独立・開業には勇気がいります。そして人それぞれの理由があります。もちろん稼ぐことを目的に開業する人もいるでしょう。しかし、それ以上に「思い」を持ってビジネスに取り組まれている人が大勢おられます。ここではそんな人々にスポットを当てて、独立・開業への思いや、新しい人生の価値観などを伺っていきます。

連載特別編となる今回は、大阪府大東市で株式会社協和鉄工所と株式会社ZOOM DESIGNの2社を経営する岡田佳久さんにお話を伺いました。

  • 大阪府大東市で株式会社協和鉄工所と株式会社ZOOM DESIGNを経営する岡田佳久さん

42歳で脱サラし、老舗の製造業を事業継承

――まずは、自己紹介をお願いします。

岡田さん:岡田佳久と申します。現在、協和鉄工所とZOOM DESIGNの2社を経営しています。前者の協和鉄工所は、2017年に先代の義父から受け継いだ会社です。地盤改良用の産業機械を開発する三和機材株式会社さんの下請け企業として50年以上の歴史を持ち、セメントを練るミキシングプラントの設計・製作・組立を主に手がけています。

後者のZOOM DESIGNでは、空間設計の仕事に20年携わっていた経験をいかし、オフィス環境や商業施設などのインテリアコーディネートを請け負っています。これまで、ある企業様の新社屋の壁紙や床材の選定をお手伝いしたり、エントランスの改装設計をしました。

そして、インテリアコーディネートを提供する中で新たに始めたのが、オーダーメイドの鉄製の家具や小物の製作です。協和鉄工所が長年培ってきた鉄加工のノウハウを取り入れて事業化にこぎ着けました。

――20年も会社員として勤務されていて、2017年に先代の義父から協和鉄工所を引き継いだのは以前から予定されていたのですか?

岡田さん:予定はしていませんでしたね。業界は先細り、先代は廃業を視野に入れていたようです。私は、前職の会社で一通りやり尽くした気持ちでしたので、新しいチャレンジがしたいと思い、2012年に入社しました。

カルチャーショックを受けるも意識改革を徹底。売上は過去最高に

――42歳で異業種へ転身。異なる環境に戸惑いはありませんでしたか?

岡田さん:かなりありました(笑)。スーツを着てアパレルや宝飾、腕時計などのトップブランドを取り扱う商業施設を設計していた男が、作業着に身を包み汗まみれ。あと、カルチャーショックも大きかったですね。

――具体的にはどのようなカルチャーショックを受けたのですか?

岡田さん:ひとつは、スケジュール管理がされていないことでした。ミキシングプラントはパーツごとに分けて製作するのですが、私が入ったばかりの頃はそれぞれの職人が自分のペースで仕事をしていたため、仕上がりのタイミングがバラバラだったのです。結果的に仕上がりの期間が読めずに工程にずれが生じることがありました。

そこで製造の効率化を目指して取り組んだのが、オペレーションの見える化です。ホワイトボードに工程表を書いて各人のスケジュールを共有するなどして、いつまでに何をすれば良いのかを明確にしました。

もうひとつのカルチャーショックは、職人たちが使う人の顔を意識していないことでした。私は前職で商業施設を設計していた際、例えばフィッティングルームを使用する人が不安にならないようにするには、ミラーの位置やライティングをどうすれば良いのかを考えていましたが、職人たちは自分が作っている部品がどう使われるのかを知らなかったのです。鉄製の家具や小物の製作を新たに始めたときは、本当に大変でした。

産業機械とインテリア製品は使われ方がまったく違うにもかかわらず、作り方が変わらない。「手に触れる部分だからもっと綺麗にしておこう」、「底の部分だから見た目より頑丈さを優先しよう」などと、根気よく使われ方を職人たちに伝えていったことで、産業機械とインテリア製品ともに製作時にメリハリが生まれるようになったのです。

