連載『住まいと安全とお金』では、一級建築士とファイナンシャルプランナーの資格を持つ佐藤章子氏が、これまでの豊富な経験を生かして、住宅とお金や、住宅と災害対策などをテーマに、さまざまな解説・アドバイスを行なっていきます。


住まいづくりの相談の中で、必ず聞かれるのが「変動金利と固定金利、どちらを選ぶべき?」という質問です。「迷うなら、固定金利を」を原則にアドバイスしていますが、どちらが良いかは、その家族のライフスタイルによります。住まいを取得するほとんどの人がお世話になる住宅ローンですが、借金には違いありません。住宅ローンの正確な仕組みを理解して、借金のリスクをできるだけ少なく、上手に返済できる方法を考えてみましょう。

変動金利と固定金利 ~知らないと怖い未収利息の仕組み~

  • 変動金利…現在の低金利状態の恩恵を受けられますが、金利上昇のリスクはあります。金利は半年に一度見直されますが、多くは「金利が上昇しても返済額が5年間変わらない」などと約款で定められています。変動金利ですので、金利が上昇すれば毎月の返済額が上昇するはずですが、5年間の差額分はどうなるのでしょうか。銀行が負担してくれると思ったら大間違いです。本来の返済額との差額は元金に再度組み入れられ(又は未収利息として、以前は返済終了後に一括徴収される場合もありました)、借入金が増えることになります。金利が大幅に上昇すると借入金が減るどころか増え続けるといった事態になりかねません。特に元利均等返済の場合は、最初の間は、元本はほとんど減りませんので、金利上昇には常に注意が必要です。

  • 固定金利…返済額が一定なので将来の生活設計を立てやすいですが、低金利が長く続くと利率は割高感があります。

  • 選択型…一定期間固定金利で、その後変動金利に移行するものや、一定ルールで選択できるものなど、銀行によって様々なタイプがあります。しかし金利が上昇しかけた時に、あわてて固定金利に切り替えようとしても、実際の決裁がおりて切り替わるのに相当な日数がかかります。金利の上昇は下降時に比べて変化が急激なことが一般的で、手続きの間に金利はどんどん上昇してしまう可能性があるので注意が必要です。

元利均等返済と元金均等返済 ~検討してみたい元金均等返済のメリット~

  • 元利均等返済…一般的な返済方法は元利均等返済で、金利に変動がない限り、月々の返済額は返済期間を通じて一定です。しかし左図の通り、当初は毎月の支払額の大半は利子分が占めて、なかなか元金は減少しません。

  • 元金均等返済…右図のように元金を均等に返済しますので、当初の返済額は多くなりますが、次第に月々の返済額は減少していきます。元金が早く減る分、総返済額も元利均等返済よりは抑えられます。扱っている銀行は限られますが、将来の返済を抑えたい場合は、有利な返済方法です。

(C)佐藤章子

証券化ローン(フラット35等)の仕組みとは ~融資の前提となる建物の性能基準や現場検査は最低限の安心~

証券化ローンの代表的なものは住宅金融支援機構が行っている「フラット35」です。住宅金融支援機構は長く住宅金融公庫として長期固定金利を融資して来ました。当時は住宅金融公庫の融資と厚生年金や国民年金からの公的融資で住宅ローンはほとんどまかなえた状況でした。民間の金融機関の業務範囲を圧迫していることから、民間金融機関でも長期の固定金利の販売を可能にした仕組みです。銀行が長期固定金利の商品を販売したくても、経済全体の金利が上昇したときのリスクは銀行が負わなくてはなりません。証券化ローンとは金融機関が顧客に住宅ローンを販売し、その債権を住宅金融支援機構が買取り、証券化して投資家に販売します。金利上昇のリスクは投資家が負うことにより、民間金融機関でも長期固定金利の住宅ローンを商品化することができるようになりました。以前の住宅金融公庫時代の融資技術基準等も引き継いでいて、特徴は下記の通りです。

(C)佐藤章子

ローン比較のポイント ~見かけの利率だけでは判断でしてはいけない! 金利組込み諸費用の有無~

利率のほかに下記の諸費用の有無と実際の金額、利率に組み込まれているのか別立てで徴収されるのかのチェックが必要です。一見、利率が高くても、いろいろな費用が含まれている場合もあります。

  • 融資手数料…一律か融資金額に対するパーセントか

  • 団体信用生命保険料…金利組み込みか別立てか

  • 保証料…有無と金額

  • 繰上げ返済手数料…一回の金額・その他条件

  • 返済方法…変動金利と固定金利・及びその組み合わせとそれに伴う手数料や条件 元利均等支払いと元金均等支払い

  • 各種優遇措置等

(※写真画像は本文とは関係ありません)

<著者プロフィール>

佐藤 章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。