テクノロジーが進化し、AIの導入などが現実のものとなった今、「働き方」が様変わりしてきています。終身雇用も崩れ始め、ライフプランに不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

本連載では、法務・税務・起業コンサルタントのプロをはじめとする面々が、副業・複業、転職、起業、海外進出などをテーマに、「新時代の働き方」に関する情報をリレー形式で発信していきます。

今回は、IT企業経営者としての経験も持つ弁護士・中野秀俊氏が、新しいサービスが法律的にOKなのか迷った時に役立つ、2つの制度について解説します。

  • 新しいサービスが法律にOKか迷った時の対処法


スタートアップ・ベンチャー企業においては、今までにないビジネスを行うことがあります。そこで問題になるのが、そのビジネスモデルが、法律的にOKなのかということです。

このような法律問題については、弁護士などの法律の専門家と協議する方法があります。しかし、弁護士などと協議したうえでも、最終的にOKかNGかが分からない部分もあります。

例えば、法規制の適用を受けるのかどうかが必ずしも明らかではないケース(グレーゾーン)が出てきます。そのような場合に、産業競争力強化法に定められる「グレーゾーン解消制度」や「企業実証特例制度」の活用が考えられます。今回は、その詳細について見ていきましょう。

「グレーゾーン解消制度」とは

「グレーゾーン解消制度」とは、新事業を行おうとする者が、その事業を管轄する行政庁に対し、事業活動を規制する法律や命令の解釈・適用の有無について確認を求めることができる制度です。

このグレーゾーン解消制度を利用すれば、法律の解釈の曖昧な部分に対する政府の見解を知ることができるため、その結果に応じた対応をとることが可能です。回答も、原則として1か月程度で出されるため、ビジネスのスピード感をある程度確保しながら利用することができます。

グレーゾーン解消制度で注意すべきなのは、この制度を利用する場合には、質問を具体的にする必要があるという点です。

例えば、「このビジネスについては、○○法の●●条に違反するか」といったような具体的な法律や条文まで明示する必要があります。ただ漠然と、「何か法律に違反しますか」というのでは回答してくれないのです。

また、行政が回答してくれるのは、利用者が聞いたことのみとなっています。「○○法の●●条に違反するか」とだけ聞いた場合、行政が答えてくれるのは、この法律の部分だけです。つまり、「××法の△△条」には違反している場合でも、そのことについては指摘してくれないのです。そのため事業者としては、確認する法律及び条項については、もれがないよう質問する必要があります。

グレーゾーン解消制度が活用された例としては、電動アシスト付ベビーカーに関する道路交通法及び道路運送車両法の取扱いが明確にされたというものがあります。

「企業実証特例制度」とは

スタートアップ・ベンチャー企業が始める新しいサービスは、前例がないことが多く、既存の法律において、何かしら抵触してしまう可能性があります。そのような場合に、法律には抵触するが、法規制の求める安全性などを確保する措置を講ずることを前提に、特例として事業の継続を認めるのが「企業実証特例制度」です。

この制度を使うには、申請書にビジネスが規制を受ける法律の条項などを具体的に記載することが求められます。また、特例措置の内容も、具体的に企業側が記載しないといけないため、規制法と技術面の両方を詳細に検討する必要があります。

活用事例としては、道路交通法及び道路運送車両法ではセグウェイの公道走行は認められていませんが、セグウェイジャパン及び東京急行電鉄による新事業特例制度の申請を受けて、二子玉川でのセグウェイの公道走行ツアーが実施されたという例があります。


このように、新サービスをローンチするときに、行政から法律面における回答をもらえるのは、事業者にとっても非常に有用です。スタートアップ・ベンチャー企業は、活用を検討してみてはいかがでしょうか。