時間はかかりましたが、こうした意識改革が実を結び、代表取締役に就任した2017年には売上が過去最高に達しました。

―――先代は廃業を考えていたとお聞きしましたが、素晴らしいV字回復ですね。

岡田さん:もちろん、職人たちからの反発もありました。職人たちは一生懸命に仕事をしているので、軋轢が生じてしまうのは当然です。けれど、効率化によって業績を拡大できれば、職人たちの日々の頑張りに応えることができます。会話を毎日繰り返し、職人たちの声を聴くようにしました。すると、徐々に心を開いてくれるようになったのです。体制や雰囲気が少しずつ変化していくのを実感しましたね。

以前は先代自ら現場に出て指揮をしていましたが、私が入社して3~4年経つと職人たち自身で工程表を組めるようになりました。時間に余裕ができ、私が個人で請け負っていたインテリアコーディネートの仕事にも本腰を入れられるようになったので、ZOOM DESIGNを立ち上げました。

鉄の一輪挿し「鉄一凛」がギフトショーで準グランプリを受賞

――ZOOM DESIGNの設立は、岡田さんと職人さんたちの信頼関係があってのことだったのですね。ZOOM DESIGNの代表作といえば、鉄の一輪挿し「鉄一凛」ですが、誕生の背景について教えてください。

岡田さん:ちょうど新型コロナウイルス蔓延による自粛期間中で、おうち時間の充実が注目されていました。在宅を豊かにするアイテムを鉄で作りたいとスケッチしながら知恵を絞っていたところ、一輪挿しがひらめいたのです。

職人に試作してもらうと、周囲からの評判は上々でした。テスト販売を開始して2、3日で日本在住の外国人の方から初めてのオーダーが入り、結婚6年目を「鉄婚式」と祝う風習があると逆に教えてもらうことになりました(笑)。それをきっかけに、人生をともに歩む変わらぬ愛を形にした贈り物として「鉄一凛」を打ち出したのです。「鉄婚式のギフト用にネームプレートを特注で入れてほしい」といったオーダーも増え、ニーズに手応えを感じましたね。

【動画】鉄一凛ができるまで

――その流れで「大阪インターナショナル・ギフト・ショー」に出品されたのですか?

岡田さん:Instagramを活用していましたが、写真では鉄ならではの質感や手触りがどうしても伝わりません。たくさんの人に手に取ってもらえる機会がないかと考え、前年に視察していた「第64回 大阪インターナショナル・ギフト・ショー2022」に出品してみることにしたのです。ここでも前職の空間設計の経験がいきました。展示ブースでは「鉄一凛」の世界観を表現する空間を作り上げ、うまくアピールできたことが功を奏したのだと思います。

―――「鉄一凛」は見事準グランプリを受賞しました。その後の反響はいかがでしたか?

岡田さん:鉄婚式をはじめ、新築祝いや周年祝い、社長就任祝いのギフトとしてオーダーをいただくようになりました。テーブルやデスクの上に「鉄一凛」を置き、花を一輪挿すだけで絵になります。

――錆びの風合いも趣があります。

岡田さん:できるだけ錆びないように手作りしていますが、そのように仰っていただける方も増えています。最近は、あえて「錆びを育てる」のも魅力的なのではないかと認識が変わってきました。

――いろいろと気づかされることも多いのですね。

岡田さん:はい。実は今、お花に触れることで今までと違ったインスピレーションを得られるのではないかと考え、生け花を習ったりもしています(笑)

モーターの仕入れが完全に止まり、資金を回収できず苦悩した2020年

――歴史ある会社を改革されたり、新分野を開拓されたり、アクティブな印象を受けますが、経営者に転身して良かったと感じることや、やりがいは何ですか。

岡田さん:「鉄一凛」が代表的な商品ですが、職人たちと一緒におもしろい試みができたときにはやりがいを感じますね。職人たちには常々、業界内なら誰もが知っている三和機材さまの下請けであることに誇りとプライドを持ってほしいと伝えています。

