『水曜日のダウンタウン』のスタートは2014年4月。つまり今春で放送10周年となるのだが、2010年代は決して順風満帆とは言えなかった。

2010年代はまだ世帯視聴率で判断される機会が多く、人口の多い中高年層が支持する番組が有利。『水曜日のダウンタウン』はネット上で支持を得ながらも、何度か「低視聴率」などと報じられ、松本人志がそのアンフェアな記事に苦言を呈したこともあった。

当時、苦しい状況が続いていたのは『水曜日のダウンタウン』だけではない。同じ藤井健太郎が演出を手がけ、日曜ゴールデンタイムで放送された『クイズ☆タレント名鑑』(2010年8月~12年3月)、『クイズ☆スター名鑑』(16年10月~17年1月)は、どちらもあっさり終了。やはり攻めた内容で一部の視聴者から支持を集めていたが、視聴率低迷を主な理由に終了してしまった。

その後、2020年春にビデオリサーチの視聴率調査がリニューアルされて民放各局がコア層(主に13~49歳)の個人視聴率獲得に向けた番組制作を進めるようになり、さらに配信再生数も評価指標に入り始めると状況は一変。『水曜日のダウンタウン』は両方を獲得できるバラエティのトップとして認められ、現在に至っている。

あらためて振り返ると、『水曜日のダウンタウン』はスタート当初から見ている人々の満足度が高い番組であるにもかかわらず、正当な評価を得られていなかった。そんな10年代の苦しい時期を乗り越えてきたことを知っている視聴者が多いことも、今回のようなアクシデントがあってもすぐに擁護の声があがる背景になっているのかもしれない。

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芸人たちに損をさせない制作姿勢

そして、もう1つ挙げておかなければいけないのは、芸人たちも『水曜日のダウンタウン』が好きで番組を守りたいと思っていること。

事実、布川の骨折が報じられた直後、相方のみちおがXで「各所ご迷惑おかけします。すいません」と謝罪しつつも、「布川の命の炎、放送是非見てください」と呼びかけていた。

さらに、布川本人はインスタグラムに「骨折したらプリングルス無料券ゲットしました。とってもラッキーマン!!」というコメントと笑顔の写真を投稿。これらの投稿は番組への批判を止めるとともに、ファンに心配させるスキすら与えず笑いを誘うものであり、「絶対見ます!」などのポジティブな声を誘っていた。

多くの芸人たちにとって『水曜日のダウンタウン』は重要な番組であり、「これくらいのことでケチをつけられたくない」「なくなってもらっては困る」のではないか。そしてこれは制作サイドが「芸人たちにおいしくさせよう。損をさせないようにしよう」という制作姿勢を取っているところが大きいように見える。

今回も一部のネットメディアが「テレビ番組収録中の事故、後を絶たず」など、炎上を加速させてPVを稼ごうとするような記事を配信していた。

しかし、記事のコメント欄にあがっていたのは、「常識的な配慮をしたうえでの事故を必要以上に大袈裟な表現で避難するニュアンスはどうだろうと感じる」「そら中には事故くらいあるやろ どっちかというと少ないくらい」「これで不適切って言われたら本当に何もできなくなる」「こういった記事をかきたがるんだよなぁ…人の失敗が楽しくて仕方が無い人が多いね」などメディア側を責めるような声だった。

今回の件は逆説的に、『水曜日のダウンタウン』の支持がいかに厚いかを物語るものになったのではないか。