A4出口より徒歩6分 ■Webサイトはこちら