しかも、三和機材さまの敷地内に工場を有しているのは全国でも当社だけなのです。高い技術力に、その商品や部品を誰がどう使うのかといった想像力が加われば、さらにクオリティとモチベーションは上がっていきます。さまざまなチャレンジを通し、職人たちの成長が垣間見えたときにはうれしいですね。

――岡田さんの言葉からは、お客さまは言うまでもなく、職人さんを大切にされているのが伝わってきます。

岡田さん:お客さま第一ですが、そのためにも職人たちにいきいきと働いてもらわなければなりません。月に1回、友人の整体師さんを会社に呼んでマッサージを受けられるようにしているのも、より快適に仕事をしてもらうための一環です。

――反対に、どんなことに苦労されましたか? なかでも、資金繰りに関してお聞きしたいです。

岡田さん:新型コロナウイルスが蔓延し始めた2020年は相当苦労しました。世界的な半導体不足の影響で、モーターの仕入れが完全に止まってしまったのです。1台のミキシングプラントにつき、2~3台のモーターが必要なのですが、通常3週間ほどで届くのが当時は4カ月から半年先まで不透明でした。

モーターがないと納品できないため、資金を回収できず、出て行く一方。モーターがない時期は、8カ月~9カ月続きました。売上は半減し、大赤字で苦しかったです。

――モーターを待つしかない状況だったとは思いますが、どのように乗り越えられたのでしょうか?

岡田さん:助かったのは、ZOOM DESIGNがあったからです。インテリアコーディネートの仕事のおかげで、心折れずに危機を何とか乗り越えることができました。職人たちに「今は、この仕事があるから大丈夫だ」と勇気づけることができましたしね。事業の柱を複数立てておくことはリスクヘッジとして重要と痛感しました。

―――ちなみに、売掛金が回収できず困ったことはありませんでしたか。

岡田さん:前職で売掛金が回収できずトラブルに発展した経験があったので、受注額の半分を着手金としていただいたり、権限のあるキーマンと直接やり取りするなどして、経営者になってからは未然に防止できるように慎重にケアをしています。

独立・開業は、とにかく行動あるのみ。常にリスクヘッジを忘れずに

―――今後の展望についてお聞かせください。

岡田さん:協和鉄工所では引き続き、三和機材さまの下請けとして納期とクオリティを守りながら貢献していきます。ZOOM DESIGNでは、私の経験値と協和鉄工所の技術力を融合し、世の中の人々を喜ばせたいと考えています。昔、ホテルマンに憧れていたこともあって、人に喜んでもらうために何かするのが大好きなのです。

―――人に喜んでもらうために何かをするのが大好きというのは岡田さんらしいですね。では最後に、読者の皆さんへメッセージをお願いいたします。

岡田さん:独立・開業するには、準備を万全に整えてから走り出していては遅いように思います。「鉄一凛」も、とりあえず作ってみて、反応を見ながら改善を重ねてきました。イメージを完全に固めてから発表しようとすると、どうしてもスピードが遅くなりますし、変更もききません。

ただ、リスクヘッジは不可欠です。私は動きながらも最悪のケースを想定し、対応策をいくつか用意しておくようにしています。そうしておけば、万が一の出来事が起きても慌てずに済みますから。とにかく行動あるのみです。

損保ジャパンの担当者に聞いた! 独立・開業時にあると心強い“2つの保険”

岡田さんのお話にもあった通り、挑戦したいという思いがあるならまずは一歩を踏み出すという“行動”が大切なようですね。しかし、コロナ禍の影響を受けたり、機材トラブルや従業員の不慮の事故や傷病などは、なかなか予測できるものではありません。

また協和鉄工所が窮地に陥った際、岡田さんはZOOM DESIGNの売上で凌ぎ、売掛金が回収できないような事態を防ぐために慎重にケアされていたそうですが、資金繰りに頭を悩ませる経営者は少なくありません。特に売掛金の回収不能や入金遅延は致命的で、経営を脅かしている事例も……。

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