今秋の番組改編で、1つの焦点となっていたのが土曜昼の動き。新番組の『メシドラ ~兼近&真之介のグルメドライブ』(日本テレビ、11:55~)と『トキタビ』(フジテレビ、10:53~)がスタートしたほか、『モヤモヤさまぁ~ず2』(テレビ東京、11:30~)も火曜23時台から移動してきた。

この3番組はいずれも、「街ぶら」や「旅」がテーマのいわゆる“おでかけ番組”。もともと土曜昼前後には、『王様のブランチ』(TBS、9:30~)、『KinKi Kidsのブンブブーン』(フジ、11:21~)、『有吉くんの正直さんぽ』(フジ、隔週12:00~)、『タカトシ温水の路線バスで!』(フジ、隔週12:00~)などの「街ぶら」や「旅」がテーマの番組が放送されていた。

なぜ土曜昼に、“おでかけ番組”がこれほど集中したのか。テレビ解説者の木村隆志がその背景や狙いを掘り下げていく。

  • (左から)『メシドラ』兼近大樹・満島真之介、『モヤモヤさまぁ~ず2』さまぁ~ず

    (左から)『メシドラ』兼近大樹・満島真之介、『モヤモヤさまぁ~ず2』さまぁ~ず

■リアルタイム視聴してもらう最適解

今秋に動きがあった各番組の内容を見ていくと、ある共通した狙いが浮かび上がってくる。

まず『メシドラ』は、「兼近大樹、満島真之介とゲストがドライブをしながら、仲良く楽しくおいしいものを食べるだけ」というコンセプトの番組。「台本と仕込みは一切なし」を前面に押し出しているところに、「ゆるいムードの番組をのんびり見てもらおう」という狙いがうかがえる。

次に『トキタビ』は、先月で幕を閉じた『TOKIOカケル』(フジ)の慰安旅行企画をレギュラー番組化。そのコンセプトは、「週末のちょっとした暇な時間を“自分たちなりの遊び方”で満喫する、暇つぶし旅バラエティ」であり、ゆるいムードを見てもらおうという点は似ている。

『モヤモヤさまぁ~ず2』は、もはや説明不要の「最もゆるい街ぶら番組」と言っていいだろう。『KinKi Kidsのブンブブーン』『有吉くんの正直さんぽ』『タカトシ温水の路線バスで!』も同系統のゆるい番組であり、多くの情報を詰め込むような密度の濃い番組は『王様のブランチ』のみ。民放各局が土曜昼にリアルタイム視聴してもらうための最適解としてこれらの“ゆるいおでかけ番組”を選んでいることが分かるのではないか。

ちなみに『王様のブランチ』は1996年4月にスタートした番組であり、当時は人々が「テレビからできるだけ多くの情報を得たい」と思っていた時代。そのため同番組はさまざまなジャンルの情報を詰め込んだ密度の濃さが売りであり、現在までその構成が保たれている。

しかし、ネットの普及で「好きなときに好きなだけ情報を得られるようになった」ことで、人々がテレビに求めるものが変わっていった。とりわけ2010年代になると、ゆるいムードの番組が脚光を浴び、その象徴的な番組と言われるのが『モヤモヤさまぁ~ず2』。同番組の放送時間帯を見ると、視聴者ニーズの変遷がうかがえる。