12日早朝(日本時間)に閉会式が行われ、パリ五輪が終了した。終わってみれば、その多くが深夜帯の放送・配信ながら、日本人選手が活躍した競技を中心にネット上の盛り上がりは上々。開始前から良くも悪くも話題満載だった東京五輪までの熱気こそないものの、国民的な話題としてはいまだトップクラスであることを証明した。

これから民放各局が順にアスリートを招いての総集編特番を放送していくが、パリ五輪のテレビ放送にはどんな傾向や視聴者の反応があったのか。テレビ解説者の木村隆志が総括しながら、今後の五輪放送を占っていく。

  • (左から)上田晋也、松岡修造、安住紳一郎アナ、水谷隼、石川佳純

    (左から)上田晋也、松岡修造、安住紳一郎アナ、水谷隼、石川佳純

各局キャスターの明暗が分かれる

このところ五輪が開催されるたびに、出演者と放送競技の選択に関わる声がネット上に飛び交っていたが、今大会はそれが顕著だった。

まず出演者の選択は “各局の顔”に指名した「メインキャスター」「スペシャルキャスター」に対する賛否だが、明暗がはっきり分かれたと言っていいのではないか。最も評判が良かったのはフジテレビのスペシャルキャスター・石川佳純。一歩引いた立ち位置からアスリートや競技の魅力を自分なりの言葉で伝えようとする誠実な姿勢が支持を集めた。

五輪放送の常連となるTBSの総合司会・安住紳一郎、スペシャルキャスター・高橋尚子は通常運転。あえて、見どころプレゼンター・伊沢拓司を立てて独自色を出そうとしたところは民放らしい蛇足の感もあったが、それ以外はおおむね支持されていた。

意外なところで沸かせたのが、テレビ東京のメインキャスター・水谷隼。中継で穏やかなコメントをしつつ、SNSでは辛口を含めた本音を発信して話題を振りまいていた。多少の視聴率獲得に貢献していただろうことから、今後は現地のキャスターやリポーターに求められていくかもしれない。

逆に最も厳しい声が目立ったのが、日本テレビのスペシャルサポーター・上田晋也。深夜に絶叫や変顔を見せるなど、局アナを巻き込む形でのバカ騒ぎに「主役は選手なのにうるさい」「バラエティを持ち込むな」などの声があがり、明らかに時代錯誤なノリだった。他局が芸能人の起用を控える中、芸人を前面に押し出した制作サイドの判断ミスだろう。芸能人の起用に関しては“テレビ朝日バスケSPブースター”に起用した広瀬すずの控えめな露出くらいが現在の適量なのかもしれない。

さらに、これまで常連だったテレビ朝日のメインキャスター・松岡修造も厳しい声を浴びた一人。過剰な熱さや入れ込み過ぎた取材姿勢は、こちらも前時代的なスタンスであり、さすがに4年後は変えざるを得ないのではないか。

いずれにしても視聴者が「競技や選手の姿だけを見られればいい」「ルールや見どころの説明ならともかく、応援や祝福・落胆などのシーンは最小限でいい」という本質的なスタンスになった感がうかがえる。その証拠に今回から「ほぼ全競技無料配信」になったTVerの一部競技で「実況がなかったから見やすかった」というユーザーも少なくなかった。

だからこそ、今後のテレビ放送は配信にはない付加価値をどのように提供していくのか。その点でキャスターやゲストの人選が大きいのは間違いない。