「正論を言っているのに、まったく採用されない……」
「あの人と同じことを言ったのに、なぜか自分の意見だけが通らない……」

若手のビジネスパーソンに「理不尽なこと」「納得いかないこと」を聞いてみると、このような声がよく上がります。

チームや会社のために、良かれと思ってせっかく意見を言ったのに、そしてそれが正論なのに、採用されなければ、もちろんいい気持ちにはなりませんし、モチベーションも下がってしまうことでしょう。

このような場合、決断できなかったり、余裕がなかったり、力がなかったりと、意見を受ける側に問題があることが実際に少なくないと私も思います。しかし、「正論が通らない」「自分の意見だけが通らない」と感じることが、相手が変わってももし〝自分だけに″頻繁に起きるのだとしたら……それは要注意です。

今回は、かつての私のような「しなくていい努力」をしないために、その原因と対応を考えていきたいと思います。

  • 上司が自分の意見を認めないと感じることはありますか?(写真:マイナビニュース)

    上司が自分の意見を認めないと感じることはありますか?

仕事に唯一の正解は無い

まず、「正論が通らない」ということを考えてみましょう。確かに学校では、「正しい答えを書いたのに、点数がもらえない」ということはありません。しかし、気を付けなければならないのは、この連載でも再三申し上げているように、仕事には勉強と違って「正解」というものはないのです。

たとえば、自社のCMに起用するタレントや、新商品の味付け、ある会社をM&Aをするか、といったことに「唯一の正解」などはありません。さまざまな意見があり、そしてどの意見にもそれなりのロジックで正当化できます。

つまり逆に言えば、人の数だけ正論があるのです。ですから、「これが正論だ!」と自説を信じて疑わないことが続くのであれば、相手の立場に立てていなかったり、かなり周りが見えなくなっていたりする可能性がありますので、要注意です。

言葉ではなく「行動」で人は判断する

次に「自分の意見だけが通らない」というケースを考えてみましょう。実は私にも20代の時にこんな苦い経験があります。

営業、開発、生産が一体化した組織でなければ、お客様のニーズに応えていけない。

その考えに確信を持った私は勇気をもってその意見を上司にぶつけてみました。この意見の「内容」は、悪くなかったと思います。その証拠として、実際に会社は数年後にそのような組織体制に舵を切ることになります。

しかし、その時の私の意見は「堀田君、その前に自分の机を片付けたらどうか」という一言で、上司にあっけなく却下されてしまったのです。

当然却下されたことにまったく納得がいきません。特にその理由です。机の上は確かに汚いですが、それが私の「正論」と一体なんの関係があるのでしょうか……。

しかし、キャリアを重ね意見を言われる側になって、私もやっと分かりました。つまり、上司が言いたかったのは「自分の机ひとつマネジメントできない人のマネジメント改革案なんて、見るに値しない」という、まさにぐうの音も出ないメッセージだったのです。

学校の勉強では「同じ言葉」が答案用紙に書いてあれば、誰が書いても同じ点数がもらえます。しかし仕事では違います。「時間厳守!」という正論も、常に時間厳守の人が言うのと遅刻の常習犯が言うのとでは、当然相手の受け止めはまったく変わってしまうのです。

つまり仕事では「言葉」だけで判断されることはほとんどありません。その意見を言う人が日頃どのような「行動」をしているのか、それが重視されているのです。

日頃の行動が信頼されていれば、たいていの意見は通る

「正論なのに、自分の意見だけ通らない」、もしそのようなことが頻繁に起きているのなら、意見の中身ではなく自分の日ごろの行動をいま一度チェックしてみることをお勧めします。

机の上が汚く、週に1度と決まった経費処理をひと月以上溜め、小さな業務を「雑用」とみなして相手の期待以下のアウトプットしか出していない……そのようなことをしている20代の私のような人がどんなに正論を言ってもその意見が通ることはありません。

それなのに行動を改めずに話し方やロジックの方ばかり磨いていく、それこそがまさに「しなくていい努力」なのです。


逆にいえば日頃から相手に信頼される行動をしていると、意見があっさりと通るようになってきます。

常に時間を守り、整理整頓がしっかりしていて非言語力を含めた態度が良く、そして常に相手の期待以上のアウトプットをしている。そのような人の意見は「私の思いついたアイデア、やらせてください!」の一言だけで、相手は「OK!」となるのです。

執筆者プロフィール

堀田孝治(ほった・こうじ)
クリエイトJ株式会社代表取締役

1989年に味の素に入社。営業、マーケティング、"休職"、総務、人事、広告部マネージャーを経て2007年に企業研修講師として独立。2年目には170日/年の研修を行う人気講師になる。休職にまで至った20代の自分のような「しなくていい努力」を、これからの若手ビジネスパーソンがしないように、「7つの行動原則」を考案。オリジナルメソッドである「7つの行動原則」研修は大手企業を中心に多くの企業で採用され、現在ではのべ1万人以上が受講している。著書『入社3年目の心得』(総合法令出版)、『自分を仕事のプロフェッショナルに磨き上げる7つの行動原則』(総合法令出版)他。