ここまで挙げてきたように、8時間の生放送中に何度もクライマックスが訪れ、そのたびにネット上には称賛や感動の声が書き込まれていた。

さらに印象的だったのは、クライマックスで中居正広が先輩の成田昭次と岡本健一に促されて「夜空ノムコウ」を歌ったシーン。最後まで生放送らしい臨場感やサプライズであふれ、出演アーティストがこん身のパフォーマンスを見せたことは間違いないだろう。

その一方で、スタッフサイドの奮闘も随所に感じられた。例えば、サポートミュージシャンからバックダンサー、チアリーマンズ、水着美女、よさこい、地元住民まで、アーティストの背後を彩る演出ひとつ取っても一切の妥協なし。音響、映像、照明、特殊効果なども含めて、音楽番組のライブ演出に長けたTBSの強みが表れていたし、エンドクレジットの長さと内容からも努力の跡が感じられた。

それは日ごろTBSが『CDTV ライブ!ライブ!』でライブ演出にこだわっていることが大きいのだろう。同番組は今春から放送時間を倍増させるなど、その勢いと影響力は増す一方。アーティストの意向を踏まえたライブを作り上げていくことで、彼らの信頼を勝ち取っている様子がうかがえる。

この点では同じゴールデンタイムでレギュラー放送されているテレビ朝日の『ミュージックステーション』と日本テレビの『with MUSIC』に明確な差をつけていると言っていいのではないか。

それはネットで見聞きできる音楽を超えるコンテンツとして、各アーティストのファンからの信頼も勝ち取っている。今回の『音楽の日2024』はそんなレギュラー番組の強みがここぞの音楽特番で爆発したように見えた。

すでに「紅白超え」音楽特番トップに

これまで「生放送の音楽番組」と言えば『ミュージックステーション』のテレビ朝日、「アーティストコラボ」と言えば『FNS歌謡祭』のフジテレビというイメージが強く、そこにこのところ日本テレビが新番組『with MUSIC』のスタートに加えて音楽特番を連発する中、TBSが頭一つ抜けた感がある。

少なくとも『音楽の日』に関しては、生放送の醍醐味とこの特番に懸けるスタッフやアーティストの思い入れという点で、すでに日本の放送局が誇る最高の音楽コンテンツと言ってもいいかもしれない。

夏の音楽特番では『テレ東ミュージックフェス2024夏』(テレビ東京)、『2024 FNS歌謡祭 夏』(フジ)、『THE MUSIC DAY 2024』(日テレ)が放送され、19日にも『ミュージックステーション3時間半SP』(テレ朝)が予定されているが、各局の音楽番組担当者は今回の放送を見て、悔しく、うらやましく、そして悩み始めているのではないか。

逆にTBSは大みそかで『NHK紅白歌合戦』に対抗する音楽ライブ特番を仕掛けてもいいのではと感じさせた。例年23時台から『CDTV ライブ!ライブ!年越しスペシャル』を放送し、前日には『輝く!日本レコード大賞』もあるが、思い切った編成を仕掛けるなら勢いに乗る今が勝負の時に見える。

  • 握手を交わす中居正広と安住紳一郎アナ